全部全部、わたしのせいにして。 作:皇という名字、格好良すぎないか??
大丈夫だよ。わたしが背負っていくから。
大丈夫だよ。皆はね、何も悪くないから。
うん、大丈夫。こうなったのも全部わたしのせいなんだからね。
だから皆は、何も気にしなくていいからね?
───────
かつてわたしは、ずっと一人で居続けるんだろうなって思ってた。
身体が弱くてずっと入院と退院の繰り返し。それがパパやママにとっては凄く嫌だったみたいで、ある時今お世話になってる施設──『お日さま園』に預けられてしまった。二度と迎えに来ることはなかった。
悲しかったけど、仕方ないって思った。だってわたしは大きな負担になっていたから。何かあったらすぐに入院しちゃう子どもなんて、いらないって思ってもおかしくない。
だから最初ここに棄てられたんだって分かった時も、また同じようになるんだろうなって思った。お日さま園にはわたしと同じな子どもが沢山いた。でもわたしみたいに身体が弱い子はいなかったんだ。だったら、パパたちみたいにわたしのことを分かってくれなくてもおかしくない。
──でも、違った。
わたしの身体自体は変わらなかった。入退院の繰り返し。言ってしまえばお金だけかかる存在。なのに、皆優しかった。
わたしを引き取ってくれた吉良さん──お父さんを始めとして、瞳子お姉さんや玲名ちゃん、穂香ちゃん、そしてわたしを一番気に掛けてくれたマキちゃんを含めた皆が、わたしという存在を受け入れてくれた。
病弱だからって仲間外れになったりはしなかったし、むしろ積極的に仲間に組み込んでくれた。
その優しさを、最初は信じられなかった。どうせまた棄てられると思ってたから、一人でいようとし続けた。でも、マキちゃんたちがわたしを引っ張り出してくれた。色んな遊びに連れていってくれた。振り回してくれた。
特に覚えてるのは、初めて一緒にサッカーをしたとき。あんまり激しい運動は出来ないってことで、スポーツ自体を諦めていたんだけど、ちょっとの時間だけ入れて貰えたのは凄く嬉しかった。
ポジションはそこまで走ったりはしないキーパー。出れた時間もほんの数分程度。それでも、わたしにとっては最高の時間だった。初めて、仲間に入れて貰えた感じがしたから。そしてこの後、この興奮から熱が出てまた入院しちゃったのもよく覚えてる。
それに、皆はわたしが入院してるときにお見舞いもよくしに来てくれた。
勿論全員が来てくれたわけじゃないけど、その時はその人のお見舞いの手紙なんかもあったし、前みたいに嫌がられてるって感じでもなかった。それにマキちゃんなんかは、入院してるときは殆ど毎日来てくれてたし。
「マキがいなかったら誰がアンタを引っ張っていくのよ」って言葉はすごくマキちゃんらしくてはっきり覚えてる。言い方は少しきついところもあるけど、なんだかんだ気に掛けてくれてるのは強く心に来た。
そんな生活が、長く続いた。
だんだんと入院している時間のほうが多くなっていったと思う。皆は相変わらず気に掛けてくれてたけど、流石に毎日お見舞いっていうのはなくなっていた。
皆ももう学生。学校の授業とか宿題とかあるから仕方がない。わたしは全然いけてなかったけど。
徐々に増えていく病院で過ごす時間。このまま続けば一生病院暮らしになるのかと、嫌な想像が過った。
本音を言えば、もっとマキちゃんたちと一緒に居たかった。一緒にサッカーしたり、休み時間にお話したり、宿題で一緒に頭を悩ませたかった。
……わたしの身体が、ちゃんと丈夫ならよかったのに。そう、何度も感じていた。
──そんな時だった。お父さんから、ある石を渡されたのは。
紫色をした小さな石のついたネックレス。誕生日でもなんでもない日に、突然渡してきてくれた。
いきなりのことで驚いたけど、わたしを受け入れてくれたお父さんからの贈り物だったし、普通にキレイな石だったし有難く受け取ってその場で付けた。その時聞いた何の石かという質問は流されちゃったけど。
その日の夜、夢の中であることを聞かれた。
──どうなりたい?
突然の問いかけ。これを疑問に思うことはなくわたしは答えた。
──ただ、元気になりたい。皆と一緒に居れるくらいには元気に。
次の日から、不思議なことが起こった。
すぐに退院できちゃうくらいには元気になれたんだ。今までちょっとのひずみで悪くなっちゃいそうなところも、まとめて正常になっちゃっていた。
自分でも、お医者さんでも何が起こったのか、どうしてこうなったのかはっきりしたことは分からなかった。ただ言えるのは、わたしはこの時から完全に健康体そのものになったということだけ。入院なんて必要なくなったんだ。
この変化はわたし自身が感じ取っていた。今まで出来そうになかったことが、この時から出来ると分かってしまうくらいに。
例えば広いところを思いっきり走ったりするとか。例えば海で思いっきり泳いだりするとか。
やっと、皆と同じ場所にいることが出来る。凄く嬉しかった。
すぐに退院して、皆のところに帰って、そのことを報告した。始めはやっぱり信じてもらえなかったけど、実際に走って見せたり一緒にサッカーをしてもそこまで疲れないことを見せてから信じてくれた。
この日からのことも、全部楽しかった。何せやりたいことは全部出来るから。色んな事に手を出してみて、色んなことを経験した。前とは違って、友達を引っ張る側になった。
ある時マキちゃんから言われた。「アンタ、変わったね」って。
これを言われた時一瞬ダメだったかなと思った。もしかして今より前の方がよかったから言われたんじゃないかと思ったから。
嫌われたくないって強く感じた。おそるおそる、わたしが変わったことをどう思うか聞いてみた。
答えは間を置いて返ってきた。「ごめん嘘、やっぱり変わってないわ」って。
わたしがそれに戸惑ってる間に、久しぶりに頭を撫でてくれながら、嫌ったりしないから大丈夫とも付け加えてくれた。嬉しいけど、かなり恥ずかしかった。
考えてること、すぐ見抜かれちゃう。もう入院することがなくなって色々積極的になったわたしを見ても、変わらず一緒に居てくれる。皆が離れていったってわけじゃ決してないけど、わたしの近くにはマキちゃんが居てくれた。
ずっとこうやって皆と、マキちゃんと仲良く一緒に過ごせていけたらいいのに。
……そう、思っていた。
偶然だった。今日、たまたま用事があってわたしはお父さんの部屋の前を通った。そこで漏れてきた声を、わたしは聞いてしまったんだ。
──わたしを元気にした"エイリア石"なら、復讐を果たすことが出来るって。
途端わたしは部屋にすぐに入ってお父さんを問い詰めた。それって、どういうことなのって。
「……聞いてしまいましたか、
本当は、もう少し本格的になってから皆に話すつもりだったらしいけど、もう既に影響を受けてるわたしには話しておこうといって、話し出した。
曰く、今のわたしがこうして元気でいられるのは、今わたしが身に着けてる"エイリア石"のお陰だってこと。そしてこのエイリア石は、人間を超えた力を持ってる人に与えるらしい。わたしが今のところ普通なのは、まだその量がものすごく小さいからだとかなんとか。
そこでお父さんはある計画を立てている最中みたい。わたしたちをこのエイリア石を使って強くして世界を征服する、そんな感じだった。
無理に決まってる。すぐに思った。だってそうでしょ? 世界なんて広すぎる。色んな兵器があるし、強い人だってたくさんいる。それがいきなり石を持っただけで世界に敵うなんてありえない。
「零、お父さんからのお願いだ。もちろん、協力してくれるね?」
わたしでも思いつくんだ。お父さんなら簡単に思いついててもおかしくないのに、お父さんの言い方は、本気だ。本気で、わたしたちを強くして世界を支配しようとしていた。なんか、お父さんがお父さんじゃないみたいだった。
このままだと、お父さんが捕まってしまう。だけどわたしを受け入れてくれたお父さんの願いだ、叶えてあげたい。
だけどここわたしが反対したところで、皆は協力してしまうかもしれない。そうなれば、皆も捕まっちゃう。……そんなの嫌だ!
どうする、どうすればいい。どうすれば皆を──。
必死で考える。お父さんも、マキも、皆幸せになる方法。幸せにならない人は生まれない、そんな全てを解決する魔法みたいな方法を。
中々答えを出さないとお父さんに怪しまれる。考えろ。早く、考えろ……っ!
──一つ、思い付けた。上手く行けば、全部なんとかなるかもしれない。
「……うん、もちろんだよ。お父さん」
「おぉそうか。零はいい子だねぇ」
「ありがとう。でもねお父さん、その前に見せてほしいものがあるんだ」
「ん? 何をだい?」
「わたしにくれたエイリア石の元。つまり……これを取ってきたところに連れてってほしいな」
早めに強さに慣れておきたいし、と付け加える。
願いは、すぐに聞き入れてくれた。
────────
エイリア石。偶然降ってきた隕石にあった、紫色の結晶。お父さんの話だと、ただ単に力を与えてくれる素晴らしい石。でも、それだけじゃないんじゃないかってわたしは思う。
エイリア石の話をしてるお父さんは、どこかこれまでのお父さんとは変わってた気がした。今考えると、何かに囚われてる、そんな気しかしない。
そしてこのエイリア石の影響をずっと受けてたわたしも、訂正されたとはいえマキちゃんから変わったと言われた。
これくらいしかまだ例はないけど、もしかしたらエイリア石は、人を変えてしまう力もあるかもしれない。力を与える代わりに性格を変える、的な感じで。
もし本当にそうなら、お父さんは今エイリア石によって染められてるって状態のはず。それによって、計画を進めてるってこと。
「ついたよ零。これが、お前の持ってるものの元となったエイリア石だ」
「……これが」
思っていた数倍、大きかった。これがエイリア石。不思議と、吸い寄せられる何かを感じる。
「零?」
身体が、勝手に動いた。大きなエイリア石のほうに手を伸ばして、直に触れる。
──途端、流れて来た。恐ろしいくらいの力が。初めて外を思いっきり走れるようになった時以上の全能感が押し寄せてきた。
ぐらりと、流されそうになる。だけどそうなったら誰が皆を助けるんだと思い踏ん張った。
確信した。エイリア石は、人の心を変えれる。力と同時に、心を全く違う人に変えてしまうことが出来てしまう。
まるで悪魔だ。契約することで力を授ける。まさにそれだ。
──なら、契約してやろうじゃないか。
一回、深呼吸。わたしの根本以外は、全部渡してやろう。全部エイリア石に染まってやろう。受け入れてやろう。
だけどわたしはわたしだ。それだけは譲れない。
声が、訪れる。
──どうなりたい?
今度は、違うように答えた。
──強くなりたい。全部を背負える、そんな強さが欲しいッ!!
今この瞬間、契約は成立した。流れてきた以上の力をわたしは……いや、私は手にしたのだ。
そしてその使い方も、理解した。
「おぉ零、早速強くなれたのですね。これは計画をかなり前倒ししても──」
「お父さん」
「!? 零、何を──」
瞳を見つめる。そして──書き換えた。
「……ねぇ、私は誰?」
「──あなたは、ゼロ。ゼロ様でございます」
「っ……うん、正解だよ」
この計画は、お父さんが考えたこと。もし捕まるとしたら、それを計画して、実行してしまったことが原因。
だったら、それを私が嗾けたってことにしてしまえばいい。
「ねぇ、
「はい。順調です」
「そっか。じゃあこのまま進めていこっか?」
「はい。ゼロ様」
「……」
全ての黒幕。諸悪の根源。すなわち、
お父さんは計画を進められる。あの子たちは巻き込まれても私のせいにできる。勿論誑かしたのは私だからお父さんも無罪。全部全部ぜーんぶ私のせい。完璧だ。
嫌われてしまうのは分かってる。でも、私が悪でいて皆幸せになるなら、なんだってやろう。
精一杯立ち回ろう。全部私のせいだって、伝えていかないといけない。
あぁきっと、わたしはこのために生まれてきたんだ。
需要なければ消します。