全部全部、わたしのせいにして。   作:皇という名字、格好良すぎないか??

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かくして彼女らは同盟を結成する。

「──そう、だったのね」

 

 言葉をゆっくりと吐きながら、瞳子は自信の中で咬み砕いていく。内容は、先ほどマキが話していていた、お日さま園の皆が変わってしまった原因の出来事について。

 

 そこで瞳子が聞いた衝撃の事実。まさかの零によって、皆は作り替えられてしまったのだということが判明した。

 

 マキは話した。零の手から放たれた光を浴びてしまい、記憶が切り替わってしまったのだと。その後、零がゼロと認識が変わってしまったのだと。

 

「……」

 

 これを聞いて、瞳子が感じたのは一つのみであった。"信じられない。"

 まず、零がそんなことを出来るはずじゃない。そんなことするような子じゃない。付き合いはマキよりは濃くないものの、零の性格を考えてもそんなことができる器じゃない。

 

「零、なんで……」

 

 マキは、ゼロを零だと信じている。零が、今のゼロみたいに振る舞っているのだと、疑っていない。

 マキの今の心情はとんでもないことになっている。親友から洗脳され、自分のことをゼロと認識させている。零がゼロとして振舞っている理由として、見えているものは、信頼している義父、星二郎の計画のため。思い出す前は星二郎の計画に参加することが正しいことと認識していたため、変だと感じていなかったが、思い出した今では謎の計画に自分たちを組み込もうとしている星二郎に対しても思うところもあるはずである。

 

 親友の、自分たちを道具のように利用しようとしている行為と、それを計画している父。あまりの情報に、マキの脳内はぐちゃぐちゃであった。

 先ほど冷静にゼロとの会話を行えたのは、かなり奇跡だったのかもしれない。

 

「……ねぇ、瞳子姉さん。もしかして私がおかしいかったりするのかな……? 最初から零なんかいなくて、皆みたいに、父さんのお願いのために頑張ってるほうが、本当だったりするのかな……?」

「っ! それはないわ! 少なくとも私は覚えているし、皆もマキみたいに光を浴びて上書きされちゃっただけよ!」

「……そう、だよね。瞳子姉さんが思い出させてくれたもんね」

 

 弱弱しく笑うマキ。瞳子は見てられず、ある一つの希望(絶望)話す。

 それは、マキの認識を変えてしまう強大なもの。

 

「……大体、分かったわ。でも、こういう可能性もあると思わない?」

「……? どういう?」

「皆を上書きしたときから、零じゃなくてゼロだったという可能性よ」

「! それって……!」

 

 ここで瞳子が示す、もう一つの可能性。

 それは、最初から──零ではなくゼロであったというもの。

 

「エイリア石。父さんの計画。……ゼロの出現。全部近い日付なのよ。しかもエイリア石はゼロが持ってきたというわ。関連ないはずがないわね。

 それに皆の上書き。つまり洗脳能力があるのは確実。なら、父さんの計画はゼロがいたから……いや、ゼロが動かしているんじゃないかしら」

「……っ」

 

 これならば、星二郎の計画に賛同したり、不思議な力を発揮したり……躊躇なくお日さま園の皆を上書きするという、零では絶対にしない・できないことをやったという説明がつく。

 

「ゼロは宇宙人らしいわ。外見に関して、零の身体を真似ているのか……乗っ取っているのか」

「……っ!」

「そのどれでもないのかは分からないけど……零が姿を見せてない以上。乗っ取られてると考えていいかもしれない」

 

 眉間にシワが寄るマキ。

 

「私には、こっちのほうがしっくりくるの。優しい零があんなことをするなんて到底思えないし、する理由もない。最初から零を乗っ取って、全員を洗脳して暗躍してるって考える方がシンプルで分かりやすい。理由はわかっていないけどね」

「……」

「だから……助けなきゃいけないわ。皆を。零を」

「!」

 

 その言葉に顔を上げるマキ。改めて、マキは瞳子に味方を見るときの目を向けた。

 

「……瞳子姉さん。そういえば最初からゼロ様ゼロ様って言ってなかったよね。零のことも覚えてたし」

「そう、ね。他の人と違って、私はまだそうなってない。これまでの思い出は全部覚えてるわ。……いつでも洗脳出来てたはずなのにしなかったってことは、何かあるのかもしれないけれどね」

「! じゃあ!」

「えぇ。……マキ、私と一緒に、今動いてる馬鹿みたいな計画を止めてくれるかしら?」

「もちろん! 止めれば皆を……零を助けられるんでしょ? なら! 協力する!!」

 

 ここで、コンビが結成される。

 思いは一つ。計画を止めて、元通りの平和なお日さま園を取り戻すこと。

 

 そのためには、根本であろうゼロを倒さなきゃならない。

 だが──。

 

「まずは、仲間を増やしていかないいけないわね。私たちだけじゃ、出来ることも限られてるから」

「そう……だね。でも、どうすればいいかな」

「マキのことを見た限り、皆は完全に記憶が消されたわけではないと思うの。だから、マキには──」

 

 作戦会議。これからの動きを決める重要なもの。小さな一歩目かもしれないが、しかし全部を壊すことに向けた、たしかな一歩目であった。

 

 

 

 ───────

 

 

 チーム・ガイア内での、以前実施したゼロの分身11体との試合、その反省会の帰り道。チームの一人、八神玲名──ウルビダは一人、施設内を歩いていた。

 行先はない。ただ、チーム内部での反省会を自身の中でさらに深く落とし込むための思考の整理のために、目的なく歩いていた。

 

「……」

 

 主に挙がったのは、連携。個人の技術はこれまでの訓練により上昇しているものの、"サッカー"というチームスポーツで考えたとき、それだけではだめなのだと実感した試合であった。

 誰が何をできて、どのようにすれば試合を制御できるのか。これを考えるのが司令塔的立ち位置の一人であるウルビダに求められてる役割。であれば役割遂行のためには……チームメイトの実力を誰よりも正しく理解している必要がある。

 

「……そのためには、観察か」

 

 チームメイトの普段の訓練を様子をウルビダはしっかりと確認したことはない。それ以上に自身の訓練内容が結構きついため、それどころではなかったということもあるが。

 

 今後星二郎の計画にサッカーでかかわっていく場合、現在の課題は克服する必要がある。自身の訓練の量を減らしてでも、行う価値があると、ウルビダは感じていた。

 

「瞳子姉さんに相談してみるか」

 

 やるべきことが分かれば、あとは進むだけ。もしそれができれば、ガイアとして大きく成長できる。そうなった場合──最強の称号、《ジェネシス》を獲得することができる。

 

 ジェネシスになれれば、もっと大好きな父の役に立てる。彼女──および、現在訓練に携わっている者の原動力。父が言うのだから間違いない。故に誰も疑わない。だからこそ、強くなり続けられるのだ。

 

「……!」

 

 今後の流れを思考している最中、ふとウルビダの目に入る父の姿。窓を先の景色を見ている様子。このフロアはウルビダたちが普段使いしている訓練施設。この場は訓練の様子を観察できる場所だ。つまりは、星二郎は訓練施設を見ているということになる。

 誰かが訓練しているのか、それともただ見ているのか。どちらかだろう。

 

「父さん」

「ん? おぉ、ウルビダですか。丁度良いところに来ましたね」

「丁度良い、ですか?」

「えぇ、見てみなさい」

 

 言われたとおりに歩み寄り、父に言われるように窓を見てみる。

 姿だけで分かった。ゼロがいた。

 

「ゼロ、様?」

「えぇ、そうみたいです。私もたまたま通りかかったのですがね。どうやらこれから試合をされるようだ」

 

 確かに、ゼロはゴールキーパのポジションにおり、それ以外のゼロのフィールドには見覚えのある分身らがいる。

 反対側のフィールドには、ロボットがいる。これも見覚えある姿だ。訓練時に、相手選手として用いられれるロボット。ただし、色が今まで見てきたものと比べると少し黒いように見えた。

 

「あのロボットは……?」

「あぁ、あれは現状作れる最強のサッカーロボットですよ。エイリア石を与えていますからね。いずれウルビダたちの相手としてもつかわれる予定です。まだ試作段階ではありますがね」

「エイリア石?」

「おっと、そういえばまだ話してませんでしたね。今後全体に話す機会があるので、その時にしましょう」

「は、はい」

 

 多少気になるワードがあったものの、今後話す予定があるとのことで、一旦言及しない。それより、ウルビダには気になっている点があった。

 

 実際のゼロの実力はどれほどのものなのだろう、というもの。

 

 とんでもない力を持っていることはわかっている。実際、先日の試合も、試合というよりは訓練のそれであった。本気は出していないというのは事実なのだ。

 一方、星二郎のいう『最強のサッカーロボット』。現状の対ロボットでさえ結構手ごわいと感じているウルビダにとって、その上がいるというのが分かり少し恐ろしくなる。

 

 一体、どのような試合になるのだろう。ゼロの実力は、この試合で分かるのだろうか。

 サッカーに多くの時間を使って、実際に実力もついてきた者だからこそ、興味があった。

 

「ウルビダ。良い機会なのでしっかり見なさい。ゼロ様は普段あまり実力をこのような見える場でお出しになることはない。お前は幸運です。これが、お前たちに到達してもらいたい、果てにあるものなのですから」

 

 父からもそういわれては、見ないわけにもいかない。何も見逃すつもりなどない。こくりと頷くことだけして、意識はすべて目の前の景色だけに向けるようにしていた。

 

 ──ピィィィ!!

 

 キックオフ。ロボット側の攻撃で試合開始。

 

 速い。それがロボットらの動きに対してウルビダが抱いた感想。さすが最強というだけはある。

 

 対してゼロ側。誰も動かない。あえて攻撃を許しているよう。

 ゼロの正規ポジションはゴールキーパ。一度打たせてみようという判断なのだろうか。

 

 ゴール前に着いたロボットたち。放たれるのは──必殺シュート。

 ウルビダの目から見てもかなりの高威力。ウルビダの習得している技である『アストロブレイク』と遜色ないほどに。

 

 これを止めるには結構な力がいるはず。一体、どう止めるのかを注目していると──。

 

 ──突如、そこは宇宙となった。

 

 宇宙から星に向かって飛来してくる隕石と、それを止める守護者。

 

 隕石の飛来に合わせ、ゼロから素早く壁のようなシールドが展開される。神々しく、美しく、そして誰も破れなさそうな、頑丈な壁を。

 

 シールドと隕石の激しいぶつかり合い。それが始まったかと思えば──。

 

 ──ボールは、ゼロの前に静止していた。

 

「ッ?!?」

 

 驚きが、少し遅れて到来する。

 明らかに、変わっていた。すべてが。いや、そう思わされるだけであったのか。力が空間を捻じ曲げそう見えさせたのか。一体何が起こったのか、ウルビダには理解できなかった。

 

 既にゼロ側の攻撃が始まっている。ロボット以上に速い──いや見えない。ボールの行方を追おうとすると響かれるホイッスルの音。ゼロ側のスコアに1が加算されていた。

 

「──」

 

 言葉が出てこない。それほどに圧倒的。これが──目指すべき果てなのか。

 

 ウルビダはこの試合、自分だったらどう試合を組み立てるか、そしてゼロチームを相手にするときはどうするのかを考えながら見るつもりであった。

 しかし結果はこうだ。わかったのは、ゼロチームの全員が目で追えない速さを持っており、しかもゴールにはどうやって突破すればよいかわからない強大な守護神がいること。

 

 出てくる感情は恐怖。これが、ゼロ。

 触れちゃいけない。関わっちゃいけない。そうあるべきだ。

 そう、であるはずなのだが──。

 

「……あぁ素晴らしい」

 

 思考が中断される。漏れ出たような声。ウルビダではない。星二郎だ。

 目をやる。ゼロを見る星二郎の表情は──憧れの人を見るかのものであった。

 

「父さん?」

「──あ、あぁ。すみません、つい夢中となってしまってました。どうです? 素晴らしいでしょう、ゼロ様は」

「……はい。とても」

「先ほども言いましたが、ここをお前たちには目指してもらいます。まぁ、ゼロ様のようになれとは言いません。あそこに至れる者はいないでしょうからね」

「そう、ですね」

 

 試合に目を戻す。スコアが気が付けば5-0になっている。まだ試合開始から10分も経過していないはずだというのに。

 

 やはり、恐ろしい。これを相手することは考えたくない。どう足掻いても勝てるようには思えないのだから。

 

 だが──目は離せない。技術がある、参考になる。そういった側面もないわけではないがそうではない。

 

 ただ……ゼロがどこか苦しそうな表情をしているように、ウルビダは見えてしまったのだ。

 そしてそれは──ウルビダの記憶に確かにあるはずの誰(・)か(・)に似ている。しかし、思い出せない。いや……知らないはずなのに知っている気がする、という表現が正しいだろう。

 

「(……わからない。あれは……誰なんだ?)」

 

 その答えを知るのは、そう遠くはない。




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