月に一回の遺伝子提供は、男子に課せられた義務である。
大半が人工授精で生まれる現代において、人口維持の為に欠かすことの出来ない制度となっている。
そしてこれを補助するのもまた、女子の義務であった。
「
遺伝子バンクのロビーには、相変わらず人がいなかった。
どうやら、他人と遭遇しないように調整されているようだった。
受付を済ませると、すぐに個室に案内される。
前回と変わらず、ビジネスホテルのような部屋だった。
「……意外と普通の部屋なんだね」
二人きりになった緊張を誤魔化すように、
そして、テーブルに様々な道具が並んでいるのを見つけると、気まずそうに視線を逸らした。
「シャワー室もついてるよ。どうする?」
「寮で浴びてきたから大丈夫だ」
「そう? じゃあ先に入ってくるね」
「いや……そのままでいい」
立ち上がろうとした
「その……そのまま隣にいて欲しい」
肩を寄せる
「そっか。じゃあ何かお話しようか」
「ここは……時間は決まっているのかい?」
「多分、制限はないんじゃないかな。予約する時も終了時刻とかはなかったし」
「そうか……じゃあ、ゆっくり出来るね」
ベッドについていた右手に、
互いに言葉を探すような、無言の時間が流れた。
「……前みたいに、頭を撫でて欲しい」
最初に口火を切ったのは、
ゆっくりと体重を預ける
「うん、こうかな?」
「ああ……」
「このまま横になる?」
徐々にしなだれかかってくる
そのまま、ゆっくりと髪を撫で続ける。
いつもは大人びている
「最初は同類と思ったんだ」
ぽつりと、
「Aクラスだった私は、どこでもいけた。でも気になったのは君だけだった」
「……」
「
そこで
「今は、直感を信じて良かったと心から思うよ」
「……
「少し話をした。けど、元通りになるのは無理だろう。彼女の好意は一種の思い込みで、こうなるのは時間の問題だった」
「……そっか」
腹部に顔を埋めていた
「ところで、
「無理って?」
「女が苦手だったと聞いている。どこまでが大丈夫なのか、正直に言うと判断に困ってるところでね」
「ああ、うん。今は平気なんだ。本当に気にしなくていいよ」
「……嘘ではないようだね」
「中学に入りたての時に、クラスで酷いイジメがあって。ボクが原因みたいなもので、当時、どうしていいか分からなくて……それで、行けなくなっちゃったんだ」
「……」
「でも、今は本当に大丈夫」
「そうか……」
「……
「それは……よくわからないな」
「ボク、社会スコアが殆どないから。二年生になったら、皆クラス選択権使ってどこかに行くんだろうなってずっと思ってて」
「……」
「
「……なるほどね。不安なのは女だけではないという事か」
「もう少し、このままでもいいかい」
「うん」
室内に、空調の音だけが響く。
膝の上で子供のように甘える
◇◆◇
遺伝子バンクを出ると、外はすっかり暗くなっていた。
車に乗り込むと、すぐに
「このままご帰宅されますか?」
「
「……今更だけど、随分と他人行事な呼び方じゃないか。
「えっと、
「もちろん、もう少し一緒にいたい」
「近くに二等市民向けのレストランがありますので、そちらでよろしいでしょうか」
一瞬、
最初の遺伝子提供にきた時に寄ったレストラン。
返事に詰まってる間に、
「……二人きりの場所がいい」
「個室もございますが」
淡々と答える
それを無視して、
「
「
「補佐官が口を挟む事じゃないと思うけど?」
「遺伝子提供は男性にとって心身ともに大変なご負担となります。何より、まだ二回目で慣れぬ身。どうかご理解ください」
「……わかった。今日は諦めよう」
徐々に外向きの姿に戻っていく。
ただ、手だけは握られたままだった。
「えっと、お部屋はまた今度見せてもらうね」
「ああ。準備して待っておくよ」
車がゆっくりと動き出す。
「そういえば勉強会の件だけど、どうやら全員参加になりそうだね」
「うまくまとまるかな」
「一番警戒していた
「
「
「少ししか話してないけど、協力的な印象だったから大丈夫そうだと思う」
「そうだね。後は
それから、と
「最も注意すべきは党の特別プログラムだが……一年生の一学期に大した事はやらないはずだ。最近はずっと英帝の揚陸シミュレーションを指定されると聞いている」
「それってどういう事をやるの?」
「英帝のどの艦隊がどこで補給してどこに上陸するかを机上でシミュレーションするんだ。後は古いパターンだとソ連の南下作戦のシミュレーションかな。どれもお題が発表されてから対応すればいい」
そこで、
「いずれにせよ、私の得意分野だ。軍事は
「そっか……その時は
「ああ、だから
そっと髪を撫でると、