ロマンシングサガ3-2 REVIVE OF THE SIX 作:日加利有亮
「ポドールイには何の楽しみもありません。ですので、私は世界中の至る所に情報を得るための草を放っているのです」
「草?スパイの事ですか?」
「そうです」
「ですが、それはピドナ軍の人達にしか話していないはず。まさか、ピドナ軍の中にスパイが?」
「おやおや。私が誰だか分かっていないようですね。私はヴァンパイアなのですよ。私には、モンスターですらも従わせる能力があります。しかし、そのモンスターは再び現れ始めたとは言え、まだその数は少ない。そこで私は、あらゆる動物を支配下に収めたのです」
「なるほど。虫や鳥なら、ピドナ城に入って来ても気づかれませんからね。それにしても、伯爵が動物と会話ができるとは思いませんでした」
「別に会話はしません。ただ、情報を抜き取るだけの話です」
「それは少し怖いですね。ですが、それだけでは私が来た理由が分かるはずもありません。何故なら、『自分が何者かを尋ねるため』と言うのは、他の誰にも言っていないのですから」
これで少しは私に流れが傾くでしょうか?
「そうですね。それは私がそう思っただけの話です」
「何故、そう思ったのですか?」
「簡単な事です。私自身が、あなたが何者なのか分からないからです」
「えっ?」
「私は、遥か昔から生きております。魔王が生きていた時代からです。魔王とも多少面識があります。そして私は、それ以降に生まれた存在に関しては聖王を含め、全て熟知しています。それなのに、あなたが何者なのか分からない。私が分からないのに、当の本人に分かるのでしょうか?そう思ったので、お聞きしたまでです」
「はあ」
普通、自分の事は自分が一番良く分かりませんか?
と思いましたが、人は自分の事を完全には理解していないと言います。
もしかしたら、これは真理なのかも知れませんね。
「あと私が分からないのは、四魔貴族についてですね」
「何故、四魔貴族の事が分からないのですか?」
「私が分からないのは、『私が生まれる前の四魔貴族』です。魔王の部下になった後の事は知っています。しかし、それ以前の彼らの事を何も知りません。彼らは元々ああ言う存在だったのか?それとも以前は別の存在だったのか?興味が尽きません」
「なるほど」
「そしてもう一つ、彼らについて興味深い事があります。それは、『彼らのリーダーは誰か?』と言う事です」
「リーダーですか?」
「ええ、そうです。普通ならいるはずですよね?7年前に活躍した七英雄にもいました。現ロアーヌ国王がリーダーとなり、見事に他の6人をまとめたのです。
四魔貴族にはリーダーがいなかった・・?
《俺はリーダーに向いていない》
《姉さんがやってくれ》
「えっ?」
「どうかしましたか?」
「あ、いえ。何でもありません。では、これ以上ここにいてもご迷惑をおかけするだけですね。それでは失礼します」
「お待ちなさい。まだ、協力の事を話していませんよ」
「あ、そうでした。失礼しました。と言っても、大した事ではありません。有事の際に、ピドナに優先的に木材を売ってほしいのです。もちろん、言い値で買い取ります」
「そのような事でしたらたやすい事です。では『木こりのセルゲイ』には、そのように伝えておきます」
「はい。よろしくお願いします」
私が何者か?
完璧な答えは得られませんでしたが、ヒントを得られたような気がしました。
こうして私は、ポドールイを後にしました。