その転生レッドは如何にしてアローラに伝説を作ったか 作:勇(気無い)者
それから三人は島めぐりを再開し、コウミ達は順調に旅を続けていた。
そんな中、レッドは違和感を覚える。
これまでの島めぐりの最中、一度としてスカル団に出会っていないのだ。
それに、ゲームではチラホラ登場していたハラの孫であるハウという少年。
この分だとまだ少し先だが、リーリエの兄であるグラジオの出番もあるかどうか怪しいところである。彼は五番道路で出会うハズだが。
と、考えても仕方ない事なので、レッド達は先へと進む。
それからテンカラットヒルへと向かう道中での事。
「よぉー、レッドじゃないか」
グリーンとミヅキにバッタリと出会した。
ミヅキとコウミも再開を喜び、遠慮がちに見ていたリーリエも引っ張って三人で手を繋ぎ合う。
「これから
グリーンの言葉に、レッドは眉を顰める。
ゲームでは、テンカラットヒルには雑にヒコウゼットが配置されているだけで、試練も何もなく入手するという展開だった。
しかし、グリーンの言葉が正しければ、この世界ではテンカラットヒルにも試練がある事になる。
やはりゲーム通りにはいかないな、とレッドは改めて実感した。
ちなみにだが、グリーンの腕にはゼットリングがハマっている。
「ま、結構面白い試練だったぜ。アレは初めての体験だったがよ、やっぱりオレは天才だから、すぐにコツを掴んでサクッとクリアできたぜ。オレが掴んだコツを教えたら、ミヅキもあっという間だったな」
「えへへ……」
褒められたミヅキが照れ臭そうに笑う。
「ま、普通は一日でクリアできるもんじゃないって
「あ、はい! じゃあ、コウミちゃん、リーリエちゃん、またね!」
「うん! 私もきっと、すぐに追いつくね!」
コウミとリーリエは手を振り、グリーンとミヅキを見送った。
さすがに昔のレッドとグリーンのように、コウミとミヅキをバトルさせはしない。
彼らは出会う度にバトルをしていたものだが、彼女たちのバトルは島めぐりが終わった後のお楽しみである。
それはそれとして、レッドは試練を出す人物に心当たりがあった。
雑に置かれたヒコウゼットを入手した際、どこからともなく現れてゼンリョクポーズを教えてくれるあの女性ではないか、と。
三人は先へ進むべく、洞窟へと入って行った。
テンカラットヒルは、メレメレ島の東にある、メレメレ海に突き出す山の事である。
そこへ向かうには、レッド達が入っていった洞窟からしか進む道はない。
無論、空を飛べるポケモンが居れば話は別だが。
道中、ズバットやダンゴロなどの、洞窟でよく見かける野生ポケモンと遭遇したが、それらはコウミと彼女のポケモンが全て追い払った。
基本的にレッドは手を出さず、リーリエをそばで守っているだけだ。
その光景を、たまにコウミがチラチラと羨ましそうに見ていたが。
さほど長くもない洞窟を抜け出て、外に出ると━━。
「わぁ……!」
コウミが感動したような声を漏らした。
声こそ出していないが、リーリエも心情は同じである。
そこに広がっていたのは、幾つかのコースが存在するゴルフ場。それらが上から一望できるのだ。
レッドはというと、驚きを隠しきれなかった。
ゲームでは小さくて狭い洞窟しかない場所だったテンカラットヒルが、まさかこんな事になっているとは思わなかったのだ。
そして、ここがゴルフ場であるという事は、試練を与える人物は一人しかありえない。
その人物が、レッド達の元へとやって来た。
水色のゴルフウェアを着た女性である。
左目の下に泣きぼくろがあり、長く伸びた水色の髪の毛が腰のあたりで跳ねて、翼のように広がっているのが特徴的だ。
彼女はひこうタイプのポケモン使いであり、それがキャラクターとして反映された髪型なのだろう。
「こんにちは、あたしカヒリといいます。プロゴルファーとして世界を巡っておりますが、今はキャプテンも兼任してます。よろしくお願いします」
「こ、コウミです! よろしくお願いします!」
「リーリエと申します」
カヒリが礼儀正しくお辞儀をすると、コウミが緊張したようお辞儀を返し、レッドとリーリエも頭を下げて名乗った。
「ククイ博士から、島めぐりには三人が挑戦すると聞いておりました。少し前に受けに来た男の子と女の子。そして、もう一人の女の子」
カヒリはコウミをチラリと見たが、すぐにレッドへと視線を移した。
「……あなたは島めぐりに挑戦しないのですか? 見た限り、資格は充分に備えていると思いますが」
カヒリは、ひと目見ただけでレッドから底知れない何かを感じ取ったようだ。
が、彼女の問いにレッドは首を横に振った。
ゼットワザを使えない以上、島めぐりに挑戦してゼットクリスタルを手に入れたところで何の意味もない。
それに、コウミが試練に挑戦している姿を間近で見られるので、レッドは自分が挑戦しなくても島めぐりを楽しんではいた。
「そうですか……分かりました。それでは、試練について話します。こちらに来てください」
コウミがカヒリの後について行き、レッドとリーリエも少し距離を置いてその後を追う。
その際、レッドはカヒリの後ろ姿をじっと見ながら考え事をしていた。
ゲームでの彼女の役割は、テンカラットヒルで雑に置かれていたヒコウゼットを手に入れた際、どこからともなく現れてヒコウゼットに対応するゼンリョクポーズを教えてくれる事。
そして、アローラリーグにおける、四天王の一角を任されている事。
カヒリの出番はそれだけであり、ゲームでは決してキャプテンではないし、プロゴルファーとして世界を巡っていたので、ククイ博士に呼ばれるまではそもそもアローラに居なかったハズだ。
アニポケでは、連戦連敗のスランプ中であり、極秘で故郷のアローラにかえってきたらしく。
サトシ達と出会ってポケゴルフを教える事で初心に立ち直り、スランプから脱却してゴルフの大会で優勝していた。
しかし、この世界ではテンカラットヒルにゴルフ場ができており、カヒリはプロゴルファー兼キャプテンとしてアローラに居る。
性格はアニメよりもゲーム寄りなのだな、とカヒリの後ろ姿を見ながら色々と考えていたら、不意に彼女が振り返ってレッドと視線が合った。
「……あの、どうかしましたか?」
レッドの無遠慮な視線を敏感に察知していたらしい。
レッドが何でもないと返すと、カヒリは「そうですか」と再び歩き始めた。
プロゴルファーとして他人の注目を集めている経験から、人の視線には敏感なのかもしれない。
それから三人が案内されたのは、初心者用と思しきコース。
距離は恐らく百五十ヤードほどで、パー3のコース━━つまり、平均三打を目標としたであろう。
「ここは、あなたが試練を受けるに相応しいかを計るための場所……ゴルフコースです。ゴルフの経験はありますか?」
「いえ、無いです」
「そうですか。それでは、あたしがしっかりと教えますから、一緒に頑張りましょう」
「はい!」
どうやら、ゴルフで試練を受けるに相応しいかを試し、それからぬしポケモンと戦う流れのようだ。
カヒリのレッスンが始まり、コウミだけでなくついでにリーリエも参加していた。
生前の記憶にゴルフの知識があったので、レッドは彼女達の様子を見ているだけだ。
「これがゴルフクラブです。レンタル用のもので、まずはドライバーを使います」
そう言いながら、カヒリは自分のキャディバッグ(ゴルフクラブを入れておくバッグ)から一本のクラブを取り出した。
キャディバッグに入っている物の中では、最も先端のベッド部分が大きいクラブ━━ドライバーである。
コウミとリーリエも、それぞれレンタルしたキャディバッグからドライバーを取り出した。
「まずは持ち方を説明します。ただ握るのではなく、まずは左手で握り、それから右手の小指と薬指が左手に━━」
それからカヒリはクラブの握り方からスイングの仕方まで、しっかりとコーチングした。
いきなりボールを打たせるような真似はしない。ほぼ空振りに終わるだけでなく、クラブのヘッドの付け根に当てて、折ったり曲がったりしかねないからだ。
初心者にクラブを渡して説明も無しに打たせても、上手くいく事は絶対にない。
かりにまぐれで一打目が上手くいったとしても、二打目以降でボロが出る。
ゴルフは非常に難しいスポーツなのだ。
練習にも根気がいるので、もしかしたら忍耐力や集中力を計っているのかもしれない。
「━━という感じです。それでは、実際に打ってみましょう。まずはコウミさんから」
「はい!」
コウミが緊張した面持ちでティーイングエリアに立つ。ゴルフにおいて、一打目を打つ場所だ。
ティーに乗ったボールの前にドライバーを構えながら、コウミは教わった事を思い返していた。
「肩幅に立って、やや腰を落として、腕は真っ直ぐのまま、肩や腰を中心に体を動かす。それから……クラブが元の場所を通り抜けるように意識して、振り子を意識するように力まず……スイング!」
ぶつぶつつぶやいていたコウミが、ドライバーを振った。
気持ちのいい打撃音と共にゴルフボールが打ち上がり、ポトリとフェアウェイに落ちる。
「お見事です!」
「コウミさん、すごいです!」
「えへへ……」
カヒリのしっかりとしたコーチングがあったとはいえ、初心者にしては見事な一打である。
百ヤードほどは飛んだであろう。
それからリーリエも続き、コウミほどは飛んでいないが、見事なスイングであった。
カヒリはゴルフプレイヤーとしてだけでなく、コーチとしての才能も非常に高いようだ。
それからカヒリのゴルフレッスンは続き、フェアウェイでのフェアウェイウッドやアイアンの打ち方、ラフでのユーティリティやアイアンでの打ち方。
そして、ボールがグリーンに乗ってからのパターの打ち方など、全てをしっかりとコーチしていた。
「……という訳で、一通りの説明が終わりました。これからホールを回る……といきたい所ですが、今日は遅いので挑戦は明日にしましょう」
カヒリの言葉に、一同は頷いた。
時刻は既に夕方となっており、今からプレイしては途中で暗くなる可能性が高い。
四人はゴルフ場にある大きめのコテージに泊まる事となった。
「……それじゃあ、カヒリさんがアローラに戻ってきたのは半年前なんですね」
「ええ、それまではプロゴルフツアーに参加してたから……アローラに戻ってきたのも二年ぶりになります」
「すごいです……。それでいて、何度も優勝してるんですよね」
「ここ二年で四十回ほど参加して……優勝したのは八回ね」
夕食後、そんな会話を交えたり。
「……私もお風呂入ろうかな」
「え……? 今はレッドさんが入ってらっしゃるのではないでしょうか……?」
「…………私もお風呂入ろうかなぁー」
「……コウミさん、ダメですよ」
「……私もお風呂」
「ダメですよ?」
コウミがレッドの入浴中に突撃しようとしてリーリエに止められ、こっそり行こうとして今度はカヒリに見つかり、かなりキツめに怒られたり。
「あたしの番……こっちよ! ……あっ!」
「カヒリさん、ババを引きましたね」
「そ、そんな事はありません。さぁ、次はリーリエさんの番です」
「……これにします! ……あっ!」
「リーリエちゃん、ババを引いたね」
「そ、そんな事はありません。さぁ、次はコウミさんの番です」
「ん〜……これ!」
「……うぅ」
「リーリエちゃん、顔に出過ぎだよ〜!」
寝る前に四人でババ抜きをやったりなど、楽しく過ごしていた。
それから翌日。
「……さぁ、このコースを五打以内にホールアウトする事ができれば、あたしの試練を受けさせてあげます!」
ホールアウトとは、ボールをカップに入れて、そのホールでのプレーを終了させる事だ。
コースは昨日、コウミとリーリエが練習に使ったコースである。
距離は百五十ヤードほどで、本来なら三打以内が目標のコースだが、初心者であるコウミの実力を加味して五打以内なのだろう。
「……ねぇ、せっかくだからリーリエちゃんも一緒にプレーしない?」
「えっ……でも、その……良いのですか? 一緒だと、時間も掛かってしまいますし……」
「うん! 私はリーリエちゃんと一緒にゴルフしたいの!」
「コウミさん……! あ、でも、やっぱり試練に関わる事ですし……」
「あたしは構いませんよ」
「カヒリさん……! あ、ありがとうございます!」
カヒリの許可が出たところで、二人はコースをプレーし始めた。
昨日の練習のおかげか、OB(ボールがコースの境界外に出る事)こそしなかったものの、ラフに乗ったりバンカーに乗ってしまったりなどはあった。
一度目は七打、二度目は八打掛かってしまったが、三度目のプレーにて、コウミのボールが四打目でグリーンに乗った。
「あなたならできるわ! 自信を持って!」
「コウミさん、頑張ってください!」
「………………!」
三人からの応援。とはいえ、レッドのそれは無言の圧力にしか見えないが。
幸いなことに、パターを握りしめて集中したコウミには、プレッシャーとならなかったようだ。
そして、コウミがパターを振り━━カップイン。
「や、やった……」
「コウミさん、やりましたね!」
「おめでとう! 見事なパッティングでした!」
「リーリエちゃん、カヒリさん……うぅ、私、私やりました!」
抱き合う三人。優しい笑みで見守るレッド。
優しい世界が、そこにはあった。
とはいえ、これはあくまで試練を受けるに相応しいかを見るためのテストである。
それからコウミはぬしポケモンである、一回り大きなドデカバシとバトルし、見事に勝利を収めるのだった。
「光り輝くヒコウゼット……これであなたのものになります」
「はい、ありがとうございます!」
「そして、これがヒコウゼットを扱うためのゼンリョクポーズ……あたしの舞をご覧なさい!」
カヒリがゼンリョクポーズを披露して、無事に試練は終了した。
その後、打ちっぱなし━━専用打席から繰り返しボールを打つ練習場があると聞いて、三人は是非プレイしてみたいとそちらに移動。
コウミとリーリエは使い方をカヒリから教わり、横からそれを見ていたレッドも打席に立った。
「本当にコーチングしなくて大丈夫ですか?」
カヒリの言葉にレッドは頷く。
コウミとリーリエのプレーをずっと見守っていたし、何より前世の知識で打ち方は知っている。
そして、レッドはレンタルしたドライバーを握りしめ、全力で打った。
「嘘っ……!?」
「えぇー!?」
「レ、レッドさん……すごいです……」
凄まじい打撃音と共に飛んでいったゴルフボールは、一番奥のネットに余裕で直撃。距離を測った場合、五百ヤードは飛んでいたかもしれない。
━━あっ。
レッドが小さく声を漏らす。
「レッドさん……?」
「どうかしたんですか?」
コウミとリーリエの言葉に、レッドは何でもないと答えながらクラブを背中に隠した。
怪しく思ったカヒリがレッドに近づき、彼の腕を掴んで引き寄せる。
「……えぇ!?」
「ゴルフクラブが……!」
レッドの持っていたドライバーが晒された。
グリップはボロボロで、持ち手はレッドの手の形に合わせて曲がっている。たったの一打でこうなったらしい。
己を鍛えすぎた結果、力を制御できない悲しきモンスターと化したレッドは、ゴルフクラブの持ち手をグチャグチャ曲げてしまったのだ。
この後、カヒリにめちゃくちゃ怒られた。
そして、ゴルフ場に「レッド禁止」という意味不明な看板が立てられる事となった━━というのは余談である。
あ、ありのまま書いていた時の事を話すぜ!
私は手早く試練の話を書いていたと思ったら、いつの間にか一話使っていた……。
な……なにを言ってるのかわからねーと思うが、私もなんでこんな長々とゴルフの話を書いたのか分からなかった……。
頭がどうにかなりそうだった……。
尺稼ぎだとか遅延行為だとか、そんなチャチなもんしゃあ断じてねえ……。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。
次の話と合わせて5,000字程度と考えてたんですがね……。
今回だけで六千超えとるわ、今までの話で一番長いじゃねーか。まぁ、書いてて一番楽しかったまであるけど……。
少女達がキャッキャウフフしてるのは良いですね。
レッドさんほぼ空気だったけど……いや、最後に盛大にやらかしたか。
釣り堀の「八木禁止」「鷹村禁止」「青木禁止」みたいな看板がゴルフ場に立てられるという珍事。
レッドのよろしくない伝説が、アローラのゴルフ場に……。
この締めくくりは半分くらい書いてた時に思いつきました。
一応、本作の最後までの話の流れは考えてあります。
二十話ぐらいで終わる予定だったけど、本当にそれまでに終わんのか……?
よろしければ、最後までお付き合いください。
以下Q&A。
Q.レッドの飛距離は凄いの?
A.かなり、やる。
かなりというか、男性の平均飛距離が200〜260ヤード、女性の平均飛距離が150〜200ヤード。
プロの男性が約300、女子が235ヤード。
飛距離を競うだけのドラコンで400ヤードほど。
で、ゴルフの世界一の飛距離が579.63ヤード。
……500ヤード飛ぶのは、かなりどころではない。
しかも世界一の記録はドラコン用の特別な飛距離重視のドライバーを使っているハズなので、一般のクラブで打って500ヤードとか出る訳ないです。
多分、ゴルファーの方が見たら有り得なさすぎて怒るかもしれません……。
フィクションという事で、どうか見逃してください……。
Q.なんでゴルフ詳しいの?
A.ゴルフの販売員やってました。
プレーした事はないです。色々教えてもらっただけの、うわべの知識で書いてます。
何か間違ってるところとかあったら……ごめんなさい。
Q.グリポ。
A.まさかのミミッキュ。
これ見た時に、ニヤニヤしながら展開を考えたぐらい面白かったですw
第七世代の暴れん坊、ミミッキュ……レート戦のこと考えたら逸材ですね。
特性がインチキ過ぎた。SV環境では落ち着いてるんですかね?
というか、なんであんなピカチュウの事恨んでるんですかね?
とある人が書いた「ミミッキュと深い闇」を見てから、もうそうなのかなとしか思えなくなりましたけど。
あ、前話で少し変えた部分があります。
イリマの試練でぬしポケモンのアローララッタって書いてましたが、正しくはデカグースでした。
既に修正してあります。本当に申し訳ない……。
昨日、ポケモンサンを買いまして、今日イリマの試練突破して気づきました。
買ってよかった……危うく永遠に気づかないところだった……。
とてもどうでもいいですが、ラルトスが捕獲できないことに気がついて発狂しそうです。
あたしのウルトラムーン返して……どこにいったの……。