金の林檎を喰みながら   作:セレニティ

2 / 3
………沈む。どことも分からない空間を、ただひたすらに沈んでいく。

最後の最後にあの林檎の幻想体が襲ってきたのは覚えている。だが、そこからの記憶が無い。ここから察するに…

「…私、死んだ?」

まさか、最後があの幻想体に飲み込まれて死ぬ、なんて。あまりにも笑えないエンディングだ。不注意にも程がある。ホプキンスさんに笑われて然るべき結末だ。

…ああ。最後の最後に見えたあの顔。驚きと焦りが含まれた顔で、こちらに手を伸ばそうとした、あの人。何かと私を気にかけてくれた、片腕が虫の、あの--

「…最後に一言くらい、言えたらなあ。」

そう呟いて、意識は落ちる。そしてこのまま、永遠と落ちていくのだろう…


第1話 前とは違うが同じ日常

「あっ、ユーリ!おはよう!」

「あっ、おはようございます、アヤさん。」

 

…さて、何の情報から整理したものか。何となくここまで来たけど、少し落ち着いて考えたら意味不明な状況でしかないし。

 

まず、私の名前はユーリ。リンバスカンパニーの皆さんとL社支部跡に入って、最終的に幻想体に飲み込まれて死んだ…はずだった。

 

だが、目を覚ましてみれば、都市とは似ても似つかないどこかの町にいた。どこかの翼の巣でもないし、外郭でも無さそう。丸一日考えて出した結論が、結局「今は考えても無駄」だけだったのは少し悲しくなるけど。

 

そして頭を切り替えて、自分の置かれている状況の把握に努めた。年齢、所属している学校、住んでいる家、家庭状況、その他もろもろ。そしてここでも思い至ったのは「今は考えても無駄」ってことだけだった。

 

まあ、分かることは1つだけ。ここが都市とは何も関係無い別世界、ということだ。それでとりあえず理解を放棄してこの世界に馴染むのに時間を費やした。そして今は朝の7時半。絶賛登校中、というわけだ。

 

今、私の隣で一緒に歩いているのはアヤさん。都市でのアヤさんとは同一人物レベルで似ていたので、初めて見た時は少し驚いてしまった。だが少し話して分かったが、どうやらこのアヤさんは私と違って都市の記憶を持たないらしい。なのでとりあえず友達になった。別人なのは分かってるけど、所々あの人と重なるのが辛い。

 

ちなみにアヤさんはウチの隣に住んでいる。だから登下校はアヤさんと一緒になることが多い。白状すると、とても嬉しいです。

 

「おっ、また2人で登校してきたのか。仲が良くて何よりだよ」

 

そして今、私たちにイヤミを飛ばしてきたのはホプキンスさん。もちろん都市のホプキンスさんとは別人だ。正直な話、アヤさんと違ってホプキンスさんには何の感慨も湧かない。エンケファリンをこっそり回収してるのはともかく、リンバスカンパニーの皆さんを嵌めて殺そうとしたのだから仕方ない。

 

「そういう貴方こそ余裕そうですね。そろそろ大会があるのでしょう?練習はしないのですか?」

 

「ハッ、何を今更。お前の隣にいるソイツはウチの部員だろう。部長が部員を迎えて何が悪い」

 

そう。どんな因果か、ホプキンスさんはアヤさんが所属している部活の部長なのだ。

ちなみに弓道部である。アヤさんは主将を務めているので、実力勝負はアヤさんに軍配が上がるだろう。神輿は軽い方が良い、というやつなのか、それでも尚ホプキンスさんが部長をやっている。

 

と、そんな話をしていたらチャイムが鳴ってしまった。この学校は運動部以外の学生は0校時があるとかいう謎システムがあるので、急がないと遅れてしまう。

 

「あ、もうこんな時間。それじゃあアヤさん、また放課後に。」

 

「あ、分かった〜。じゃあね〜」

 

「な、おい俺には何も言わな-----」

 

ホプキンスさんが何か言ってた気がするが、気にせず全力疾走して校舎に向かう。また他愛の無い話だろう。

 

-------------------ー----

 

…さて、いつも通り1日の授業が終わった。後は帰るだけだ。

 

「ユーリ、いる〜?」

 

「はいはい、いますよ。今日もこの時間帯に帰るんですか?弓道の大会があるでしょうに」

 

「貴方と帰るこの時間の方が貴重だから良いの〜。それに、今回の大会は地方大会だから。それなら余裕をもって勝てるよ」

 

「…流石ですねぇ、貴方は。」

 

実はアヤさん、弓がとても上手い。ホプキンスさんだって上手いんだけど、アヤさんはそれ以上。そこだけはホプキンスさんに同情できるかもしれない。できてもする気は無いけどね。

 

「それじゃ、帰ろっか、ユーリちゃん」

 

「…はい、帰りましょうか。」

 

だがまあ、何にしても。アヤさんと過ごす学校生活は、とても楽しい。都市にいた頃は考えることすら無かった、幸せな瞬間だ。

 

都市の頃の私が不幸せだとは思わない。リンバスカンパニーの皆さんとも会えたし、ここのアヤさんとは違う向こうのアヤさんもいいけど…だとしても、向こうにいたままでは味わえなかった幸せを、噛み締めている。

 

ああ、幸せだ。

 

 




・アヤ
都市のアヤとは違う、いわゆる同一存在の別人。弓道部の主将をしていて、その強さは学校中で噂されている。一説には学校の裏番長だとか。

・ホプキンス
都市の搾りカス。ここでは弓道部の部長兼副主将を務めている。
アヤが目の上のたんこぶなので、一方的にライバル視している。
ん?それなんてマキリだって?知りませんなぁ、そんなマキリの搾りカスみたいなワカメのことは。

・ユーリ
この世界に来てからはサブカルチャーにのめり込んでいる。
ちなみに本人は元剣道部。



本編とはいうけど、実際は日常編です。本格的な話は第2話から。
まあ学パロみたいに見ていただければ

追記
まっすァきさん、Calくさん、感想及び指摘ありがとうございます

ユーリちゃんが最初に召喚するサーヴァントのクラス

  • セイバー
  • ランサー
  • アーチャー
  • ライダー
  • アサシン
  • キャスター
  • バーサーカー
  • ルーラー
  • アヴェンジャー
  • ムーンキャンサー
  • アルターエゴ
  • フォーリナー
  • プリテンダー
  • ビースト
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。