ロマンシングサガ3-2 REVIVE OF THE SIX 作:日加利有亮
拝啓 ルネ様
済まない。父上から何も情報を得られなかった。
けど、分かった事もある。
俺には教えられないほど、状況は切迫していると言う事だ。
一応、『スタンレー国王と良く話し合え』と言って釘を刺しておいたが、
このまま放っておいたら、また戦争になりかねない。
そこで、俺からの提案なんだが。
明日の早朝、お互い城を抜け出さないか?
と言うか、俺はお前がNOと言っても一人で抜け出す。
俺が城からいなくなれば、俺を探す事に必死になって戦争どころでは無くなるはずだ。
お前もいなくなれば、なおの事だ。
だから、お前も来るのであれば、明日朝5:00までにスタンレーの入口にいてくれ。
夕方の5:00じゃ無いぞ。朝の5:00だからな!
俺は先に行って待ってるぞ!
よろしく頼む。
リーケル
(コイツともしばらくお別れだな)
俺はロボ鷹を優しくなでてやった。
滅茶苦茶硬かった。
まあ、ロボだから当たり前なんだが。
「行ってこい!気をつけてな」
ロボ鷹はスタンレー目掛けて飛んで行った。
コツコツと、窓を叩く音が聞こえた。
どうやら、ロボ鷹が来たようだ。
「ご苦労さん」
オレは窓を開けた。
辺りは夕日が完全に沈んで暗くなっている。
そろそろ夕食の時間だ。
「さてと、今回の内容は・・」
オレはロボ鷹の足から手紙を取って読んだ。
拝啓 ルネ様
以下略
リーケル
(待ってたぜ)
(この時を!!)
オレは簡単に外に出してもらえなくなってから、何度となく家出しようと考えていた。
だから、部屋から脱出するためのロープも準備してある!
オレの部屋は三階で、下は庭になっている。
ロープで降りるのはたやすい事だ。
そして、下の庭にやって来る見張りの時間もチェック済みだ!
リーケルが指定した時間は、出発する時に見張りがいない絶妙なタイミングだった。
これはもう、オレに家出しろって言ってるようなもんだろ!
(とは言え)
(最後に親父の考えを確認しておかないとな)
まもなく夕食だ。
そこで親父から話を聞いてみる事にしよう。
オレは信用されていないから、望み薄ではあるけどな。
「ルネ様、夕食の準備が整いました」
「分かった」
ばあやがオレを呼びに来た。
リーケルみたいに若いメイドを雇った日には、オレに惚れる可能性があるからな。
オレは面倒くさい事は避けたいんだ。
オレが好きなのは一人だけだ。
オレには、『あの人』がいてくれるだけで良い。
食事は親父と二人で摂っている。
母はオレが幼い頃に亡くなったから、ほとんど記憶に残っていない。
リーケルも同じだ。
だから、リーケルと馬が合ったのかも知れない。
「親父。ちょっと良いか」
「『親父』では無い。『父上』だ。一体何度言ったら分かるんだ?」
「そんな事は今はどうでも良いんだ」
「『そんな事』とは何だ?!お前は一国の王子なのだぞ!もう少し言葉遣いに気をつけろ!!」
オレは怒りに任せてテーブルを両手で叩いた。
「ばあや!」
「な・・何でしょう・・?」
「夕食は部屋で一人で摂る。後で持ってきてくれ!」
「しょ・・承知しました」
オレはそれ以上何も言わずにその場を立ち去った。
(これで良い)
(これで良いんだ)
(これでオレの事はしばらく放っておいてくれるはずだ)
(親父達が、オレがいない事に気づくのに、少しは時間が稼げるだろう)
(後はその時になるのを待つだけだ)
オレは部屋で夕食を摂りながら、色々な事を考えた。
朝の4:30になった。
今から30分間だけ、庭に見張りがやって来ない。
行くならこのタイミングだ。
城から入口までは大体徒歩10分と言った所だ。
今から向かえば確実に間に合うだろう。
リーケルはファルスから来なきゃいけないから、オレより2時間は早く城を出なければならない。
大変だな。
けど、お前が決めた事なんだぜ?
オレは準備しておいたロープを窓の手すりに結び、地面に届くまでロープを垂らした。
無事、ロープは地面に到達した。
(じゃあな親父)
(早まった事はするなよ)
オレは真っ暗な朝を、入口の方角に走って行った。
(やばい)
(寝坊した・・)
時刻は3:30。
スタンレーまではどう考えても2時間以上はかかる。
ロボ鷹でさえ、1時間はかかるのだから。
(これは完全に遅刻だな)
(済まない・・ルネ)
俺は大急ぎで支度をして、ロープを地面に垂らし、ロープを伝って外に出た。
そして真っ暗な朝を、スタンレーに向かって全力で走った。