全部全部、わたしのせいにして。   作:皇という名字、格好良すぎないか??

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時間があっという間過ぎます。


しかしてあの子は疑念を確信する。

 私は皇マキ。でも今は、『マキュア』という宇宙人ということになってる。

 

 エイリア学園のチームの一つ、『イプシロン』のメンバーとして、宇宙人として、父さんのお願いのために、日々トレーニングをして力をつけている。

 

 具体的に、どんなお願いなのかはまだ知らない。だけどこれまでマキュアたちを育ててきてくれた、あの優しい父さんの、初めて自分たちにしてくれたお願い。力を貸してほしい、っていうすごく分かりやすいもの。

 なら、叶えてあげたい。普段あんまり話さないような人も、この思いは同じだった。だから、皆もトレーニングをしている。

 

 父さんをサポートしている"()()()"って方と、一緒にこれから伝えられる父さんの計画をやっていく。そのためには、エイリア学園のチームとして、力をつけなきゃならない。だから今はトレーニングを積み続ける。それが、マキュアたちお日さま園の皆の使命なんだ。

 

 全ては、マキュアたちを救ってくれた父さんのために。

 そのために、今を生きているんだ。

 

 ──ほんとに?

 

 ……ずっと、まとわりついてくるこの考え。今のことが本当なのに。何にもおかしいところはないはずなのに。

 

 何か、大切なことを忘れているような気がしてならない。

 

 普段、『イプシロン』だけでトレーニングをする。だけど最近は全チーム集められてトレーニングを行うことも増えてきた。

 全チーム……つまり、お日さま園にいた皆がそこにいる。

 

 いる、はずなのに。

 

 ──……足りない。

 

 一人、足りない。絶対足りてない。その考えはどうしても取れない。

 

 足りないって思う度に、自分たちがいるこの現状が、どうしても信じられなくなる。疑ってしまう。今こうしていることが、本当なのか分からなくなる。この考えは強くなるばかりだった。

 

 もしかして同じことを考えてる子がいるんじゃないかと思って、さりげなく聞いてみた。『イプシロン』は勿論、他のチームの子にも。でも、誰もそんなこと思ったことなんてないってことしか分からなかった。『一人足りていない』という違和感を抱いていないようだった。

 

 だから、自分がおかしいんだと思うようにした。今が正しいんだって。その一人なんて、存在しないはずなんだって。

 もう、こんなこと考えちゃいけないんだって。

 

 だって、父さんのために力をつけるべきだから。マキュアたちを引き取って育ててくれた、父さんの役に立つんだから。

 

 ……都合よく、トレーニングは日々激しくなっていた。だから、段々と変なことは考えないようにすることができた。

 

 そんな、時だった。

 

 次のトレーニングの際、"ゼロ様"が直接指導をしてくれるってことを、いつも全員のトレーニングを見てくれてる瞳子姉さんに教えて貰った。

 

 追加で教えてもらった。どうやらマキュアたちは、一度ゼロ様に会ったことがあるらしい。あまり覚えはないけど。

 それに関しては、皆もそうらしい。もしかしたら会っていたかもだけど、はっきり見たという覚えはない、とのこと。

 

 ゼロ様と会ったことを覚えてないことと、誰も覚えていない()()のこと。

 ……一瞬、何か関係あるのかなと思った。でもその時はこんな考え持っちゃいけないって思ってたから、意識して考えないようにした。

 

 話によれば、"ゼロ様"は格段に強いらしい。だからきっと、トレーニングメニューは厳しいものであるはず。なら、ゼロ様のトレーニングが始まれば、こんなこと考えるなんて出来なくなるはず。やっと忘れられる。専念出来る。

 

 ……そう、思っていたのに。

 

 ゼロ様が来た。

 目でその姿を見た。

 声を聞いた。

 

「お久しぶりですね、皆さん。本日はよろしくお願いしますね」

 

 ──あれ、知ってる。

 

 そう、知っていた。

 でも知っているのは、目の前にいたゼロ様じゃない。"ゼロ様"は知らないし、言ってしまえば初めまして。でも、どうしても『知ってる』という考えが抜けない。

 言うなら……そう、"ゼロ様"じゃない"ゼロ様"を知ってる。

 

 意味不明なことを言ってる自覚はあるし、正直自分でも何を言っているのか分からない。気持ちは初対面なのに、よく似た何かを知っているだなんて。

 

 でも、やっぱり知っている。それは、自分の中で紛れもない真実だった。

 

 その場で叫ばなかったり、知恵熱で倒れなかった自分を誉めてほしい。でもそれほどに、衝撃は相当なものだった。

 

 しかも、それだけじゃない。

 気のせいかもしれないけど、こっちを見るときの"ゼロ様"の目が、他を見てる時と比べて違う気がした。

 そしてその目も、知っている気がした。

 

 とっても、大事なものな気がしてならなかった。

 

 だけど、分からない。大事なものなら忘れるわけないはずなのに、分からない。

 思い出せないだけなのか、それとも変な考えが出てるだけなのか。それすらも分からない。分からなさすぎて、イライラしてしまうほどに。

 

 一応、その日のトレーニングはちゃんとこなした。というか、始まったらトレーニング内容のことしか考えられなくなったってのがあってるかもしれない。

 

 55人の分身を作り出して、『イプシロン』用にってことで専用の11人と試合させられて、それでしたかった動きを何一つさせてもらえなかったってどういうことなんだろう。

 正直信じられない。流石本当の宇宙人、って感じなのかも。結構ハードなトレーニングしてきたのに、一切届いてなかったし。そんな感じで、試合形式のトレーニングは全チームが終始ゼロ様のペースのまま終わっちゃった。

 

 最後に、各チームのトレーニングの様子の録画映像を渡してきた後で、このあと各チームで反省会をするようにとゼロ様から言われ、解散になった。ただその日は疲れもあって皆あんまり頭働かなかったから、後日実施ということになった。

 

 その日の帰り、皆と一緒でかなり疲れていたから、色々と済ませた後は自室で休むつもりだった。疲れてて、試合前に考えてたことも少しだけ抜けていた。

 

 そんなとき、電話をしてる瞳子姉さんを見かけた。聞こえてきた内容的には、次のトレーニングについてっぽかった。あと、もうちょっとで終わりそう。

 

 ふと、思ったことがあった。瞳子姉さんは、お日さま園の皆を知ってる。一人ひとりのことをちゃんと見てるし、頼りになるお姉さんなんだ。

 

 ──なら、瞳子姉さんだったら分かるかも。

 

 自分の思ってる疑問の一つ。誰か足りないなって思ってることについて。

 これのせいで、トレーニング前はもやもやしてた。なんなら考えちゃったせいで今もやもやし始めちゃった。

 

 聞いてみれば、分かるかも。というか何で今まで聞いてみなかったんだろうって思うくらいには、確実な方法だ。

 

 瞳子姉さん以上にお日さま園全体を知ってるのは父さんくらい。なら瞳子姉さんが「そんな人いない」と一言言ってくれれば、全て終わり。ちゃんと今のことに専念出来るはず。

 

 ちょうど、電話が終わったみたい。

 聞いてみよう。このもやもやに決着をつけるために。

 

「ねぇ、瞳子姉さん」

「? あぁマキ……じゃくて、マキュア、だったわね」

「もう、早く慣れてよー。多分結構経ったでしょ?」

「そう……ね」

 

 いつからかは正直覚えてないけど、皆の名前は切り替わった。どこかで『マキ』は『マキュア』になった。それからは、皆自分のことはこんな感じの名前で名乗るようにしてる。

 父さんを含めた皆は迷わずにこの名前で呼んでくれるし、こっちも呼べるんだけど、瞳子姉さんだけたまに元の名前と間違っちゃうことがある。いつも不思議に思ってる。

 

「ごめんなさいね。それで、どうしたのかしら。何か困りごと?」

「あ、えっとね。何でもないことなんだけど、ちょっと気になったことがあって」

 

 ちょっとだけ、なんと話すべきか考えた。

 でももう直球にさっさと聞いてしまおう。だから、はっきり言うことにした。

 

「エイリア学園のメンバーって、みんなお日さま園全員で出来てるじゃん?」

「……そう、なってるわね」

「? まぁいっか。とにかく、今日来てた人たちで全員だと思うんだけど……」

 

 一瞬、瞳子姉さんの言ってることがよく分からなかったけど、続けた。

 

「──なんかね、一人だけ足りない気がするの。これって多分、気のせいだよね?」

 

 ここですぐに「そうね」と一言でも貰えれば、これまでの悩みなんてなくなる。瞳子姉さんがそういったんだからっていう理由で、自分を説得できるから。

 だから、ここは肯定がほしい。むしろそれ以外がくるわけがない。そう、あるべきなんだ。

 

「それって……」

 

 だけど返ってきた答えは、全く違うものだった。

 

「『零』──のことよね?」

 

 ……れい? 例、令、霊、礼……零。

 思い付く意味をいっぱい考えた。中でも引っ掛かったのは、数字の零の意味の言葉。でも数字じゃなくて、これは名前の言葉だっていう風に思った。瞳子姉さんの言葉的にも、そういう意味なのはあってそう。

 

 名前であることは分かった。でも……待って。

 

「"れい"って、だれだっけ」

 

 ズキリと、頭が鋭く痛む。まるで、そんなことしちゃダメと叱られたときに叩かれたときのような、重い痛み。

 

 同時に沸いてくる。私にとってこの名前は、すごく馴染みがあるものだって。すごく言いやすかったし、大事なものだって訴えてくる。

 

 でも、分からない。こわい。意味が分からない。

 

「あれ? れいは零でしょ? でも知らない。そんな人はいなかった。だけどあの子はマキの……あ、れ?」

「……マキ?」

「違うよ、私はマキュアなの。でもあの子はずっと……待って、あの子ってだれ」

 

 言葉と頭がまとまらない。勝手に口が喋ってるし、自分が自分じゃなくなったような感覚。

 

 自分が重なってない。急にズレた。意味がわからなさすぎる。自分がこわい。なんで、こんなことに。

 

「零はどこ。いや零なんて知らない。でも、じゃあ……ッ!!」

 

 ズキズキする。急に痛みが強くなった。立ってられないくらいに。

 目もくらくらする。目の前か歪みはじめた。身体の力も抜けていく。

 あぁだめ、倒れる。

 

「─キ! ど───の?! あ─た────ぶ?!」

 

 何も見えなくなる前に、瞳子姉さんの呼ぶ声がした。何も聞こえない。

 

 落ちてしまう直前──奥から声が聞こえた、気がした。

 

 ──マキちゃん!

 

 その声は、なんか心地よくて……何故か、忘れたくなかった。

 

 

 

 ────────

 

 

 

 トレーニング終了後、わたしはお父さんに呼ばれて、一室の中で話をすることになった。どうやら、今日のトレーニングの様子等が知りたいようだった。

 

「いやはや、トレーニングの様子、聞かせていただきましたよ。なんと分身を作り出して、あの子たちと分身を試合させたとか」

「造作もないことです。私にとっては普通のことなのですよ」

「人は簡単にそのような出来ませんから」

 

 対面で座って、ちょっとした談笑という感じ。でも気は抜けないから、ずっと"ゼロ"の仮面をつけている。

 

「さてゼロ様……あの子たち、いかがだったでしょう。数値で見るよりも、よくなっているのではないでしょうか?」

「えぇ、そうですね。正直、想像以上に強くなったと思いました」

「そうでしょうそうでしょう。でしたら、多少計画を前倒ししてもよろしいのではないでしょうか? 私としてはもう既に、ハイソルジャーを作る段階に来ていると思います」

 

 ……やっぱりそれか。

 お父さんは、出来るだけ早く計画を進めるようにしたいらしい。

 

 ハイソルジャーをつくる……すなわち、5チームのうち2チームほどにエイリア石を与えて、そのエイリア石を与えたチームと何も与えてないチームとで対戦させて、与えてない側のチームを鍛え上げること。

 

 だけど、まだだ。

 

「いえ、まだです。あと一歩、足りてないのです。言うならば周りを見る力が」

「ふむ、なるほど?」

「個人技はそろそろよいのかもしれません。しかし今回の作戦の要であるサッカーはチームプレイ。周りを把握していればよりよくなる。それを見つける機会として私は『反省会』を彼らに開催するように伝えました。本人たちでそれに気がつけた上で、実行してみて、実行可能になって初めて、次のステージに進められるかと思います」

 

 嘘だ。口から適当言ってるだけで、本当はまだエイリア石との契約を自分にして、力だけを他の人に与えられる方法がまだ完成してないからだ。

 

 だけどそれっぽい説明をしたおかげか、お父さんは完全に納得したわけではなさそうだけど、納得しようとしてた。

 

「……そう、ですか」

「勿論、計画を早く進めたいお気持ちは分かります。私もそうですから。しかし、確実に成功させるためには何よりも準備が不可欠。申し訳ございませんが、ご理解ください」

「いえ、これに関しては私は全くの無知。ゼロ様のおっしゃる通りだと思いますので、気にしないでください。出過ぎた真似でした」

「いえいえ、そんなことありませんよ。そう思うのも自然なこと。その中でご理解いただいたこと、感謝します」

 

 伝えることは伝えた。でもこれで終わりじゃなくて、あとちょっと雑談みたいなのをしてから終わるのがいつも。もう少し仮面を被っておかないとなと思ったとき、誰かが部屋を訪ねてきた。

 

「誰です? 今は大切な会議の最中、出来れば後にしてもらいたいのですが」

「申し訳ございません。しかし、瞳子お嬢様が緊急で知らせてほしい、と」

 

 入ってきたのは、よく見かけるお父さんの部下たち。上書きは終わってる。

 

 ──瞳子お姉さんが、緊急って伝えてほしいって?

 何か、嫌な予感がする。

 

 

「イプシロンの『マキュア』が倒れました」

 

 

 ぐらり。心が、ゆれる。

 

「──ヒッ……!」

 

 ──マキちゃんが? なんで? 今日のトレーニングのせい? いや、きっとそうだ。これまでのトレーニングだと変な風になってるとかなさそうだったし、然り気無く見に行ったこともあるけど変な風にはなってなかった。なら今日のせいだ。もう少し抑えておけば……いや、マキちゃんのことをもっと見ておくべきだった? やっぱりわたしなんかがトレーニングをしちゃったから…………。

 

「ゼ、ゼロ様……?」

「──ッ! し、失礼しました。なんでもないです」

 

 気が付いたら、立っていた。眉間にシワもよってるような感じがする。ちょっとだけ、お父さんも部下の人も怯えているようだった。

 

 一応、言い訳をする。

 

「……マキュアさんもそうですが、エイリア学園の選手は皆計画を進める上で大切です。そのため、少々驚いてしまいました」

「そ、そうでしたか……」

「容態を見たいです。星二郎さん、申し訳ございませんが、お話はここまでとさせていただいても?」

「問題ありません。君、ゼロ様の案内を頼みます」

「は、はっ!」

 

 部下の人に案内されて、マキちゃんが寝てる場所まで行く。

 

 最悪の場合、わたしの全ての力を使ってマキちゃんを治す。そう決意を固めつつ、力を使うための準備を自分の中でし始めた。




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