その転生レッドは如何にしてアローラに伝説を作ったか   作:勇(気無い)者

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12.三十匹捕獲されたポケモン

 カイタイシティを出て四番道路を通り抜けると、そこはオハナタウンである。

 西部劇にでも出て来そうな街並みが特徴的だ。

 クラッシュタウンやリアリストという謎の言葉がレッドの頭を過ったが、何のことかは分からなかった。少なくともポケモンに関係しているものではない。

 

「なんだか、観光客が多いですね……」

「そうなの?」

 

 リーリエの言葉にコウミは首を傾げる。

 コウミはメレメレ島以外の事は何も知らないので、人出の多寡についてなど分からない。

 レッドもこの世界について詳しい訳ではないが、ゲームの時と比べれば人は多いと思った。

 それに、写真を撮っている者もおり、彼らが撮っているのは何もない牧場の広い敷地である。

 

「なんだろ、あの牧場に何かあるのかな?」

「そういった話は聞いた事がありませんが……もしかしたら、何かイベントがあるのかもしれません」

「きゃああああぁぁぁぁっ!!」

 

 唐突な少女の悲鳴が聞こえてきた。

 

「何々!? 何事なの!?」

「あっ、あそこです!」

 

 リーリエが指差す先には、ケンタロスに乗って爆走するカウガールの姿が。

 

「どいてどいてどいてえぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 カウガールが涙目になりながら叫び、通行人たちが道の端に避ける。どうやらケンタロスが暴走してしまい、降りるに降りられないようだ。

 まだ少し距離はあるが、レッド達の方へ近づいている。

 

「ど、どうしましょう!?」

「どうするって、助けなきゃ!」

「どうやってです!?」

「それは、えっと……あ、レッドさん……?」

 

 二人のやり取りをよそに、レッドはケンタロスの進行上に立ち、レスラーのように低く構えた。

 

「ちょちょっ、ちょっとぉ!? ケンタロスが言うこと聞かないの! お願いだからそこどいてえぇぇぇぇっ!!」

「レッドさん!? 危ないですよ!?」

「ケンタロスさんが、もうそこまで迫ってます……!」

 

 そのままケンタロスはレッドへと突撃し━━レッドは突き飛ばされる事なく、ケンタロスの角を両手で掴んだ。

 十メートルほど押されたレッドであるが、しっかりと足で制動を掛けて踏ん張り、ケンタロスの動きを止めた。

 

「えええぇぇぇぇぇぇっ!?!?」

 

 カウガールが目を剥いて驚きの声をあげる。

 ポケモンではなく、まさか人間が腕尽くでケンタロスの動きを止めるとは思っていなかったのだ。

 それでもケンタロスの興奮は収まらず、拘束を振り解かんと暴れているが、不意にケンタロスとレッドと目があった。

 瞬間、ケンタロスは背筋に冷たいものが走るのを感じた。

 角からミシミシと響いてくる嫌な音が、その恐ろしい感覚を加速させる。

 目の前の人間が本気を出したなら、瞬く間に角はへし折られ、自分は叩き潰されてしまうだろう。

 生物として格が違う相手を前にして、ケンタロスは嘘のように大人しくなった。

 

「よ、ようやく大人しくなってくれた……。なんかすごいめちゃくちゃなものを見た気がするけど……お兄さん、ありがとうございます」

 

 カウガールがお礼を言いながらケンタロスから降りた。

 

「本当に言うこと聞いてくれなくて、どうしようかと……」

「……どうしてケンタロスさんは、そんなに興奮していたのですか?」

「ああ、この子ね……他の地方からやって来たばかりだったから、慣れない土地で興奮してたんだと思う。……なんか、かりてきた猫みたいに大人しくなっちゃったけど」

「そうだったんですね……よしよーし」

 

 大人しくなったケンタロスを、ここぞとばかりに撫でるコウミ。

 リーリエも触りたそうにはしていたが、先ほどの暴走具合を見たせいか、気後れして近づけずにいた。

 

「本当に大人しいなぁ……私なんて、最初は近付いただけで頭突きされそうになったんだけど……まぁ、いいか。あなた達も観光で来たの?」

「あ、私が島めぐりに挑戦中なんです」

「あー、そっかそっか。それでオハナタウンに立ち寄ったのね」

「あの、よろしいですか?」

 

 リーリエがおずおずと質問する。

 

「なんだか観光の方が多いような気がしますが、何かあるのですか?」

「あー、それね。明日、ケンタロス競走があるのよ」

「「ケンタロス競走???」」

 

 コウミとリーリエが首を傾げた。

 

「そ。牧場の敷地内から五番道路をコースとして、ケンタロスで競走するの。この子も出走予定だったんだけど、あの暴走っぷりを見ちゃうとねー……」

「そうなんですね……それって、一般の人も参加OKなんですか?」

「え? まぁ、一般の人からの参加もあるよ。ただ、ケンタロスを持ってないとダメだけど」

「なるほど……レッドさんなら優勝できるんじゃないですか?」

 

 レッドもグリーンもカントーのポケモンは全て捕まえており、その話はコウミもミヅキもリーリエも知っている。

 そして、カントー地方出身のコウミは、カントーのサファリゾーンにケンタロスが生息しているのを知っている。

 そこからレッドがケンタロスを捕まえている事は、容易に想像できるのだ。

 レッドのリザードンとバシャーモのとんでもバトルを見ていたコウミとしては、彼の持つケンタロスもさぞ規格外なのではないかと思ったのである。

 

「ん……? レッド……?」

 

 コウミの言葉に、カウガールがレッドを見つめる。

 ずずいっと近寄り、その距離およそ十センチ。

 コウミが「近くないですか!? 近くないですか!?」と喚いているが、全く耳に入っていない様子。

 

「レッド……トレーナーでレッドって、あの無冠のチャンピオンのレッド……?」

「そ、そうですけど、近過ぎないですかね!?」

 

 コウミが引き離そうとしたが、カウガールは自分からガバッと離れた。

 そして、大きな声で━━

 

「きゃあああっ!! ()()()()だあああぁぁぁぁっ!!」

「え? レッドだって?」

「レッドって、あのレッド?」

「無冠のチャンピオンの……?」

「レッド様がなんですって!?」

「レッド様がいるの!?」

「あっ! あの帽子は!」

 

 ━━カウガールが叫んだせいで、観光客たちにレッドの存在がバレた。

 その直後、人混みから一人の少年がレッドの方へと駆け寄ってきた。

 グラサンを掛けた、明るい茶系の髪を立たせてツンツンヘアーにしている少年━━どう見てもグリーンである。

 

「ボサっとすんな! 走れ!」

 

 彼はレッドの腕をガシッと掴んで引っ張り、それにつられてレッドも走り出す。

 

「あっ、あっ……レッドさん……」

「……行ってしまわれましたね」

「コウミちゃん、リーリエちゃん!」

 

 取り残されたコウミとリーリエだったが、背後からの声に振り返ると、ミヅキが茂みの中から手招きしていた。

 二人はミヅキに駆け寄りながら声を掛ける。

 

「ミヅキちゃん!?」

「こっちこっち! ついて来て!」

「あ、うん! 行こ、リーリエちゃん」

「は、はい!」

 

 二人はミヅキの後に続き、茂みの中へと入っていった。

 一方のレッドとグリーンはというと、彼らも途中で茂みの中へと入り、十分近く走り続けたところでようやく止まった。

 

「ふぅ……ここまで来れば大丈夫だろ。ったく、お前も有名人なんだから気をつけろよな」

 

 今までにも似た事例が無かった訳ではない。

 が、基本的にジムバトルの時にジムトレーナーからサインや握手を求められる程度で、道端を歩いていて身バレするような事は無かったのだ。

 というのも、レッドがいつも被っている帽子のおかげである。

 

 彼も無冠のチャンピオンという事で、かなり人気はある方だ。

 グッズ類も販売されており、レッドの帽子も大量に売れていた。

 そして、同じ帽子を被っている人間をチラホラ見かける事もある。

 まさか本物のレッドがこんなところに居るわけないという先入観から、スルーされていたのだ。

 レッドは己の認識を改め、助かったと礼を述べた。

 

「ああ、気にすんな。これから気をつけりゃいい。それよか、歩きながら話そうぜ。ミヅキたちと落ち合う場所を決めてあるんだ」

 

 グリーンはそう言って歩き出し、レッドも横に並んで歩く。

 

「コウミの試練はどこまでやった? ……そうか、俺とミヅキはせせらぎの丘で試練を終えたところだぜ。で、明日はケンタロス競走があるから、オハナタウンに引き返してきたんだ。当然、お前も出るだろ?」

 

 グリーンがニヤリと笑って問いかけた。

 レッドとしても面白そうなので、出られるなら出たいところではある。

 しかし、レースに出れば目立ってしまうのでは、と疑問を呈した。

 

「んなもん、そういうお祭り事は目立ってナンボだろうよ。で、レース終わったら上手い具合にズラかるんだよ。まぁ、仮に出ないっつっても出るしかないけどな。お前の出走登録もしちまったし」

 

 なんとも勝手な行為に思えるだろうが、レッドが本当に嫌がりそうな事は決してやらないので、これはグリーンが彼の性格を読み切ったうえでの行動である。

 伊達に生まれた時から幼馴染みの間柄ではない。

 

「つー訳でレッド、勝負しようぜ。どっちが一着を取れるか、な」

 

 グリーンからの宣戦布告。自分かレッドのどちらかが一着になると確信し、他の参加者は眼中にない様子である。

 他の参加者が聞けば、なんて不遜なガキだと怒り狂うだろう。

 しかし、レッドもグリーンの言葉に疑問など持たず、当然のように勝負を受けた。

 

「そうこなくっちゃな、楽しみになってきたぜ!」

 

 楽しそうに笑うグリーン。

 ちなみに、自分が今日アーカラ島に来なかったらどうするつもりだったのかを聞くと、普通に夜になる前に電話を掛けるつもりだったらしい。

 

「そうだ、話は変わるけどよ。ケンタロス競走が終わった後、俺たちはそのまま火山の方の試練を受けに行こうと思ってるんだが━━」

 

 それから二人は情報交換を主として話し合っていたが。

 

「あ、グリーンさん、レッドさん! やっと見つけました」

 

 しばらくして、ミヅキがコウミとリーリエを連れて現れた。

 

「おー、ミヅキ。やっと来たか、遅かったな」

「え、えっと……野生のポケモンとかが居たので、それを見てたら遅くなっちゃったんです」

「えー、ミヅキちゃんそれは無理があるよ。ここに来るまで三回くらい、こっちで合ってるかなぁとか、北ってどっちだっけ、とか言ってたじゃん」

「わー! そんな事言ってないです! 言ってないですからね! グリーンさん、レッドさん!」

「はっはっはっ。そんな隠さなくても、ミヅキが方向音痴だってのはとっくに知ってたぜ」

「バレテタンデスカッ!?」

「あ、なるほど。それで地図を確認する時、わざとらしい声を出して、野生のポケモンさんを指差すことで誤魔化していたのですね」

「リーリエちゃんっ!?」

 

 ミヅキの唐突なポンコツ暴露大会に、レッドは顔を逸らして笑いを堪えていた。

 何気に天然な発言でうっかリーリエを晒す彼女の言葉が、レッドには一番刺さったらしい。

 

「もー、コウミちゃんが変なこと言うから〜!」

「えへへっ、だってミヅキちゃんの発言が面白くて……そういえば、さっきも面白いこと言ってたね。地図を見ながら、北は動くから〜とかなんとか。うふふ、北は動く訳ないのにね」

「わーっ! ……もう、コウミちゃん許さないよ! チューしてやる! てんしのキッスをくらえ!」

「キャーッ! あくまのキッスされる!」

「誰がルージュラよっ!」

 

 二人の漫才に思わず笑みが(こぼ)れる三人。

 何を笑ってるの、とリーリエにもキスしようとするミヅキ。

 この後、コウミとリーリエはミヅキからめちゃくちゃほっぺにチューされた。




 何これ、百合タグ付けた方が良いですか?
 ただの悪ふざけで三人とも恋愛観はないですけどね。
 百合タグ付けたら逆に怒られるヤツ。
 なんか女の子同士でキャッキャウフフしてばっかだな……。
 というか、あくまのキッス調べたらマジでルージュラ専用技でびっくり。
 唯一、ドーブルがスケッチで覚えられるくらいか。
 私は赤緑黄、銀、ルビー、ウルトラムーン、今やってるサン以外のポケモンを触ってないので知識が不足しております……。
 イチイチネットでポケモンが覚える技やアイテム、人物やそのセリフなどを調べて書いてるので遅々として執筆が進みません。
 ……申し訳ないです。

 キリが良い感じのオチがついたので切りました。
 え? レッドとグリーンの勝負?
 シュワット!
 次話まで! 次話までお待ち下さい!
 次話になれば、きっと伝説の超ケンタロス競走で勝負するハズです!
 作者は嘘つかない、間違えるだけ。
 ……いや、ごめんなさい。
 本当に次回やるんで、勘弁してください……。


Q.クラッシュタウンやリアリスト。
A.遊戯王5D'sから。
 サンムーンやっててオハナタウン入った時の私の脳裏に過った言葉。出来心だったんです……。
「ダークシグナーだった頃のお前はもっと輝いていたぞ!」
 詳しく知りたい方は満足町で調べてみてください。

Q.北は動く発言。
A.某ホラゲ王の忍者の奥さんの発言から。
 「北は動く」で検索して動画に切り替えると、切り抜き動画が一番上に来ます。
 誰が分かるんだよ、分かった人はマジですごい。居ないと思うけど。
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