その転生レッドは如何にしてアローラに伝説を作ったか 作:勇(気無い)者
アローラには、カントー地方から家族と共に引っ越してきた女の子が二人いる。
一人はミヅキという少女。
天辺が花のようになっている赤いニット帽を被り、花柄のカットソーと緑のホットパンツ、赤と黒のスニーカーを履いている。
髪型は内向きのボブカットで、色は黒。
もう一人はコウミという少女。
赤い花飾りの付いた麦わら帽子を被り、橙色を基調とした花柄のホルダーネックと白いショートパンツ、白と緑のサンダルを履いている。
髪型は三つ編みのおさげ髪で、色は黒。
どちらも十一歳である。
二人は同じカントー地方出身ではあるものの、アローラに来る前から知り合いだった訳ではない。それぞれ別の町から引っ越してきたのだ。
しかし、全く同じ日の、しかもお隣さんとして引っ越してきたのだから、何だか運命を感じるような話である。
二人はすぐに意気投合して、友達同士になった。
話している内に、ミヅキはグリーンに憧れて、コウミはレッドに憧れてポケモントレーナーになりたいと思ったのだとか。
そんな彼女たちに衝撃的な出会いが待ち受けていることなど、本人たちが知る由もなかった。
「アローラ! 授業を始めるから、みんな席に着いてくれ」
教室のドアが開かれ、半裸の上から白衣に袖を通した男が入ってきた。
半裸と言っても下はちゃんと履いている。筋肉質で褐色肌、色の薄いサングラスに白を基調としたキャップを被り、襟足で髪をお団子に纏めるという特徴的な見た目である。
彼はククイ博士。主にポケモンの技について研究をしている人物だ。
基本的に研究者であるが、こうしてポケモンスクールの教壇に立つことも多い。
「今日はリージョンフォームについて勉強していこうと思う。それで、リージョンフォームについて詳しい方をお呼びしているんだ」
「……リージョンフォームに詳しい人って、誰かな?」
ククイ博士の話を聞いていたミヅキが、隣に座るコウミに小声で話しかけた。
「……多分、ナリヤ博士だと思う。カントーのオーキド博士の従兄弟で、リージョンフォームについて研究してるって聞いた事があるから」
「へぇ〜、そうなんだ。コウミちゃん、詳しいね」
「レッドさんのこと調べてて、オーキド博士の事もついでに調べた時に知ったの」
一応、カントーのオーキド博士はポケモン研究における権威なのだが、そんな人を「ついでに調べた」とは何気に失礼である。
二人が話している間にも、ククイ博士は話を進めていた。
「━━という訳で、早速お入り下さい!」
ククイ博士がそう言うと、コウミが言った通りの人物、つまりナリヤ博士が入ってきた。
だが、更に二人の少年も一緒である。
その少年たちに、生徒たちは見覚えがあった。
一人は赤を基調とした帽子に、白を基調とした袖周りが赤い半袖のシャツ。青いジーンズに赤と白のスニーカーという
黒髪が帽子からはみ出るショートカットで、肩にピカチュウを乗せている。
もう一人は、黒を基調とした半袖のシャツに膝丈の緑のズボン。白と緑のスニーカーを履いている。
明るい茶色の髪を立たせてツンツンヘアーにしており、頭にサングラスを乗せていた。
ナリヤ博士と共に居る事でお察しの方も多いだろうが、前者がレッド、そしてグリーンである。
「やぁやぁ、皆さん初めまして。リージョンフォームについて研究をしている、ナリヤ・オーキドです。こちらの二人は、私の研究を手伝ってもらうためにカントー地方から来て頂いた━━」
「オレはグリーン、カントーのトキワジムでジムリーダーをしている。コイツはレッド。四つのリーグを制覇した、無冠のチャンピオン……って言えば、知ってる人も居るんじゃないかな」
リーグを制覇しているのに無冠のチャンピオンと聞いて、違和感を覚える人もいるだろう。
しかし、レッドの場合はチャンピオンになった後、殿堂入りしてすぐにチャンピオンの座を蹴って姿を消していた。
本来、リーグチャンピオンになった者はリーグに残って挑戦者と戦うのだが、レッドは一度も防衛戦をやっていないのだ。
それを四回も繰り返し、ポケモンリーグに縛られない飄々とした姿から、いつしか無冠のチャンピオンなどと呼ばれるようになった。
「……うそ」
ポツリと漏らしたのは誰だったのか。唐突な有名人の登場に、誰もが困惑していた。
その数秒後、大歓声があがる。
ある者は声にならない声をあげ、ある者は大声で雄叫びを発し、ある者は黄色い声をあげ、ある者は感動のあまり涙を流し、ある者は唐突に気絶した。
欣喜雀躍、狂喜乱舞の教室内であるが、一人だけ周りをキョロキョロと見回している少女が居た。
プリンセスラインの入った純白のノースリーブワンピースに身を包んでおり、長く淡い金色の髪が特徴的。
エメラルドグリーンの綺麗な瞳をしており、いかにもお嬢様という言葉が似合う美しい少女である。
彼女の名はリーリエ。ポケモンが傷つくのを嫌がる性格で、ポケモン勝負も直視できない程である。
かと言ってポケモンが嫌いな訳ではなく、むしろ大好きではあるのでポケモンスクールにも通っている。
しかし、性格故にポケモンバトルは詳しくないので、レッドやグリーンの事を彼女は全く知らなかった。
「うーん、これでは授業どころではありませんな」
さしものナリヤ博士も、生徒たちの熱狂ぶりに押されていた。
ククイ博士が申し訳なさそうに謝罪する。
「すみません、せっかくお呼びしたというのに……」
「いえいえ、世界的に有名なトレーナーが急に姿を現したのですから、仕方のない事です。……せっかくですから、レッド君とグリーン君に授業を手伝ってもらっては如何でしょう?」
ナリヤ博士の言葉に、レッドとグリーンは顔を見合わせた。
★
場所は変わってグラウンド。
ククイ博士とナリヤ博士、レッドとグリーンに生徒たちの全員が集まっていた。
いつの間に噂が広まったのか、校舎の窓からグラウンドの様子を伺っている生徒や教師の姿が見える。授業を中断して様子を窺っているのだろうか。
そして、生徒たちが自分のポケモンを出して、レッドやグリーンにアドバイスをもらっていた。
「よし、良い調子だぞ」
「はい! ありがとうございます、グリーンさん!」
「グリーンさん、次は僕もお願いします!」
「ああ、今行くから待ってろ」
ジムリーダーをやっているだけあって、グリーンは人に教えるのが非常に上手かった。
レッドの方はというと、彼もグリーンほどではないが、しっかりと生徒たちを教えていた。
レッドは無口キャラ、というポケモンの設定を彼も一応は守っているが、生活していくうえでゲームのような「…… …… …… !」という対応で生きていける訳がないので、普通に会話はしている。
レッドは転生前の記憶をもとに、ポケモンごとの使い勝手の良い技を教えたり、特性や変化技を交えた戦略を教えていた。
この世界ではポケモンが四つ以上の技を覚えられるので、より戦略は広がっている。
そうこうしている内にミヅキの番になり、彼女は憧れのグリーンに教えてもらうことに。
「よ、よよ、よろしくお願い、しますっ……!」
「はは、そんなに緊張しなくていい。何もオレと戦う訳じゃあないんだからな。ほら、リラックスして」
「は、はいぃ……!」
グリーンの甘美な囁き声に、ミヅキはノックアウト寸前である。
が、いざレッスンが始まれば、彼女はグリーンの話をしっかりと聞いていた。
ミヅキの飲み込みの早さはグリーンも認める所であり、ひとしきり教えた後に彼女を褒めた程だ。
「君はなかなかセンスがある。きっと、将来は優秀なトレーナーになれると思うぜ」
「ほ、本当ですか!? う、嬉しいです……!」
憧れの人物からの褒め言葉に、ミヅキは感極まって泣きそうになってしまう。
「私、カントー地方からアローラに引っ越してきたんですけど、グリーンさんにずっと憧れてて……!」
「お、そうなのか? はは、君のような有望なトレーナーに言われると素直に嬉しいな」
「そんな、有望だなんて……! あ、同じカントーから引っ越してきたコウミちゃんとも、グリーンさんやレッドさんの事で話したりとかしてて……!」
「へぇ、その子もトレーナーなのかい?」
「はい! あ、ちょうどレッドさんが教えてるあの子です」
グリーンがレッドの方を見ると、確かに麦わら帽子を被った女の子に教えているところであった。
パッと見た印象だが、ミヅキと同じぐらい素養がありそうだ、とグリーンは思った。
「……そうか。もしかしたら、君とあの子はオレとレッドみたいな関係になるかもな」
「グリーンさんとレッドさんみたいな関係、ですか?」
「ライバル同士ってこと」
ミヅキは目をパチクリさせた。
ポケモンをもらったばかりで、未だポケモンバトルもしたことがない自分と、一番仲が良いと自信を持って言えるコウミがライバルになる。
尊敬するグリーンの言葉とはいえ、そうなるビジョンはハッキリと浮かばなかった。
「……そうでしょうか」
「ああ、きっとな。まぁ、バトルしてみれば分かるさ。そうだな、手始めに俺たちみたいにポケモンジムに挑戦━━って、アローラにはポケモンリーグは無いんだったな」
「あ、はい。あっ、でも私もコウミちゃんも、島めぐりには挑戦しようと思ってまして……!」
「島めぐり……?」
島めぐりとは、アローラ地方に古くから伝わる伝統儀式である。
子供が一人前になるためのもので、十一歳になれば誰でも挑戦が可能。
アローラの四つの島をそれぞれめぐり、キャプテンから課せられる試練を達成する、というものだ。
試練の内容はそれぞれ違い、バトルだけでなく知恵を試されたりなど、その時によって様々である。
「なるほどな、ポケモンジムに挑戦して回るのとはちょっと違うが、割と近いものがあるな……」
「……でも、私にちゃんと出来るのか不安です」
「ふっ、君はオレが認めた将来有望なトレーナーだからな。きっと大丈夫だと思うぜ?」
「グリーンさん……!」
憧れの人に言われると、何だかその気になってしまうミヅキである。
「レッドさん!!!」
ふと、少年の力強い声が響いた。
首飾りをしているだけで、まさかの上に何も着ていない少年である。
ナリヤ博士よりもさらに色黒で、赤い膝丈の短パンに、同じく赤いサンダル。
赤と黒の髪色で、炎の様に逆立った髪型が印象的だ。
彼の名はカキ。アーカラ島に暮らす、炎タイプのポケモン使いであり、そしてキャプテンでもある。
ポケモンスクールには、アーカラ島からわざわざ通っているそうな。
「レッドさん! オレと……! オレとポケモンバトルをして下さい!!!」
ビシィッと直角九十度の深々としたお辞儀と共に、彼は叫んだ。
サーナイトの出番があると言ったな、アレは嘘だ。
……ごめんなさい、でも次回は今書いてるので本当に出ます。
バトル描写はじっくり書きたくて……。
まぁ、戦うのはサーナイトじゃないから地味な役回りさせるんですが。
という訳で次回はいよいよバトル回。
しかして、その相手は……。
めっちゃどうでもいいですが、教室が騒がしくなった時に「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」が頭を
ミヅキとコウミの二人が存在してるの違和感ある方もいらっしゃると思いますが、彼女たちは非常に重要な役割があるので、どうしても二人必要でして……。
レッドとグリーンも二人ですからね。
リーリエも上手く絡ませられると良いんですが……。
なんかもう、アニメと原作とがぐちゃぐちゃになってたりしますが、お付き合いいただけると幸いです……。
そういえばグリーンのエースポケモンについてずっと考えてたけど、私が考えるべきなのはレッドのエースであるピカチュウに対するポケモンだった。私はアホだった。
この点でピジョットとカメックスはボツ。相性が悪すぎる。
どないしよ……。
以下Q&A。
Q.ミヅキとコウミはどの町から来たの?
A.出身地、という奴らしいな……分からない……。
どう調べても「カントー地方から引っ越してきた」という事しか出てこないんですよね……。
私も知りたい。
Q.無冠の帝王じゃないの?
A.最初はそれで行こうと思った。
けど、ポケモンらしく無冠のチャンピオンにしようかな、と……。
Q.会話をしていると言いながらレッドにセリフが無い。
A.やっぱりレッドさんには喋ってほしくない。
なので、レッドにセリフは極力つけないようにしてます。
レッドがベラベラ喋りだしたら違和感あるし。
と言っても、他二次創作で喋ってるの見ても違和感ないので、完全に私個人の問題ですね……。
Q.ミヅキとコウミのポケモンは?
A.アシマリとニャビーで考えてます。
陸上で活動しづらいポケモンは書きにくそうですが、技とかで工夫してなんとか活躍させたい。