美夜「そう言えばさ、今日って雨降ってるのよね。何で出発の日に限って悪天候なんだか」
激しい雨が降っている事に、ぶーぶーと文句を垂れる美夜。そんな美夜を伊佐也は慰める。
伊佐也「仕方ないですよ、美夜さん。こればかりは、どうしようもないですからね。空港に着くまでの辛抱です」
海斗「・・・・・おかしい」
ずっと窓の外を眺めていた海斗が、ふと言葉を漏らす。
その言葉に気づいた伊佐也が、声をかける。
伊佐也「何がおかしいんです?」
海斗「・・いや、この辺り一体の地図は全部頭に入れてきた筈なんだが、どうも道を外れている気がするんだ」
その事に気が付いたのは、ほんの偶然だった。
美夜と陽が繰り広げるカードバトルを見ていた時、少し違和感を感じた。
海斗(・・・・・。何故か判らんが、外に異様な雰囲気を感じる。・・まあ、特に気にすることではないが、見てみるか)
その時に、バスが正常な順路を辿っていないことに気がついたのだ。
伊佐也「・・・・・確かに、おかしな感じはするね。何か、嫌なことがこの先に待っている気がするんだ」
その予感は皮肉にも、当たってしまっていた。
現世を牛耳ろうとする、大妖怪の計画の一部に、生まれるべきではなかった子達の殺害は入ってしまっていた。
それに気が付いた神々が対処するには、・・・もう遅すぎた。
スサノオ「おい、母上!俺等の子供が死んだってどういうことだ!?」
黄泉の国、イザナミの住処に飛び込んでくる影が一つ。
アマテラス「お黙りなさい、スサノオ。私達も状況は全て把握している訳ではないのですよ」
イザナミ「わからないの。私が見る限り、あの子達はずっと先まで生きる筈だったの。でも、突然何者かの手によってその事実が捻じ曲げられてしまった」
神の定めた運命を変えることは、断じて許される行為ではない。ましてや、神が直々にその運命を定めた子だ。かなりの高位の存在でなければ不可能だろう。
イザナミ「・・・一応、あの子達の魂と肉体はこちらに持ってきてはいるの。でも、あちらに帰したところで、また同じ事の繰り返しになるだけ」
神が干渉出来るとはいえ、命を再び戻すことは禁忌である。なので、死ぬ直前にこちら側に持ってきたのだ。
アマテラス「そこで、あの子達は『幻想郷』に移すことにしたの」
ツクヨミ「幻想郷、ですか。確かに、あそこならば八雲が統括する場所です。こちらより些か安心と言えるでしょう」
スサノオ「・・・俺等の子ってことは教えんのか?」
イザナミ「うん、そうする。皆が其々の子供に教えてあげて・・・」
美夜「・・・・・・・・、う~ん、何処だろ、ここ」
確か、修学旅行のバスの中で陽と遊〇王やってた筈なんだケド。あれれ?
何時の間にか、真っ白い所に来ちゃってるし。これって、所謂異世界みたいな感じ?小説とかの異世界に来ちゃった~、的なあれ?
???「月城美夜ですね?」
美夜「うへぇっ!ビックリしたっ!」
私の目の前には、長く伸ばした銀髪を結った綺麗なお姉さんが居た。
美夜(私も、大人になったらこんな綺麗な人になってみたいもんだ)
???「私って綺麗なんですか?」
美夜「え?」
???「え?」
・・・・・・・・・、ちょっと整理してみようか。
・先ず、私はバスから異世界に飛ばされた。
・そこに綺麗なお姉さんが居た。
・心で思ったことを読まれた。
んん?全然理解出来んぞ?
???「とにかく、自己紹介といきましょうか。私の名は、月詠命。日本神話の三貴神の一柱にして、貴女の母親でもあります」
んーと、更に訳が判らんくなったぞ?
ツクヨミ「理解出来ないことは承知の上です。時間が無いので、手短に。貴女とその友達の三人は、我々神が人間との間に宿した子なのです。貴女は私、ツクヨミの子。神と人間の間に生まれた子は、何かしらの親の力を受け継ぎます。私は、月を司る神ですので、貴女には当然月の力が宿ります」
言っていることが、半分も理解できん。私もとうとうおかしくなったのかな?
ツクヨミ「貴女の能力は、月に関する全てを私ツクヨミから借りられるが出来るのです。・・・一つ、アドバイスです。いざという時は、祈りなさい。神は万能ではありません。想いによって強くも弱くもなるのですから」
くっそ、マジ判らん。・・・あれ?何となくあの人の言っていることが少しながら理解出来ている気がする。何か、論理的じゃなく、本能的な感じで。
ツクヨミ「貴女方は、命を狙われた為に、幻想郷に送ることになりました。幻想郷で目覚めた瞬間に、大体の事が把握出来るようにしておきました。・・・それでは、名残惜しいですが、これでお別れです」
美夜「・・ちょっと待ちなさいよ」
ツクヨミ「何でしょうか?」
そうだ、早く言え。これまでの想いを。
美夜「あんた、私の母さんなの?」
ツクヨミ「ええ、そうです」
美夜「ふざけるなあああああぁぁぁぁぁ!!!」
ツクヨミ「!?」
美夜「こちとら小さい頃から母親は事故で死んだって言われてきたんだ!それが何だ!今更出てきて母親面しやがって!こっちはなぁ、こっちはなぁ・・・・・寂しかったんだよ。母親が居ない、それだけで私がどんな想いしたかわかってんのかよ・・・」
ふと気付くと、ツクヨミがそばに来ていた。そして、私を優しく抱きしめてくれた。
ツクヨミ「・・すいませんでした。私が居ないことで、そんなに美夜を傷つけていたなんて。本当にすいません。でも、私はずっと美夜を見てきましたんですよ?小学校の時、かけっこで一等賞を取ってましたね。あの時は、私年甲斐もなくはしゃぎました」
美夜「うう、・・お母さんのばかぁ」
ツクヨミ「これからも、美夜のことはずっと見ています。私は仮にも神様ですので、あまり激しい干渉は出来ませんが、見守っていることは出来ます」
そう告げてから、ツクヨミは立ち上がる。
ツクヨミ「・・・じゃあ、さようなら。私の可愛い美夜。貴女のことを、ずっと愛していますよ」
それだけで、十分だった。「愛してる」、その一言で。
美夜「じゃあね、お母さん」
あれ、文字数多くね?
千二百程度の筈だったんですが・・・。