呪いの囁き   作:gp真白

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最終決戦:創世神アビストルム

 

マスターランク昇格から一夜明け、パーティ【暁闇の尖兵】は、ついに最難関レイドボス**「創世神アビストルム」**が待つ「創世の回廊」へと足を踏み入れた。

 

彼らの指揮体制は、完全に**「ザ・シングル・ブレイン(一つの頭脳)」**へと移行していた。アリス(ウィスパー)の解析情報は全員のHUDにリアルタイムで共有され、ブレイズのVCは、0.1秒の誤差も許されない最終指令となった。

 

戦闘開始直後から、パーティは完璧に連携した。メインタンクのブレイズは鉄壁の防御を、セイクリッドは最適化された回復を維持する。ゼウスとリゼルは、アリスのデバフのタイミングに合わせて最大の火力を叩き込み、ボスのHPは順調に減少していく。

 

そして、運命の瞬間が迫る。ボスのHPが10%を切った。

アリスのHUD全体が赤く点滅する。

 

[ALERT] 究極耐性 発動まで残り 5.50秒!

[ACTION] 全員、0.05秒の沈黙を厳守せよ!

 

ブレイズのVCが、戦場に響き渡る。静かだが、鋼のような決意に満ちた声だった。

 

「**ゼウス、リゼル!今から攻撃を完全に中断!セイクリッドも回復中断!0.05秒の静寂を厳守しろ!俺が『カース・ブレイク』**の着弾を感知してから、攻撃再開!」

 

ゼウスは、自身の指が攻撃ボタンから離れていることを確認する。これまでなら、火力のロスの焦りから、わずかな攻撃を挟んでいただろう。しかし今は違う。彼は、自身の高すぎる火力こそが、これまでパーティを破壊していた**『毒』**であったことを理解していた。

 

そして、運命のT - 5.12秒。

ボス:[究極耐性] 第1層バフ付与

 

直後、アリスのHUDに、誰も気づかないはずの**『魔力粒子の微細な乱れ』**のログが一瞬表示される。

 

その0.02秒間、誰もボスを攻撃しなかった。

 

ボスは永続耐性を起動できず、第1層バフは時間で解除されるバフのままに留まる。

アリスは、ブレイズに短く内線で伝える。「成功」

ブレイズは即座に全体VCに叫んだ。

「ウィスパー、『カース・ブレイク』!ゼウス、リゼル、攻撃再開!」

アリスの**『カース・ブレイク』は、ボスの『究極耐性』が時間切れで自動解除されるT + 10.00秒**に、完璧なタイミングで着弾した。

 

「やった!最強デバフが通った!」リゼルが叫ぶ。

ボスの防御と耐性が完全に無効化される。ゼウスは溜めに溜めた**『猛攻の呪印』**を起動し、リゼルと共に爆発的な火力を叩き込んだ。ボスのHPは一気に2%まで削られた。

しかし、アビストルムは倒れない。

 

ボス:[最終カウント] 詠唱開始 (残り時間 00:01.00)

そして、HPが1%を切った瞬間、アリスが解析した最後の隠しギミックが発動した。

ボス:「――創造は、無限なり!」

轟音と共に、ボスは全身から光を放つ。

 

ボス:[最後の咆哮] 完全無敵バフ付与 / 持続時間 0.5秒

ボス:[強制移動] ゼウスを後方20mへ、リゼルを左側面へ強制移動

「強制移動が来た!」セイクリッドが叫ぶ。

 

ゼウスは一瞬で、これまで攻撃していたボスの心臓部から大きく引き離された。詠唱中の**『オーバーロード』は中断されなかったものの、この位置からでは着弾が必ず遅れる**。

 

アリスのHUDには、強制移動後の各メンバーの位置と、無敵解除までの残り時間が表示される。

 

[WARNING] 無敵解除まで残り 0.20秒!

[DANGER] ゼウスの攻撃、着弾遅延 0.15秒を予測!

 

0.1秒の遅延が、彼らの敗北を意味する。

 

この時、ブレイズはもはや指揮をしない。彼は**「ザ・シングル・ブレイン」の司令塔として、全員の動きの予測を0.1秒**で完了していた。

 

彼の判断は、ゼウスに託されたスキルポイントに基づいていた。

 

ブレイズは、自身のヘイト(敵意)スキルを、ボスの無敵解除が来る0.1秒前に発動した。

 

ブレイズ:[緊急ヘイトカット] 発動!

 

通常、このスキルはボスのヘイトを一時的にリセットするだけだ。

だが、この瞬間、アリスのHUDには、ブレイズの意図が鮮明に表示された。

 

[ALERT] ブレイズ、緊急ヘイトカットを発動!

 

[RESULT] ボスのターゲットが一時的にリセット。

 

[ACTION] ゼウス:最短ルートでの 再移動 が可能に!

 

ブレイズは、ゼウスがターゲットを気にして迂回する時間を無くすため、あえてターゲットを一瞬リセットしたのだ。

 

強制移動で距離を置かれたゼウスの頭に、ブレイズのVCが響く。「ゼウス!直線で走れ! 詠唱を止めるな!ウィスパー、俺の防御バフをゼウスに!」

 

「ブレイズ!」セイクリッドは驚く。タンクであるブレイズが防御を捨てて、ゼウスにバフを回すとは!

しかし、アリスは迷わない。彼女は解析結果通り、防御バフをゼウスに付与した。

 

ゼウスは、強制移動で離された距離を、ブレイズの**「直線で走れ!」**という命令に従って最短で駆け抜ける。

 

0.05秒。無敵解除の瞬間。

 

リゼルの攻撃、セイクリッドの**「リジェネレーション」、ブレイズの「タウント」**。全てのスキルが着弾する。

 

そして、ゼウス。彼は、マスターランクのスキルポイントで短縮された詠唱時間と、ブレイズのヘイトカットによる最短距離移動、そしてアリスの防御バフによる精神的な安定により、0.00秒の誤差でボスの心臓部に到達した。

 

『ゼウス:[オーバーロード] 着弾!』

 

ダメージログ: 創世神アビストルムのHPが完全にゼロになりました。

 

『創世神アビストルム』

 

『討伐完了!』

 

沈黙。そして、ブレイズの、疲労と安堵と誇りが入り混じった、静かな声が響いた。

 

「...勝ったぞ、みんな」

 

VRヘッドセットを外したアリスは、深く息を吐いた。身体の奥に響くのは、もはや疲労感ではない。達成感だった。

 

彼女の眼前に、討伐ログが投影される。

 

『創世神アビストルム:討伐完了まで残り時間 00:00.00』

 

彼女の沈黙の貢献は、ついに、最強パーティの真の勝利となった。

 

ゼウスは、アリスの隣に立ち、拳を差し出した。

 

「ウィスパー。あなたこそ、最強の尖兵だ」

 

アリスは、微かに笑い、その拳に応えた。彼らの信頼は、世界の難関を打ち破る、最も強固な武器となったのだ。




この物語はこれで完結となります。いかがでしたでしょうか。
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