「週に何度か、クラス全体の勉強会を開こうと思うんだけど、どうかな?」
教室に戻り、まだ時間がある事を確認すると、
事前に何人かに是非を問い、感触が良かった為、ここで切り出す事にした。
「
「……一応聞くけど、それって
「うん、もちろん」
「さ、参加する!」
「私も出来るだけ参加するよ」
それを皮切りに、何人かが声をあげた。
「個別に勉強会を開く人とか、家に個人講師を呼ぶ予定の人は無理して参加しなくて大丈夫だからね」
「開催は明日からだ。私たちがサポートに回る。わからないところがあっても、大概の質問は答えられるだろう」
そして、
「
「もちろん、参加いたします。誰にでも門戸を開き、公正な機会を与え下さる
満面の笑みを浮かべる
「あ、ありがとう。助かるよ」
「ええ。他にもお困りごとがあれば何なりと」
その時、
「その……私、バレーの選抜練習であまり行けないかも……」
「うん、わかった。自由参加だし、気にしなくて大丈夫だよ」
「……家で頑張るね」
しゅん、と気を落とした様子を見せる
それが少し気になり、
クラス全体の勉強会とは別に、夜に少人数での勉強会を企画してもいいかもしれない、と思いつく。
「……」
顔をあげると、ニコニコと上機嫌でこちらを見ている
クラス選択権を既に使った
初日に移動してきた彼女からの好意は明白で、どこかでちゃんとお互いを知る機会を作ろうと考えていたが、体育祭で忙しかった事もあり、長らく関係が薄いままになっていた。
「
「……はい!」
花が開いたように、
その笑顔に一瞬、視線が奪われる。
「……あ、ごめん。後から伝えるね」
少人数での勉強会についてはここで言わない方が良いと考えなおし、手を振って席に戻る。
「はい、いつでもお待ちしております」
◇◆◇
「学期末のトレード制には、抜け道がある」
昼休み。
「お手付きだよね?」
話の内容自体は、事前に予想していたものだった。
「そうだ。君がお手付きをすれば、殆どのルールを無視できる」
始国十八家という肩書とは裏腹に、家具などは一般的なものが並んでいる。
促されるまま、
「でも、あまりやらない方が良い気がする」
「なるほど? まずは君の考えを聞こう」
廊下で一人、ずっと考えていた事を整理しながら語る。
「お手付きすればその人は守られるけど、トレードのラインが後ろに下がるだけだよね」
「そうだ」
「ラインが動いて、本来はセーフだった別の誰かがアウトになるだけなら今後の不和に繋がると思う」
膝の上までしなだれかかった
「まったく同意見だ。そう、根本的な解決にならない」
それに、と
「これは私の推測だが……今回のトレード制は本命じゃない」
「本命?」
「恐らく、他に本命の案があったんだと思う。しかし、予算やスケジュールに問題があったのか、間に合わせのトレード制を導入した、というのが私の見方だ」
「それは……どうして?」
「問題の根本的な解決になっていないからだ。トレード権を与えられるのは5人だけ。大多数のクラス選択権は腐ったまま。つまり、ただのガス抜きにしかなっていない」
「うん、それはボクも思った」
「つまり、もっと大きな制度変更が予定されている可能性が高い。だから、このトレード制を切り抜ける為だけにお手付きなんかしなくていい」
そこで
逡巡してから、考えを素直に吐き出す事にする。
「実はね、トレード制についてはあまり心配いらないと思ってるんだ」
密着していた
「入学からもう一か月以上経ってるし、上位クラスって皆仲良くなってるんじゃないかな? わざわざ下位クラスに移ってくるパターンって考えづらいというか」
「……」
男子のクラス振り分けは、主に信用スコアによって行われる。
上位クラスには愛想が良く、社交性が高い男子が配置されているはずだった。
唯一知ってるCクラスの
「
「……」
「
「……」
「
「……」
そこまで話すと、
「だからトレード制の事を考えるより皆で勉強会を頑張った方がいいかなって思ったんだけど、どうかな?」
「……いや、クラスポイントの方を重視する君の考えは正しい」
「というか、人が来る心配よりも、このままじゃ二年でクラスから出ていく人もいるだろうし、愛想尽かされないように頑張らないと」
「……私がいるだろう。どれだけ出ていっても問題ない」
「うん、ありがとね」
髪を梳くと、
まるで猫のようだった。
「そういえば、
「
「……私に言えばいい。君の頼みなら何でもする」
「うん、でも
「……」
不貞腐れたように黙り込む
他のコロニーはどうやって同時に多くの女性を相手しているのだろう。
「ごめんね」
「……そう思うなら、時間いっぱいまでこうしてくれ」
「うん」
「勉強会って、何だか普通の学校生活って感じがしていいよね」
かつて夢見た普通の学園生活。
今は少し、毎日が楽しみだった。