オーバーロードからは逃げられない     作:うさぎ777

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様々な思惑

 白黒髪の女と戦闘後、我に返ったクリスは慌てて彼女に

 

 全属性回復薬を振りかけたのだった

 

 あとから知ったが、漆黒聖典の番外席次アンティリーネというらしい

 

 そのかいがあってか死体に損傷はなくうまく蘇生ができたそうだ

 

 よかった……

 

 クリスは安心し、自分がやりすぎたことを反省した

 

 あの招喚っていう術、はじめて使ったけどあんな効果があったなんて

 

 姉ちゃんとモモンガさんが危険になったときに切り札に使いなさいって言うからこの設定

 

 の忍術作ったのに

 

 めちゃくちゃ怖いじゃないか

 

 そういえばなんか作るときにボソボソ言ってたな

 

 

 

 ────────────────────────────────

 回想

 ユグドラシル月のうさぎギルド長執務室

 

「弟よ」

 

「なに姉ちゃん」

 

「そろそろ切り札になる攻撃手段がおまえにも必要だと思うんだが」

 

「えー、新しい忍術の設定を作るってこと?俺薬以外に興味ないし……何がいいと思う?」

 

「それではどうだ?このギルドは生命保持に関する物の取扱いが多い。

 

 回復魔法をベースにしては」

 

「え? 回復って敵を回復したら攻撃できないじゃん」

 

「それができるんだよな。あとはこれもつけて! 

 

 ……弟に危害を加えるやつには多少苦しんでもらわないとな」ボソッ

 

 

 ユグドラシルモモンガとのチャットメール

 

「うさぎさん、いつも俺の相談を聞いてくれてありがとうございます」

 

「いや、俺も別に息抜きでしてるので気にしないでくださいモモンガさん」

 

「いつも俺ばかり話を聞いてもらって悪いですね。そういえば最近うさぎさんのほうは

 

 どうですか、なにかありました?」

 

「いや……そんなに。あるとすれば姉に言われて新しい忍術を作る予定くらいですかね」

 

「え? 新しい忍術ですか」

 

「はい、モモンガさんみたいに沢山の魔法は覚えられないですけど、なにかあったときの切り札が

 

 あったほうが良いって言ってました」

 

「ああ、それはそうですね……うさぎさん、その忍術設定俺も一緒に考えてもいいですか」

 

「え? モモンガさんがですか?」

 

「はい。普段お世話になってるうさぎさんにお礼をしたいんです。それに俺は魔法に詳しいから術

 

 式に関して色んな選択肢を増やせると思いますよ」

 

「……わかりました。モモンガさん当然ですが他言無用でお願いしますね」

 

「もちろんですうさぎさん……うさぎさんの身を守るには多少残酷なものでも構わないか。

 

 悪ロールでおそろいにしたいし」ボソッ

 

 ──────────────────────────────────────

 

「……二人とも過保護なんだよな」

 

 うさぎの顔が引きつる

 

 そのとき、部屋の扉が開いてクリスは神官長に呼ばれた

 

 溜息を吐きながら客間に向かうのであった

 

 神官長たちにクリスはアンティリーネの暴走についてすごい勢いで謝罪された

 

 クリスは多少その勢いに驚きながらもその謝罪を受け入れた

 

 神官長から回復薬のお礼と謝礼はなにが良いか聞かれたため、

 

 クリスは法国にある薬草や薬、魔法の情報を求めた。

 

 そして今晩クリスは食事会に招待されるのであった

 

 ──────────────────────────────────ー

 

 食事会でクリスは神官長から紹介を受け法国のお偉い方と挨拶を重ねていた

 

 そこでは色々な人から神やらお美しいやら息子を紹介したいやら言われ、内心

 

 クリスはうんざりしていた

 

 でもお兄様のために皇女としての務めは果たさないとな

 

 人混みにつかれたクリスは休憩するため、断りを入れお手洗いに向かったのだった。

 

 その帰り、廊下で声をかけられた。

 

 見ると王国の宿屋で会った黒髪赤目の男が立っていた。

 

「クリスティーヌ皇女殿下。お久しぶりですね」

 

「王国で会った使者殿ですか」

 

 黒髪赤目の男はクリスに笑顔で近づき、腰を折って挨拶をした

 

「わたしはスレイン法国漆黒聖典の第一席次隊長を務める者です」

 

 クリスはそれを見て笑顔で対応する

 

「なるほど。隊長殿それでわたしになにかご用件ですか」

 

 第一席次はクリスに笑顔で言った

 

「ええ、実はクリスティーヌ皇女殿下に少しお話がありまして。来ていただけますか」

 

 

 クリスは別部屋に案内された

 

「それで、話とはなんですか」

 

 第一席次はクリスに近づくと端正な顔を近づけ手をそっと取って言った

 

「クリスティーヌ皇女殿下、人目会ったときから思っていました」

 

「あなたのその完璧な強さ、対戦した相手に薬を恵んでくれる優しさ、そして薬製作の腕前」

 

「その強さと優しさ知能にわたしは心打たれました。あなたのことを好ましく思っています」

 

 クリスは冷静な顔を保とうとしながらも薬について褒められたことに照れていた

 

「そ……それはありがとうございます」

 

 第一席次はさらにクリスとの距離をつめ言った。

 

「これはわたしの部隊の者が失礼をしたお詫びです」

 

 クリスの腕にそっと綺麗なブレスレットをつける。

 

「今度お会いした時はぜひお食事でもご一緒させてください」

 

 男は爽やかな笑顔で言った

 

 

 クリスは笑顔を張り付けて答えたのだった

 

「え……ええ、機会があれば」

 

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 漆黒聖典第一席次隊長 side

 

 王国で帝国の切り札と使者として初めて会った印象は化け物だった

 

 すさまじい殺気に得体のしれない正体

 

 その恐怖にできるなら関わりたくないと思っていた

 

 そして、二回目漆黒聖典の番外席次と戦ったのを見たとき

 

 彼女は法国最強の番外席次を大きく上回る実力を持っていて

 

 自分には到底かなわない存在だと畏怖を抱いた

 

 その後、神官長から呼び出されクリスティーヌ皇女殿下を懐柔するように言われたとき

 

 わたしは神官長の意図が分からなかった。

 

 いや理屈はわかっている

 

 わたしにはプレイヤーの血が流れているため丁度良く見つかった人間種のプレイヤーと

 

 縁を結ばせようと考えるのもおかしなことではない

 

 しかし、彼女はわたしが懐柔できるような相手ではない

 

 恐れや畏怖の感情を抱きながらもわたしは命令に従うしかなかった

 

 わたしは、内心憂鬱になりながらも命令のために彼女に近づいた

 

 彼女に近づき女性としての扱いをした

 

 正直早く終わらせて帰りたい。そんな気持ちだった。それなのに

 

 彼女がそんな顔を見せるから

 

 雲の上の存在だと思っていた存在からの予想外の反応に

 

 まるで普通の女性のような彼女の照れた様子に

 

 ふと少しだけ胸がざわついた

 

 彼女の腕に先ほどつけたブレスレットをなぞる

 

 ほんの少しだけ充足感がわいた自分に大きく動揺するのだった

 

 

 ──────────────────────────────────────ー

 漆黒聖典番外席次アンティリーネ side

 

 神官長からの命でプレイヤーと戦うと決まったとき、とても胸が煌めいた

 

 今まで法国でわたしにかなうものなんていなかった

 

 神官長の命令で漆黒聖典のメンバーが調子に乗ってるのを粛清したときもとてもつまらな

 

 かった

 

 皮肉で自分に勝てる男であれば器量・人格・種族を問わず結婚して子供を産んでも良いと

 

 言ってみたけれど、そんな存在現れないと思っていた

 

 でもようやく現れた、わたしを上回るかもしれないプレイヤーが

 

 わたしは期待に胸が高鳴りながら戦闘を開始した

 

 でもいざ戦ってみれば自分は生産職だからだと言って手を抜いて避けるだけで腹が立った

 

 もっと力をだして。全力で私と戦って。

 

 そんな気持ちを抑えきれず、わたしは普段なら使うはずもない切り札を使った

 

 The goal of all life is death

 

 私が持つスキルであらゆる耐性を突破し確実に死を招く魔法。

 

 発動までに12秒かかったけれども私は彼女からの攻撃をなんとか避けることができた。

 

 勝ったと思った

 

 でもプレイヤーはそんな簡単なものじゃなかった

 

 気づいたら白銀色のなにかが迫り

 

 逃げようとしたときには身体が動かなくなっていた

 

 そしてわたしは苦しみぬいてしんだ

 

 目覚めたときは恐怖に襲われた

 

 あの恐怖

 

 身体中が痛く息ができなくなっていく感触

 

 冷や汗がでて止まらずしばらく記憶から離れなかった

 

 あれがプレイヤー。法国で神と呼ばれる存在

 

 わたしのなかにふと恐怖とは違う小さな高揚感が生まれた。

 

 ああ、あのプレイヤー、クリスティーヌ

 

 私をこんな気持ちにできるのは彼女だけ

 

 待ってて。またあなたに会いたい。

 

 アンティリーネは心ときめかせながら再会を願うのであった。

 

 ──────────────────────────────

 

 法国で食事会が終わったあとにクリスは法国を離れた

 

 神官長たちに引き留められたが、嫌な予感がするので出発した

 

 その後帝国に戻ったクリスは法国で新しい神が降臨したという噂が流れているのを聞いた

 

 ジルクニフにジトっとした目で見られながらクリスは知らないふりを決め込んだのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うさぎが法国で知らぬ間に神になりました


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