男に戻りたくって!   作:欠けたチーズ

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楽しく元気よく

シドが釈放された日の夜

メーデンの服装をしてシドの部屋に向かう

 

「おう…帰る」

 

窓から入り視界に広がったのは豪華な部屋、学生寮だという事を忘れ去らせるほどには十分なほどに豪華だった、王族と会えるほどの位置にある実家でもそうそう見ない高価な絵画、珍しいアンティーク品

そしてそれを見てどう飾るかを考えているシドの姿

嫌な予感がしてきた道を戻ろうとした時首根っこを掴まれ引き戻される

 

「帰りたいぃ」

 

「手伝ってよ」

 

悪びれる様子のないシドの顔を殴りたいのを抑える、今回はこんな奴でも誘拐犯に仕立て上げられた被害者だと、自分を落ち着かせて珍しく手伝う事にした

 

「お前こんなのどこで…ああ盗賊狩りか…」

 

そういやぁなんか持って帰ってたな

盗賊やらのアジトで帰り際何かを漁っていた姿を思い出す

 

「…?」

 

机に置かれた一つの手紙が気になり中を見る

 

「あ、先見ちゃった?まぁいいかエルザにも見せる予定だったし」

 

「俺に面倒なことさせたんだこれ俺に渡せよ」

 

取り返そうした手から手紙を遠ざける

 

「なんでよ」

 

「ゼノンの奴のせいで俺が何回アレクシアからお泊まり会なんていう拷問を受けたと思ってんだよ」

 

「えぇ」

 

「アレクシアが囚われている場所教えてやるよ」

 

「…」

 

少し考えているそぶりを見せる

 

「アレクシア王族だしまだまだ強くなれる可能性もあるし主人公ポジには最適じゃねぇ?」

 

「なにが言いたいの」

 

「お前やりたくないのかよ、まだ未熟な主人公を救うシュチェーション」

 

その言葉に固まり、伸ばしていた手を引っ込めた

 

やりたいんだ

 

「この後ベータ来るらしいから雰囲気作りに一旦返して?」

 

素直にもとあった場所に戻す

 

ーー

 

シドの細かい指示により窓際に立ちベータを待つ

黒い服装に身を包み、静かにワインを嗜む姿は普段のシドとは似ても似つかず別人なのではないかと何処かで疑ってしまうほどに落ち着いた雰囲気を纏っていた

 

「時が満ちた……今宵は陰の世界……」

 

入ってきたベータに背を向け座るシャドウがいつもよりも低い声で放った言葉だった

 

「陰の世界。月の隠れた今宵は正に我等に相応しい世界ですね」

 

シャドウはグラスの中に入ったワインを口にした

そういやぁあいつ酒の味わかんなぁとか言ってなかったけ

 

雰囲気ばかりのためにそこまでするのかと内心感心しながら、高価な椅子に座るシャドウを眺める

 

「準備が調いました」

 

「そうか」

 

ベータにとって何もかも見透かしているかのような声

メーデンにとっては適当に放った言葉にしか聞こえなかった

 

「アルファ様の命により近場の動かせる人員は全て王都に集結させました。その数114名」

 

「114名?」

 

「増えたな」

 

「ッ……!」

 

シャドウの言葉にベータは焦りを浮かべていた、メーデンはフォローのように増えたと言ってくれたが、シャドウからしてみたら少なかったのかもしれないと

 

「も、申し訳……!」

 

「エキストラでも雇ったのかな……?」

 

「そう思っとけ」

 

この世界にはエキストラという言葉はないだから2人の会話はベータにはわからなかった

 

「ベータ進めてくれ」

 

「はい」

 

シャドウの発言の意味がわからなかったのが原因かベータは不安げに頷き言葉を続ける

 

「作戦は王都に点在するディアボロス教団フェンリル派アジトの同時襲撃です。襲撃と同時にアレクシア王女の魔力痕跡を調査、居場所を突き止め次第確保に切り替えます」

 

シャドウはただ頷き、先を促した

 

コイツ分かってねぇな

 

「作戦の全体指揮はガンマが、現場指揮はアルファ様が取り私はその補佐を。イプシロンは後方支援を担当、デルタが先陣を切り作戦開始の合図とします。部隊ごとの構成は……」

 

ベータが語る内容をシャドウは片手をあげて静止したその手には一つの手紙、さっき取り合いをしていた手紙

 

「招待状だ」

 

そういいベータに渡し、その内容を目にしている

 

「これは」

 

「て、なわけで俺が先陣切るぞ」

 

「任せたぞ、メーデン」

 

読み終わったであろうベータの手から手紙を抜き取り珍しく扉から部屋を出る

 

「メーデン様、その体調は」

 

「気にしなくっていい」

 

「…はい」

 

少し落ち込んだ声に内心悪いなぁと思いつつも足を進める

 

ーーー

 

周りに誰もいないのを確認してからエルザに戻り手紙に書いている内容の場所に向かう、真夜中には不釣り合いな制服姿で堂々と歩き進める

曲がり角を出れば靴を投げられ反射的に掴む

 

「よう、って何でお前がここに?」

 

「まぁいいんじゃねぇか仲の良い旧友にってな、そもそもコイツの存在も彼の方は邪魔に思ってたろ」

 

想定外の人物が現れた事に驚き話し合いを始める2人の男

 

「それもそうだな。てなわけでバッチリ魔力痕跡残ってるな。真犯人はお前だ、エルザ・レタリー」

 

「ふーん」

 

「想定外だったがまぁいい、王女誘拐の容疑で逮捕する」

 

剣を抜く2人を見ながら笑みを浮かべる

オレンジの瞳が酸化した血のように赤黒く染まる

 

「俺なぁ、ずっと思ってたんだよ」

 

「は?」

 

1人の首が跳ね飛ぶ、返り血がもう1人の男に付いた

 

「お前らって何でこうも警戒心が薄いんだろって。普通シドに宛てた手紙を俺が持っていたらおかしい、って警戒するもんだろ?なのにお前らは飼い慣らされた動物みてぇに、警戒心もなく近寄ってさ…」

 

「ひっ」

 

「馬鹿だよな」

 

エルザの足元、影が揺らぐ

影が意思を持っているかのように動き残った男の腰から肩を一筋に切った

 

「天使に会えるといいな」

 

哀れむでも蔑むでなくただ無表情に何の感情の乗っていない声を最後に男は息絶えた

 

「…弱い」

 

影、黒いスライムを魔力で操り身に纏いただの肉とかした男達を見つめて心底つまらなそうに言い放った

 

ーーー

 

轟音が遠くで響いた、その正体はデルタだろうと結論づけて暗闇の中一つの建物の上に佇むアルファを見つけ駆け寄る

 

「デルタは随分派手にやってるな」

 

建物が崩壊していく様がよく見える

 

「ええ、貴方達にはまだ追いつけないけれども私達も強くなったもの」

 

「知ってるよ」

 

「え?」

 

「お前らが頑張ってんのは全部ってるよ、ミツゴシ、作家、音楽家、建築、表から信頼を集めていたことも知ってる」

 

エルザの立場上そう言った話は耳に入ってしまう

だからシドと一緒に異世界知識を使い一儲けしようとしていたことを全てやられてしまった悲しみからまだ何が手をつけられていないかを探して、ほとんどなかったこと含めて記憶に新しい

 

「そうだったのね…ふふ」

 

「何が面白いんだよ…」

 

「面白いんじゃなくって、嬉しいのよ。貴方は普段どこにいるかも分からないから私達のことあまり知らないんじゃないかって思ってたから知っててくれて嬉しいの」

 

年相応に微笑むアルファをみてため息をつく

嫌われていると思っていたが最近はそうではないらしい、こんなふうに笑って答えてくれるし、思春期的な奴でピリピリしていたのかな

 

「よかったよ」

 

「でももう少し頼って欲しい」

 

「はいはい」

 

手をふらつかせ、歩き出す適当な場所に向かいストレス発散をしたい、もし今アレクシアのところにでも行って正体バレしてしまえばアレクシアを殺さないといけなくなるので、囚われの場所から距離をとりつつだが

 

ーー

 

皆んないろんな武器を持っている、ベータは弓矢、ガンマは大剣、デルタは拳や爪、イプシロンは大鎌、ゼータは円月輪などなど、皆上手くスライムを活用してる、そこで俺も考え剣だけだとシャドウやアルファと被ると気づきいっそのことと思い男子のロマンを詰め込んだ武器を作ることにした

 

ゲームでも漫画でも剣と銃の組み合わせが好きだった、だから色々頑張ってショットガンを作った…そう!俺がやりたかったのはショットガンと剣を使い戦う!まさにロマン!憧れ!いいよね!

 

シドからは剣だけの方が強いと言われた、まぁ見た目重視の武器だからな

 

「楽しいー」

 

襲ってくる奴は教団員だろうが騎士団員だろうが切っていく

骨のある奴はいないが切っていくこと自体も楽しいのでどんどんやる

 

異常なほどの魔力が練られていくのが遠くでもわかった

強大な魔力を感じるならアレクシアが囚われているであろう場所

 

「アレクシア自力で帰ってくるパターン?」

 

青紫色の魔力が湖一帯を囲み、そして爆発した風圧が王都中を包む

 

先までいた人影は消え辺りには死体だけが残った

風と共に消えた

 

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