【書籍化】男女比が壊れた世界でギスギスする話(書籍タイトル:恋奪の教室) 作:月島しいる
「このチョコパイうまいっすよ!」
「えー、でもカロリー高そう~!」
いつも通り騒ぐ
体育祭の打ち上げは、自然と机ごとに普段のグループで固まっている。
「……」
体育祭が終わってから、
白雪学園では珍しく、脱色した髪は人目を引く。
出会った時、度胸のあるタイプだと思った。そして思った通り、行動力もあった。
表立って言わなかったが、
「……」
遠くの
いずれ軍の幹部となる彼女たちは、金や権力だけでなく力を有している。
そして事実、クラスで足を引っ張りそうな
彼女たちの暴力行為を
なのに今は、不可思議な事に
おそらく、
結果的に、
「
彼女は表裏がなく友人としては良かったが、クラス内抗争においてあまり役立ちそうにない。
「一つでいいんすか? もしかしてダイエット中っすか?」
揶揄うように笑うのは
よく日焼けした小麦色の肌は、
こちらも顔は整っているが、
「……はあ」
思わず溜め息が出た。
それから、
クラスの冴えない女子が集まったような、寄せ集めのグループ。
あれよりはマシか、と考えながらチョコパイを齧る。
「うまいっすよね、これ」
「まあ。
「……食うか」
黙っていた
その横で
「で、これからどうするぅ?」
「お前ら、学期末試験の自信あるか?」
「んー、あんまりかもぉ」
「全然っすね」
「……だよな」
反対に、
「じゃあ普通に話しかければいいじゃん」
「……はあ?」
「
「おま……馬鹿ッ!」
思わずギョっとする
想定外の行動に、
更に驚いたのは、
「ごめんね。待たせちゃったかな?」
「みんな、体育祭お疲れ様。
「へへ、覚えててくれたんすか? 水泳があったらもっと活躍できたんすけどね!」
中学時代は水泳部のエースだったらしいが、白雪学園にプールは存在しない。
「
「見ててくれたんだ~! うちら、結構頑張ったよね~」
「……たまたま引きが良かったから」
特に
表面上はいつも通りを装っていたが、見られていた事を意識すると心臓の鼓動が少し速くなった。
見惚れている間に、
「
「おい……」
しかし、
「えっと、あんまり考えた事ないかも」
「じゃあじゃあ! この四人の中だと誰が一番好きぃ?」
「馬鹿、あんまり困らせるな」
「悪ィ、こいつ馬鹿なんだ。よく言い聞かせておくから」
「誰が一番かっていうのは難しいけど、みんな可愛いと思うよ」
にこり、と
「おいおい、こいつら本気にするから勘弁してくれ」
「遺伝子提供、うちらいつでも手伝うから言ってね」
特に
「じゃあ、また後でね」
グループに残された沈黙を、
「……聞いたっすか?
「んなわけねえだろ。寝言は寝て言え」
まだ、やれる事は残っている。
◇◆◇
打ち上げが終わり、クラスメイトたちが次々と帰っていく。
教室の中央で
校舎内は人影がなく静かだった。
薄暗くなってきた廊下で立ち止まり、
すぐに
「
「……この前、カレー作ってもらったでしょ。そのお礼」
目を合わせられなかった。
差し出した手が震えない事を祈る。
「その……お菓子作ってきたから」
「いま食べてもいい?」
「……うん」
小箱を受け取った
中から、色とりどりのクッキーが現れた。
「わ、綺麗な見た目だね」
「……そう?」
何度も渡し損ねて、何度も作り直したものだった。
自信はある。
「あ、美味しい」
「ほ、ほんと?」
らしくないと思いながら、前のめりに反応をうかがう。
「うん、市販のクッキーより美味しいよ」
「私の実家、洋菓子屋なんだ。味には結構自信あって」
「そっか、そういえばいつもスマホで研究してるもんね」
心臓が跳ねた。
見られていた事に対する恥ずかしさと、見てくれている事に対する嬉しさの両方が胸の奥から湧き起こる。
中学時代はよく、スマホで色々なレシピを見ている事を遊んでいると勘違いされて注意されたものだった。
自分の努力を
「……まだ小さいお店なんだけど、大きくするのが夢だから」
「そっか。じゃあ楽しみにしてるね」
反対に、隣の
「じゃ、また明日ね」
別れ際、ふと思い出したように言う。
「その、また作ってきてもいい?」
「うん」
無表情を貫いていた
最初に補助を行った
つまり、自分の行動が間違っていない証左でもあった。
なら、私はまだやれる。
やれるところまでやってやる、と