その転生レッドは如何にしてアローラに伝説を作ったか   作:勇(気無い)者

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16.しれんその1があらわれた! 中編

「着きましたよ。せせらぎの丘の最も奥である、海辺のエリアです」

 

 スイレンに案内された場所は、砂浜のある場所だった。

 と言っても、岩が遮って海との境界線となっており、上流から水が流れてきていくつかの滝を形成している。

 海辺にありながらも、湖のような地形をしていた。

 この場所に入る際、一行は木造のゲートのようなものを潜った。

 

「さて、わたしにつられてここまで来ましたね、コウミさん」

「え……?」

 

 唐突に黒幕のような事を言い出すスイレンに、コウミは僅かな警戒を見せる。

 

「キャプテンゲートを越えたということは、試練が始まるということ! これからが本番ですよ! と言う訳で、こちらをどうぞ」

 

 スイレンがどこからか釣り竿を取り出した。

 コンパクトロッド(折り畳み式)ではあるが、どこにしまっていたのだろうか。カバンなどは持っていない。

 釣り竿を受け取りながらも、コウミは疑問符を浮かべた。

 

「どうも……って、釣り竿でなにを……?」

「釣り竿でやれることは決まってるじゃないですか。水ポケモンを釣るんです」

「水ポケモンを釣るんですか」

 

 コウミのオウムがえし。しかし、うまく決まらなかった。

 

「……コウミさん。試練でやる事はなんですか?」

「え? えっと……キャプテンの出す嫌がらせを潜り抜けて、ぬしポケモンを倒すこと?」

 

 無自覚なトゲを見せるコウミ。ビショビショにされたのを根に持っているのだろうか。

 スイレンの顔が僅かながら引き攣る。

 

「い、嫌がらせ……難問です。キャプテンの出す難題をこなして、ぬしポケモンに挑むんです」

「なるほど。……で、今から何を?」

 

 察しが悪過ぎるコウミの頬を、スイレンがむにむにし始めた。

 

「は、はひふふんへふは(なにするんですか)〜」

「いえ、別に。……コウミさんには、今からぬしポケモンを釣り上げてもらいます!」

ふひほへほふほ(ぬしぽけもんを)……!? って、いつまでやってるんですか!」

 

 スイレンの腕をはたき落として、コウミの頬は解放された。

 

「いえ、コウミさんのほっぺ気持ち良くて……もうちょっといいですか?」

「あうー、やめへふははい(やめてください)〜。おはへひは(おかえしだ)〜」

はひふふんへふは(なにするんですか)〜。わらひはひゃふへんへふほ(わたしはキャプテンですよ)〜」

「ああっ……! お二人が喧嘩を……! 喧嘩をしています……!」

 

 互いの頬をむにむにし続ける二人。その様子をハラハラと見守る事しかできないリーリエ。

 どう見てもふざけ合っているだけだが、リーリエには喧嘩に見えるらしい。

 レッドはため息を吐くと、コウミとスイレンの頭にゲンコツを落とした。

 

「いたいっ! ……何をするんですか、レッドさん。わたし、コウミさんのほっぺを堪能していただけですよ」

「レッドさん、どうして私まで……」

 

 涙目の二人に、真面目にやれと促すレッド。

 スイレンが咳払いをし、気持ちを切り替えた。

 

「んんっ! そうでした、試練の途中でした……。すみません、コウミさん。改めて、試練の内容はこの場所に棲息するぬしポケモンを釣ることです!」

「なるほど……でも私、釣りした事ないんですけど……」

「そんな難しい事はありませんよ。糸を垂らして、ポケモンが掛かるのを待つだけです。習うより慣れろです、早速やってみましょう」

 

 スイレンは竿とリールの使い方だけ教えると、コウミをラプラスに乗せて送り出した。

 その際、リーリエにも釣りをやらせてあげようと、レッドは「すごいつりざお」をリーリエに貸して、釣りのやり方を丁寧に教えた。

 そして、ラプラスにも乗せてあげようと思い、ラプラスを繰り出すと。

 

「クゥーーーンッ!」

 

 嬉しそうな声をあげながら、レッドに顔をドカッと押し付けるラプラス。サーナイト以上に甘えん坊な性格だ。

 なお力加減を知らないので、常人なら放物線を描くように吹き飛んでいる。

 

「ラプラスさん、可愛いです……!」

 

 パワーは全く可愛げがないレベルだが。

 ひとしきり撫でてやった後、リーリエを乗せて送り出した。

 レッドが乗っていないので、何度も何度も彼の方を振り向いていたが。

 それからコウミは適当な場所で、スイレンに教わったように竿を振り、リールを巻こうとして。

 

「あ、アレ……? 動かない……なんで……?」

 

 コウミがリールを巻こうとして、ガチャガチャやっている。

 レッドがよく目を凝らして見ると、リールの糸がグチャグチャになっていた。

 というか、スピニングリールではなくベイトリールを使っている。

 

「おやおや、トラブルみたいですね。レッドさん、良かったら助けてあげてもらえませんか? 先ほど、リーリエさんに竿の使い方を詳しく教えていたから、釣り竿の使い方はもちろん熟知していますよね?」

 

 そう言いながら、スイレンはどこかニヤニヤしている。

 コイツ確信犯で初心者のコウミにベイトリールを渡しやがったな、とレッドは思った。

 しかし、それ以前に試練を手助けする事になってしまうのでは、と疑問を投げかけると。

 

「構いませんよ、それぐらいは。ぬしポケモンとのバトルに手を出さなければOKです」

 

 との事らしい。キャプテンであるスイレンがそう言うなら、別に構わないのだろう。

 

「さぁさ、愛しのコウミさんが待ってますよ。コウミさんとラプラスを呼び戻して、一緒に乗ってあげてくだふみゅうー

 

 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべるスイレンの頬を、レッドはむにむにして黙らせた。何となくイラッときたからだ。

 スイレンはゲームともアニメとも全然違う性格をしてやがるな、と思いながらもレッドは飛び上がった。

 

「ええっ!?」

 

 スイレンが目を丸くする。

 なぜなら、レッドが二十メートルほど離れたコウミのラプラスまで、ひとっ飛びで移動したからだ。

 

「わわっ!? って、レッドさん!?」

 

 急にラプラスが揺れて、後ろを振り返ったらレッドが居たので驚くコウミ。

 

「あ、あれ……? レッドさん、どうやってここまで━━ひゃっ!?」

 

 スーパーマサラ人ジャンプを見ていなかったコウミは疑問に思ったが、レッドはそれよりも釣り竿を優先した。

 その際、後ろから抱きしめるような形になり、赤面するコウミ。

 それを砂浜から眺めてニヤニヤするスイレン。

 

「クゥーーーンッ!!」

「わわっ……!? どうしたのですか、ラプラスさん……!?」

 

 リーリエの乗るレッドのラプラスが、コウミの方を見て騒ぎ出した。

 レッドが他のラプラスに乗って、嫉妬しているようだ。

 そのままコウミ達の方へ近づこうとしたラプラスだったが、レッドに来るなと手で制されてしまった。

 ガーンとショックを受けるラプラス。

 彼女はそのまま水面に顔を突っ込むと、泡をブクブクと立て始めた。

 たまに顔を上げてレッドを見るも、自分を見てくれないので再び顔を沈めて泡をブクブク。

 レッドへの抗議行動である。要は拗ねているのだ。

 ラプラスはこれを何度も何度も繰り返す。

 

 レッドも気付いてはいるものの、本当にそれどころではないので無視していた。……後で思う存分甘やかそうと心に決めながら。

 コウミの使ったリールはベイトリールと言って、上級者向けのリールだ。

 投げた際にサミング(スプールという糸が巻かれた部品を指で押さえる動作)しないと、糸が出過ぎてスプールに絡まってグチャグチャになってしまうのだ。

 これをバックラッシュという。初心者にありがちなミスである。

 十分ほど掛かって、レッドはようやくリールを直した。

 場合によっては三十分以上格闘するハメになるので、手早く直せた方だろう。

 その間、コウミは夢心地であった。

 

「レッドさん、ありがとうございます。ごめんなさい、手間を取らせてしまって……」

 

 気にするな、とレッドは声を掛け、改めてコウミにベイトリールの使い方を丁寧に教えた。

 密着状態に慣れたのか、コウミも真剣にレッドの説明を聞いて、リールの扱いをマスターした。

 なお、スイレンは二人を眺めながらずっとニヤニヤしっぱなしである。

 なんと"いたずらごころ"溢れる少女であろうか。変化技を使ったら優先度が+1されそうである。

 そのまましばらく二人は一緒に釣りをした。

 ベイトリールは着水時だけでなく、風の影響を受けてバックラッシュすることもあるので、レッドは一緒に居たままの方が良いと判断したのだ。

 しかし、あれから三十分近く経過するものの、一度としてアタリは来なかった。

 

「……釣れないですねぇ。ふわぁ〜ぁ……」

 

 コウミがあくびをして、レッドもつられてあくびをする。次のターンに眠ってしまいそうだった。

 リーリエの方も、釣り竿を握りながらうつらうつらと頭を揺らしていた。

 彼女の乗るラプラスはというと、相変わらず抗議行動を続けていたが。

 しかし、あまりにも釣れなさすぎである。

 これにはスイレンも疑問を抱かずにいられなかった。

 ミヅキとグリーンが試練を受けに来た際は、十分もしない内にぬしポケモンを釣り上げ、そのままバトルに勝利していたものだ。

 ……グリーンは釣りだけさせて、スイレンの本気の手持ちとバトルしていたが。

 

「どうしたのかしら、ヨワシ達……」

 

 つぶやくスイレン。

 しかし、ついにレッドとコウミが進展を見せる。

 ようやく釣り竿にアタリが掛かった。

 

「わっ、わっ、わっ……! ど、どうすれば……!」

 

 思ったよりも引きが強く、焦るコウミ。

 落ち着くよう諭しながら、レッドはコウミが落ちないように支えつつ、釣り竿を引く。

 かなり引きが強い。間違いなく大物である。

 なんとかリールを巻いて引き寄せると、水面に大きな影が映し出された。

 それは飛び上がってコウミの前に姿を見せる。

 特性「ぎょぐん」によって巨大化した、ヨワシの「むれたすがた」だった。

 このヨワシこそがぬしポケモン━━スイレンが鍛え上げたポケモンである。

 

「お、大きい……!!」

 

 あまりの大きさにコウミが気圧される。

 その全長は八メートルを超えるほどで、コウミ五人分を優に超える大きさだ。

 おまけに水面の上に浮いており、いかなる力でそうなっているのかは不明である。

 レッドはコウミの肩にポンと手を置き、後は頑張れと言い残してラプラスを飛び降りた。

 

「そんな、レッドさん━━って、ええっ!?」

 

 コウミが振り返ると、レッドは必死に手足を動かして水の上を走っていた。

 その行動にはコウミとスイレンだけでなく、ぬしポケモンのヨワシすらも目が釘付けである。

 十五メートルまでなら問題ないの精神で水上を移動するレッドは、やがてスイレンの居る砂浜へと到達。

 膝まで浸かった程度で、無事に渡り切った。……跳ねた水でほぼビショ濡れだが。

 

「…………レッドさんって、実はポケモンだったりしますか?」

 

 スイレンの唐突な疑問にリザードンを出しながら、そんな訳ないだろうと返すレッド。

 やっている事が非常識極まりないだけに、スイレンの疑問はあながち的外れでもないように思えてしまう。

 なお、ラプラスから陸地までひとっ飛びで移動しなかったのは、それをやると蹴った反動でラプラスが揺れてコウミが落ちかねないからだ。

 そして、リザードンの尻尾の炎で暖まり、服を乾かし始めた。

 

「う、うぅっ……ちょっと不安だけど、やるしかないよね……!」

 

 コウミは覚悟を決めて、ポケモンが入ったモンスターボールを取り出すのだった。




 な、なんかスイレンがやらしい子になってしまったぞ……。
 でも好き……って言ってくれる読者さんが居てくれたら嬉しいなぁー!(チラッチラッ)
 いや、すいません、指が勝手に動いてスイレンがこんなことに……。

 そう言えば今さらなんですが、レッドの手持ちでピカチュウ、リザードン、バシャーモは♂。
 サーナイト、ラプラスは♀です。なので、本文中のこの子達は「彼女」という代名詞を使ったりしています。
 ……あともう一匹のポケモン?
 それは最終回のお楽しみです……フフフ。
 ケンタロスではないです。彼は競走前にボックス送りになってます。
 レッドと走れなかった悲しみを胸に、マサラタウンの牧場を爆走している事でしょう。

 あ、どうでも良い話ですが、一応Switchはアカウント三つ作ってるので、それぞれでプレイ可能です。
 ドラゴンズドグマやる時に、パーティメンバー全員自分のキャラで固めたかったので、その時に作りました……。
 バイオレットを買ったのは……カタログチケットでの引換入手で、欲しいものがあんま無かったのと、ミライドンに乗りたい気持ちが抑えきれず……。
 とか言いながら、学校に行かず色んな町やスター団アジト探索とかしてるんですけどね、徒歩で。トホホ。

 しかし、残ったカタログチケット一枚をどうしようか……。
 剣盾買っても良いんですがね……外伝的な話でグリーンをガラルに行かせる案があるので……。
 でもSVほどやり込まない気がするから、ダウンロード版じゃなくても良い気がする……。
 ZAは……どうしようかな……戦闘システム違うからあまり乗り気じゃないけど、SVと違ってオシャレできるのは惹かれるるるる……。
 とりあえず保留で……。


Q.中編ってなんだよ
A.前中後の中です
 そんな事わかってんだよ!
 というツッコミが飛んできそうですね、すいません……。
 なんか書きたい事が多すぎてこうなりました……。

Q.ヨワシなんで浮いてんの?
A.ゲームでコイキング以外みんな浮いてたから……
 戦闘になると、コイキングはビチビチ跳ねてるくせに、ヨワシやらトサキントやらラブカスやらは宙に浮いてるんですよね……。
 多分、本当に空中に浮いてる訳じゃなく、水ポケモンが泳いでるという演出なんだろうけど、なんかもう浮いてるようにしか見えなくなった。
 と思ってたけど、SVでシビシラスとかギャラドスとか、何の力か分からんけど浮いてるからあながち間違ってない気がする……。
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