その転生レッドは如何にしてアローラに伝説を作ったか   作:勇(気無い)者

18 / 18
17.しれんその1があらわれた! 後編

「おねがい、ウォーグル!」

 

 コウミがボールを投げると、中からウォーグルが飛び出した。

 今のラプラスに乗った状況で、コウミの手持ちに戦えそうなポケモンが空を飛べるウォーグル以外に居ないので、消去法による選択だ。

 

「ウォーグル、"つばさでうつ"よ!」

 

 コウミの指示に従い、ウォーグルはヨワシに向かって飛ぶと、すれ違いざまに翼を叩きつけた。

 巨大な体を構成するヨワシが、ボロボロと十数匹は剥がれ落ちただろうか。

 その割には見た目に変化が無い。

 

「これは一筋縄じゃいかなさそう……! でも諦めないわ! ウォーグル、もう一度"つばさでうつ"よ!」

 

 コウミの指示を受け、ウォーグルは空中で切り返すと、再びヨワシに向かって突っ込んだ。

 しかし、コウミはこの選択を後悔する事になる。

 ヨワシが大きな口を開いて、"れいとうビーム"を吐き出したのだ。

 ウォーグルは直撃して、あっという間に凍りつくと水の中へ落ちていった。

 

 レッドは驚いた表情でスイレンの方を見る。

 ヨワシは自力で"れいとうビーム"を覚える事はなく、わざマシンを使うなり教え込むなりしないと使えない技だ。

 どちらの方法で覚えさせたのかは分からないが、スイレンがわざわざ"れいとうビーム"をヨワシに仕込んだのは間違いない。

 当のスイレンは不適な笑みを浮かべていた。

 

「あぁっ……ウォーグル……!」

 

 コウミは慌ててボールを取り出し、ウォーグルに向けてかざす。

 ボールの先から赤い光がウォーグルに向けて伸び、ウォーグルはボールの中へと戻っていった。

 

「ごめんね、ウォーグル……! 私のせいで……!」

 

 ウォーグルの入ったボールを、コウミは愛おしそうに抱く。

 

「すぐに終わらせて、ポケモンセンターに連れて行くからね……出てきて、ピカチュウ!」

 

 コウミが次のボールを取り出し、ピカチュウをラプラスの背中に繰り出した。

 レッドのピカチュウと違い、尻尾の先端がハートのように丸くなっている。メスの個体だ。

 

「いくよピカチュウ! 一発で決めるわ!」

「ピカッ!」

 

 コウミはピカチュウを手に抱くと、勢いよく上空へ向かって投げた。

 電気技を使ってラプラスを巻き込まないためだ。

 

「ピカチュウ、"十万ボルト"!」

「ピィーカ……ヂュウウゥゥッ!!」

 

 空から降り注ぐ落雷のように迫るそれに対して、ヨワシは先んじて行動していた。

 尻尾を水面に叩きつけて水しぶきをあげ、返す刀で尻尾を振り上げる。

 更に水しぶきが上がり、その水を尻尾がさらに高く打に上げた。

 大量の水が空中に広がり、ピカチュウの電撃を妨げる。

 その際、大きな音がしてリーリエも「何事ですか!?」と目覚めるほどだった。

 

「うそっ!?」

 

 まさかの戦術に、コウミも驚きを隠しきれなかった。

 ジムリーダークラスのポケモンだったら、水の壁を突破してヨワシにダメージを与えることもできたであろう。

 しかし、コウミの進化して日の浅いピカチュウでは、実力も技術もまるで足りていない。

 ピカチュウは空から落ちてきて、再びラプラスの背中に着地。

 そして、コウミはヨワシに視線を移すと目を剥いた。

 口を大きく開いて、ラプラスごとピカチュウを攻撃する準備をしていたのだ。

 動作から察するに、恐らく攻撃はハイドロポンプ。

 

「だめぇっ!!」

 

 ヨワシが攻撃する直前、コウミはラプラスの前に飛び出した。

 この試練は自分の戦いであり、他人から借りたライドポケモンであるラプラスを巻き込む訳にはいかない。

 そう思ったコウミの体は、考える前に自然と動いていた。

 

「「コウミさん……っ!」」

 

 リーリエとスイレンが叫びながら青い顔をするも、今からでは止められない。

 そして、ヨワシの口からハイドロポンプが発射された。

 凄まじい勢いで発射される水がコウミの体に直撃する━━その直前、何か小さいものがハイドロポンプの水を四方に枝分かれさせるほどの勢いで飛び、その勢いを大きく削いだ。

 といっても、それだけで完全に掻き消した訳ではない。

 

「あぐぅっ……!」

 

 弱まったハイドロポンプはコウミの脇腹に直撃し、彼女は吹き飛ばされてラプラスにぶつかると、そのまま水の中へと落ちた。

 

「ピッ……!? ピカァッ……!」

 

 ピカチュウが心配そうに水面を覗き込むが、ラプラスが慌ててコウミの服を咥えて引き上げ、自分の背中に乗せた。

 

「うっ……げほっ、げほっ……!! あ、あれ……?」

 

 水を吐き出して咳き込むコウミが顔を上げると、ラプラスの心配そうな顔が目に映った。

 

「クゥ……」

「……そっか、ラプラスが引き上げてくれたんだね。ありがとう」

 

 優しくラプラスを撫でるコウミ。

 そんな彼女たちを見て、ホッと胸を撫で下ろすスイレンだが、レッドに視線を移して。

 

「……レッドさん、さっき何かしましたか?」

 

 スイレンの問い掛けに、レッドは肩を竦めて誤魔化した。

 非常事態ゆえに思わず手を出してしまったレッドだが、これでコウミの試練が台無しになっては堪らない。

 ちなみにレッドがやったのは、その辺に落ちていた小石を投げて飛ばしただけである。

 

「……そうですか」

 

 スイレンもそれ以上追求する事はなく、コウミの方に視線を戻した。

 彼女としても、試練挑戦者であるコウミが大怪我を負ったら責任問題になってしまうし、何より後味が悪い。

 仮にレッドが本当の事を自白しても、スイレンは目を瞑るつもりだった。

 

「クゥッ! クゥッ!」

 

 ふと、コウミの乗るラプラスが何か言いたそうにしている。

 

「ど、どうしたの、ラプラス?」

「クゥッ!」

「……ピカァ? ピッカ!」

 

 ラプラスは仕切りに首を上に向けており、その意味をピカチュウは理解したようだった。

 

「ピカカ! ピッカピカァ!」

 

 ピカチュウはコウミの膝に乗ると、上空を指差して騒いでいる。

 

「……もう一回投げろって言ってるの? でも、また同じように防がれるんじゃ……」

「ピカピッカ! ピカカ!」

「わ、わかった……信じるよ、ピカチュウ!」

 

 コウミはピカチュウを手に抱くと、もう一度上空へ投げた。

 そしてピカチュウは"十万ボルト"を放ち、その直前にヨワシは尻尾で水面を叩く。

 先ほどの焼き増しのような光景が繰り広げられるも、そこでラプラスが動いた。

 "れいとうビーム"を放ち、ヨワシが叩いた水面を凍らせてしまったのだ。

 

「なんとっ!」

 

 これにはスイレンも驚きの声をあげる。まさかラプラスが自ら協力するとは思わなかったのだ。

 それからヨワシが尻尾を振り上げるも、氷が邪魔して水がほとんど打ち上がらず、ピカチュウの"十万ボルト"がヨワシに直撃した。

 

「やった! 通った!」

 

 弱点である電気技を浴びて、たまらず飛び散るヨワシ達。

 そのまま"むれたすがた"が解除されて、たった一匹のヨワシだけが残った。

 しかし、ぬしとしての矜持か、ヨワシは滞空状態にあるピカチュウへと"たいあたり"。

 

「ビガァッ……!」

「あぁっ、ピカチュウ……!」

 

 吹き飛ばされて水に落下する直前、ラプラスが水面に"れいとうビーム"を吐いて凍らせ、ピカチュウは身をよじって氷の上に着地。

 ラプラスはそのまま"れいとうビーム"をヨワシの居る方まで放つと、氷の道ができあがった。

 ピカチュウのために、戦闘をする足場を提供したのである。

 その思いに応えるべく、ピカチュウは氷の道を走ってヨワシに"たいあたり"。

 吹き飛ばされるヨワシだが、なんとか踏みとどまって、お返しとばかりに"ハイドロポンプ"を吐き出した。

 直撃して転がるピカチュウだったが、"むれたすがた"の時に比べれば、その威力は格段に弱くなっている。

 

「負けないで、ピカチュウ! "スパーク"よ!」

「ピカッ!」

 

 コウミの声に気合充分と声を上げ、ピカチュウは電気を体に帯びた状態でヨワシに突っ込んだ。

 こうかばつぐんの攻撃に、ヨワシはたまらず吹き飛ばされて着水。

 気絶したらしく、水面に浮かんだまま動かなくなった。

 

「やった……! 勝った! 勝ったよ、ピカチュウ!」

「ピカピカァッ!」

 

 氷の足場からピカチュウがジャンプしてコウミの胸へと飛び込み、そんなピカチュウを彼女は優しく受け止める。

 

「ありがとうピカチュウ! よく頑張ってくれたね! それに、ラプラスも! 協力してくれてありがとう!」

「クゥ〜!」

 

 コウミがピカチュウやラプラスと共に喜びを分かち合っている。

 そんな光景を見ながら、スイレンは僅かに顔を伏せた。

 試練とはいえ、やはり自分が鍛えたヨワシたちが負けたのは悔しいのだろう。

 スイレンの頭を、レッドは優しく撫でた。

 

「レッドさん……大丈夫ですよ。わたしもキャプテンですから。……コウミさん、お見事です! わたしのもとへ来てください!」

 

 コウミはスイレンの言葉に従い、砂浜まで戻る。

 リーリエも戻りたそうにしていたが、ラプラスが水の中に頭を突っ込んだまま動いてくれないので、戻るに戻れなかった。

 

「わたし……自分の気持ちに戸惑っております。丹念に鍛え上げたヨワシたちを倒されて、心から悔しいのですが……コウミさんの試練達成を祝わずにはいられないのです」

「スイレンさん……ありがとうございます!」

「それではコウミさん、コレを受け取ってください」

 

 そう言ってスイレンが取り出したのは、水のゼットクリスタル。

 コウミがそれを受け取ると、スイレンはゼンリョクポーズを披露した。

 

「よろしいですか!? 水のゼンリョクポーズはこうして、こうするのでございます!」

「えっと……こうして、こうですね!」

「素晴らしいです! コウミさんのゼンリョクを感じられました!」

「覚えました! スイレンさん、釣りもバトルも楽しかったですよ。……ビショビショにされたのは忘れてないですけど」

 

 まだ根に持っていたらしい。

 

「あらあら、うふふ。ちなみに釣り竿はそのまま差し上げますので、良かったら使ってあげてください」

「えっ、いいんですか?」

「はい、試練突破のお祝いです。ちなみにコウミさん、わたし赤いギャラドスを釣った事もあるんですよ」

「そうなんですか!? ……って、もう騙されませんよ! また冗談なんでしょう?」

「さーて、どうでしょう」

 

 意味深な笑顔を見せるスイレン。

 真相は果たしてどちらなのか。スイレンはそれ以上語ろうとはしなかった。

 

「さて、それではポケモンセンターまで戻りましょうか。コウミさんも、そのままでは風邪を━━」

 

 スイレンが促そうとした、その時。

 一際大きな滝がある場所で、盛大な水しぶきが上がった。

 何事かと視線を移すも、水しぶきだけで何も確認はできない。

 

「……なんでしょう? 岩とかが落ちたとか?」

「いえ、せせらぎの丘の滝は全て勢いが弱いです。強い雨が降っているならまだしも、こんな晴れの日に、あんなに大きな水しぶきが上がるほどの岩や大木が流れてくるとは思えません」

「じゃあ、一体なんなんでしょう……」

「きゃっ……!」

 

 コウミとスイレンが話していると、リーリエの悲鳴が聞こえてきた。

 どうやら放置したままだった竿に、ポケモンが掛かったらしい。

 

「あぁっ……!」

 

 落ちないよう、釣り竿と共に体をライドギアに固定したのがまずかった。

 リーリエの体が大きく引っ張られて苦しんでいる。かなりの大物のようだ。

 レッドはピカチュウと共に、急いでリーリエの乗るラプラスへ飛び乗った。

 未だにいじけていたラプラスがようやく顔を上げ、嬉しそうな声でハシャいでいるが構っている暇はない。

 リーリエの持つ竿を掴むと、レッドはリールを巻きながら力任せに引っ張る。

 ピカチュウはレッドの頭の上で応援していた。こんな時に何をしているのか。

 そして、それは水中から大きく飛び上がって姿を現した。

 

「ええっ!?」

「なんと!」

 

 コウミとスイレンが驚きの声をあげる。

 それの正体は、赤いギャラドスであった。

 まさかスイレンが冗談めかして言った直後に釣れるとは、誰も思わないだろう。

 更に宙を舞ったままのギャラドスを見て、全員が目を剥いて驚く。

 ギャラドスの口元には、光が集まっていた。

 それは全てを滅ぼさんとする破壊エネルギー━━"はかいこうせん"の予兆であった。

 

 ━━ラプラス、"はかいこうせん"!!

 

 レッドもラプラスに指示を出した。完全に後出しだったにも関わらず、その攻撃は完全に同時。

 しかし、技の威力には大きな差があった。

 ギャラドスの"はかいこうせん"に対して、ラプラスのそれは五倍近く大きい。

 比較すると、ギャラドスの方はあまりにも貧相に見えてしまう。

 ラプラスの"はかいこうせん"はギャラドスのものを掻き消して天を貫き、空に浮かぶ雲に大穴を開けた。

 

「ちょっ……」

 

 シャレにならない威力を前に、スイレンが顔を青くする。

 あんなものが直撃したら、山一つぐらい跡形もなく粉砕するだろう。

 ちなみにギャラドスはというと、直撃を避けて更に高度を上げていた。

 レッドが逸らして撃つように指示したのもあるが、ラプラスの破壊エネルギーが強大すぎて空気の溝ができ、それに押されてギャラドスの体はカチ上げられたのだ。

 

 しかし、レッドはそれだけで終わらせなかった。

 上昇の勢いが止まり、重力のまま落ちようとしているギャラドスに向けて真っ直ぐに腕を伸ばすと、ピカチュウがレッドの肩に乗る。

 そのままピカチュウはレッドの腕を滑走路のように走り抜けると、ギャラドスに向かって真っ直ぐに飛んだ。

 まるで一筋の雷のような勢いで飛んだピカチュウの頭突きが、ギャラドスの腹に深々と突き刺さった。

 体がくの字に曲がるどころか半分に折りたたまれたギャラドスは、訳もわからぬままに意識を刈り取られて吹き飛んでゆく。

 さらにピカチュウはトドメとばかりに"十万ボルト"を放つ。

 "かみなり"と見紛うばかりの雷が走り━━当たる直前、ギャラドスの体は地上から伸びた赤(・)い(・)光(・)に(・)当(・)た(・)っ(・)て(・)姿(・)を(・)消(・)し(・)、"十万ボルト"は空の彼方へと消えていった。

 

「今のって、まさか……」

 

 スイレンがポツリと漏らす。

 彼女の予想する通り、今の赤い光はポケモンがモンスターボールへと戻ってゆくものだ。

 つまり、釣り上げた赤いギャラドスは野生ではなく、誰かのポケモンだったということ。

 レッドは赤い光の発信場所である森の方を睨みつけていたが、追跡に行くことはしなかった。

 ギャラドスの攻撃がわざと行われたものであった場合、狙いはレッドかリーリエのどちらかになる。

 レッドならともかく、リーリエが狙いだった場合はかなり厄介だ。

 もしかしたら、レッドをおびき寄せてリーリエから離し、その隙に彼女を狙う可能性だって考えられる。

 だからこそ、犯人を追いに行くような真似はしない。

 陰謀の気配を感じ取ったレッドは、例え何が襲って来ようとも、リーリエたちを守り抜くと固く誓うのだった。




 うふふ、って何度も笑うスイレンを見ながら、旧作の魔梨沙みてーだな、とか思ってました。
 コウミちゃん、スイレンの試練を無事突破……しかし、何やらきな臭い陰謀が渦巻き始めた様子。
 胸踊るヒーローの活躍には、強力な敵役が欠かせません。
 ……と、どこぞの魔賓館館長のような事を言ってみる。善悪逆だけど。
 今「まひんかん」って入れて普通に漢字出てきてビビった。iPhoneの漢字変換どうなってるんや……。
 しかし、どのような敵役なのか、この作者の目を持ってしても読めなかった……。
 敵も決めてないままストーリーの舵きりをして大丈夫なのか作者。
 本当に何も考えてないのか作者。
 レッドの戦いに乞うご期待。



 ……ま、嘘なんですけどね。


Q.コウミの手持ちについて
A.現在三匹
 ニャヒート、ウォーグル、ピカチュウです。
 ウォーグルはメレメレ島に居たワシボンを進化させた個体だと思われます。出てくるの3番道路だっけ?
 最近サンムーン触ってないからもう忘れた……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。