悪魔を触りたくて仕方ない!!   作:琥珀色の大西洋サバ

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一話のタイトルを「わしゃわしゃ」から「鹿の悪魔」に変えました。
全話オトマトペのタイトルで表現したかったのですが、言語センスが無さすぎてダメでした。すんません。


狐の悪魔。

 

人間に生まれたくなかった。

 

人間は不自由だ。社会という重圧に押されながら生活しなければならないし、異端者は徹底的に潰される。俺は異端者だった。

なので仮面をつけて生活していた。来る日も来る日も自分を偽って生きてきた。終わりの見えない毎日。生きたくはないが、死にたくもなかった。いつ自分は自由に慣れるだろうか、そんな事をよく考えていた。

 

だからなのだろう。

俺は悪魔という存在に憧れた。

 

正直動物でも良かった。どちらも自由である事には変わりないからだ。

けど、分かりやすく特別な力というのは憧れるものである。

子供の頃、公安のデビルハンターが狐の悪魔を呼び出す瞬間を見た。

あれは一目惚れだったのだろうか。自分でもよく分からない。

ただ、一つだけ覚えているのは、

「悪魔の事をもっと知りたい」

それを見た当時、そう思ったことだけだ。

 

 

 

「そーいえば鱚葉さん、どうしてここに?」

 

オフィスでの事務仕事をこなしている中、後輩がそう話しかけてきた。

うちの事務所は大手ではなく、寧ろ小さい方だ。今年の新入社員はこの後輩だった一人だったしな。勿論経営は火の車である。

そんな所に入る俺の事が気になったのだろう。後輩くんは健気である。

ちなみにこの後輩、元々は公安を目指していたらしい。けど銃の悪魔到来直後、食料不足で盗みを犯して捕まってしまったんだと。その経歴のせいでどうやら落とされたようだ。やはり銃の悪魔の影響力は凄まじいものだ。

 

「あー、知りたい?」

 

さて、そろそろ後輩くんにも私の過去を暴露しなければならない。大体この話を聞いた人間は顔をしかめるが、これは俺の生き様のお話でもある。後輩くんはどんな反応をするのか……人間ならぬ、後輩観察モニタリング……いざ、検証!!

 

「実はね、俺元々公安だったのよ」

「え?マジですか!!?すごっ!!」

 

後輩は口に手を当て、そう叫んだ。

ここまでは模範的な回答だな。最初は同僚もそんな反応だったし。

やはり皆、公安を目指しているらしい。

やはりエリートの認識に入るのだろうかアレは。

 

まぁそれは置いといて、初出は好反応。

さて、ここからどう転ぶ……?

 

『僕は顔をしかめるに一票』

 

脳にそう声が響く。やっぱり首を突っ込んで来た。

黙れ遺伝子。お前には関係ない話だろ?

こちとら今後の人間関係に関わる話なんだ。しゃしゃり出てくんなよ。

 

『だってその話、馬鹿らしいじゃん……』

 

CT検査*1、行ってもいいんだぞ?

 

『スミマセンデシタ』

 

脳内の声が消えていく。

よし、分からず屋を黙らした事だし早速話を続けよう。

またコイツが口出してきたら邪魔で仕方ないからな。

 

「いやー、公安時代はすごかったよ。トレーニング場の設備もちゃんとしてたし、給料も特別勤務手当が含まれていて毎日ステーキ買えるぐらいの量はあったね」

 

「うわ〜!!羨ましいー!!!」

 

悶絶する後輩を見て、俺は顔を俯かせる。

こんな幸せな時代にも、いずれ終わりが来るものだ。

 

「でもね、辞めさせられちゃったんだ」

「なんですっか?」

 

後輩は真剣な表情でそう質問する。

答えてあげるが世の情け、早速後輩くんの疑問を解いてあげようじゃないか。

俺は腕を組み、人差し指を立てた。

 

「狐の悪魔っているじゃん。ほら、公安のデビルハンターがよく契約してる奴」

「イケメンしか契約できない奴っすね。でも先輩結構顔良い方ですよ?」

「そー言われると先輩は何か奢りたくなっちゃうじゃんか。ほれ、コーヒー」

「ありがとうございます!!んで、ソイツと先輩の退職になんの関係が……?」

 

さぁ、頼む!!共感してくれよ……!!

 

「初対面で色んな所触りまくったら嫌われた上、褒めちぎったらセクハラ扱いされてさ。狐の悪魔が公安のデビルハンター全員の契約を打ち切るとか言い始めて……なんやかんやでクビになっちゃった☆

 

「いや何やってるんですか」

 

即答であった。

この子もダメかぁ……。

 

「え、でもいやすっごく良かったんだよ?デカいからその分もふもふしてるし。控えめに言ってお持ち帰りしたい気分」

 

我ながら碌でもない言い訳を続ける。

いやマジで不可抗力なんですよ。許してください。

俺は悪くないんだ。悪いのはもふもふな狐の悪魔……そう、そこにあるのが悪いんだ!

だから……そのぉ……ね?

 

『やっぱお前最高に狂ってるよ。反省する気が微塵もないもん』

「先輩ィ……」

 

容赦ない追撃が俺に向かう。

あー!!もうこうなりゃヤケクソだよ!!

俺は思うがままに口を動かした。

 

「後悔はしてるが反省はしてない!!クビになるならもっと触っとけば良かったと思う!!」

 

……ふぅ、スッキリしたぜ。

俺は満面の笑みを浮かべる。

やっぱ思ってた事をこのまま口に出すのって気持ちがいいんだな。嫌な事は溜め込まないのが一番だ。

 

『コイツ開き直りやがった……』

 

「転職しようかな………」

 

遺伝子はドン引いた声で、後輩は額に手を乗せてそう呟く。

はぁ、とことん時代遅れの連中だ。いつになったらコイツらは俺を理解出来るようになるのだろうな。

 

「ちなみにうちの社長、同性愛者だよ」

 

「最近は後輩くん狙われてるから背後には気をつけてね」

「転職しようかな!!!」

『悪魔から見てもここに居るのはお勧めしないぞ……』

 

急に襲われるよりかはマシだろう?

意地返しとしてそう談笑しながら書類をまとめて後輩に渡した。

 

「はい、修正部分とか印つけておいたから直しておいてね」

「あ、ありがとうございます……」

「大丈夫、後輩くんならここでも上手くやっていけるって!!」

「やっていきたくないんですが……」

 

後輩はそう返し、俺に背中を向ける。

 

さて、この子はいつまで生きれるのやら。

せめて俺を理解出来る様な人物になるまでは生き残って欲しいな。

 

トボトボと歩いていく後輩を見て俺は心の中でそう呟いた。

 

 

「コン」

 

狐の頭が瓶に人間の手足が生えた奇怪な化け物を口に含む。

今まさに公安のデビルハンターが狐の悪魔を使用した瞬間だった。

 

『ウッ……マーマイト*2の悪魔……この味キライ……』

 

狐の目玉がぐるぐると回り始める。

今にも吐き出したいのだろう。

 

「却下、飲み込め」

 

しかし男はそれを却下する。

恐らく今コイツが口に入れているコイツは別に吐き出されても対処できるような雑魚だが、悪魔は強大な力を持つ。ここは契約した悪魔に仕留めてもらった方が確実だ。

 

『で、でも………』

 

狐の悪魔が少しずつ塵と化していく。

ゴーサインが出たら一瞬で退散する準備でもしているのだろうか。

 

「あいつを呼び戻すぞ」

 

男はそう告げる。

実はあいつ、というのは誰かは知らないのだが狐の悪魔の使用者には狐が我儘を言った時の対処法としてそう脅すと効果的だと上から伝えられている。トラウマにでもなっているのだろう。自身には関係ない話だが狐の悪魔というビッグネームをここまで萎縮できる人物がいるとするなら、一度は拝んでみたいものだ。

 

『ウ、ウゥ………』

 

狐は苦しそうな声を響かせながら悪魔を飲み込み始める。

なんか少し可哀想な気がしてきたが、悪魔は悪魔だ。容赦は要らない。

ごくん、と音が鳴った。

 

「よし、消えていいぞ」

 

男はそう告げると狐は塵となって消えていく。

その一瞬、狐の頬に涙が伝った様な気がした。

*1
"放射線"で身近な奴。

*2
イギリスの癖強調味料。不味い事で有名。




狐の悪魔ってなんやかんやで便利ですよね。公安の中でも契約しやすい部類なのに攻撃は高威力ですし。ただ、獲物の味が美味しくなかったら逃げますが。
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