「少し早いですが、体育祭の振り分けをざっくりと考えたいと思います」
放課後の教室。
教壇に立った
隣には体育委員の
(結局、
家が比較的大きく有力そうな者たちは、いずれも大人しくしている。
「今週から男子は社会奉仕、女子は
学校が終わった後に"自主的"に活動する地域の団体を指す。
活動内容は多岐に渡り、軍事予備訓練から討論会、詩の朗読など文化的な活動を行い、党の下部組織としての一面も持っている。
一部のスポーツ枠などの人間などはこれを免除されるが、大半の女子は今日から地域の
「体育祭の競技には一人一つ、必ず参加する必要があります。あまった競技については一人が何回参加しても構いません」
「競技ポイントが高いものから決めていきましょう。まずはリレー。自信がある方は?」
まず
続いて、教壇に立つ
「他にはいませんか?」
誰も手を挙げる様子がなかった。
「
「仮でいい。練習で他に速いやつがいたら交代すりゃあ問題ないだろ」
「……ええ。では、あと一人どなたかいませんか?」
「私は
「が、がんばります」
「それでは
良い組み合わせだ、と
自分の存在感を示す事ができる。
「続いて、徒手格闘。これもポイントが高いです」
「それも私がやる」
真っ先に手を挙げる。
「……へえ。人は見た目によらないね」
「文句あるなら試してみるか?」
「そうだね。一度試してみたい気持ちはあるけど、自信があるなら任せるよ」
肩を竦める
「では、続いて模擬射撃。希望す――」
「――希望する」
またしても、
「失礼ですが、銃を扱ったご経験が?」
「ああ。文句あるなら勝負してもいい」
教室に沈黙が落ちた。
ここだ、と
不快そうな視線がいくつかあったが、誰も口を開こうとはしない。
「で、文句あるやつは?」
目を合わせて言うと、彼女たちはいずれもすぐに視線を逸らした。
(ただの落ちこぼれどもとは違うんだってはっきり教えてやるよ)
体育祭で出来るだけ競技ポイントを稼ぎ、
「……では、模擬射撃も
「4人なら通常のリレーと同じメンバーでいいんじゃないかな?」
「はい、
誰も反論はない。
ここにも
「ここから競技ポイントが下がります。まだ名乗り出ていない方は積極的に手を挙げてください」
100メートル走、200メートル走、ハードル競争、綱引きとポイントが低い競技のメンバーが順番に決まっていく。
「まだ決まっていない方いますか?」
誰も挙手しない。
「では、これを大枠として――」
「――まだ
早苗の言葉を遮り、
(……あいつか?)
窓際で一人、机を見つめるように座る一人の少女がいた。
思えば、一度もまともに喋っているところを見た事がなかった。
最初の自己紹介の時も、名前を呟いただけでそれ以外に何かを喋った記憶がない。
「
「
「……100メートルを希望します」
その間も、
「そういえばボクも決まってないんだけど、二人三脚になるのかな?」
教室に変な空気が広がりかけた時、
「はい。男子は慣例的に二人三脚に参加されることが多いです。その……お相手はどうされますか?」
今の
「えっと、それって保留でもいい?」
「はい。体育祭までまだ時間があります。
「わかった。ありがとね」
教室中で、互いを牽制するように視線が交錯する。
「では、とりあえず種目の振り分けはこれで終わります。仮のものなので、何か不具合があれば後日詰めましょう」
各々が帰宅の準備を始める。
これから男子は社会奉仕、女子は地域の
「
視線を合わせるように机の前でしゃがみ込む
それを見ていた周りのクラスメイトが眉をひそめる。
「
「あ、良いんだ。大勢の前だと喋りづらいかな? それに
同時に
周りの女子生徒たちが顔を合わせ、何か言いたそうな顔をする。
「みんな今日から大変だよね。お互い頑張ろうね」
「はい!
女子たちの興味がすぐ
それを眺めながら、
(面倒な事になりそうだな)
◇◆◇
16時40分。集合時間にはまだ余裕がある。
前方には、壮麗な三階建ての建造物、
高校一年生のすべての女子は、自発的に
学校と異なり地域ごとに集まる為、中学で見知った顔もいくつかあった。
(さて……)
鈴は
何人かが
地元の学校で腫物扱いだった
別の中学の女子たちで、出来るだけ有能そうな娘を見つけなければならない。
ふと視線を巡らせた時、壁際で本を読む一人の少女が目に映った。
小柄な体躯に静けさをまといながらも、その瞳の奥には聡明さがほのかに宿っている。
「よお、良い趣味してるな」
出来るだけにこやかに、フレンドリーに声をかける。
「同じ作者の白い頂きは読んだ事があるよ。それはおもしろいのか?」
「……今のところはつまらない」
「そりゃ残念だ」
彼女の隣に並び、辺りを見渡す。
「一人か? 中学の奴らは?」
「あまり友達がいないの」
「いいね。私もだ」
「そう」
少女は興味なさそうに呟いて、再び本に目を戻した。
他人に迎合しないその態度が、
「あんた、名前は?」
「……