「
下校の前に、昇降口近くの自販機に立ち寄った時だった。
「ん……
「何か気になる事が?」
「今回のトレード制でKクラスを指定する者はいないだろう、という予想を
「それは……」
言葉に迷った
「おかしな話だろう? 私たちは少し、思い違いをしているのかもしれない」
「……」
仄かな苦みが口いっぱいに広がる。
「男子の前で別の男子の話をする愚かな女はいないわけだ。それに、女のようにネットワークがあるわけでもない。男子は男子自体について、私たちより無知なんじゃないかな」
「……なるほど。確かに、男子が他の男子の情報を入手する手段は思ったより少ない、か」
男子はコロニーを築き上げると、その群れの中で生きていく。
コロニー同士の接触は極力避けられる傾向があり、全体像を掴む事は難しい。
「閉じこもっているコロニーから無理やり引き出し、社会に循環させるための制度が社会奉仕なわけだけど、
「それで、一体何を悩んでいるんだ?」
話が見えなかった。
「彼はね、勉強会が普通の学園生活っぽくて良い、と言ったんだ」
「……」
「ポロっと零れた言葉だけど、多分、それが一番求めてるものじゃないかと思ってね」
「……それで?」
「いや、何も。ただ、彼が何故そんなものを求めているのか、ずっと考えていた。それだけだよ」
彼女が手に持ったままのペットボトルは、まるで減っていない。
「随分と入れ込んでるじゃないか」
「意外かい?」
幼少期から
昔は何にも興味を示さず、人形のような子供だった。
人が変わったように見えた中学時代も、本質的な部分では他人に興味がなかった事を
「
「……ああ、そうかもしれないね」
相槌を打つ
「
不意に、真剣な目が
「補佐官の任期は三年までだ。護衛役が空けば、
跡取りとして育てられた
名前の挙がった
「……可能だろうか?」
「それは
それに、と
「
「……」
明治維新後は特権を失った不平士族を取りまとめる役目を果たし、その武力によって明治政府の中核をなした。
こうした従属を誓う地方名家との関係を現代でも維持するには、様々な融通が必要となってくる。
特に男の手配は、機会すら与えなければ大きな失望を招く。
「今は学業を理由に断っているが、夏季休暇がくればそうはいかないだろう」
「……」
「もたもたしてると、家柄だけのつまらない女に先を越されるよ?」
時間が経つほど、群がってくる女は増えるだろう。
「私は……面白味のない女だ。気に入って貰えるだろうか」
「力を抜いて普通に接するといい。私に接している時みたいにね」
「
「それは……幼少からの付き合いだからだ。殿方に同じ態度など……」
「いや、
「だから、普通の友人になってやればいい」
「……難しい事を、随分と簡単そうに言ってくれる」
下校する女子グループが、次々と前方を通り過ぎていく。
「……それに、機会がない」
小さく弱音を吐くと、
「なるほどね。じゃあ、機会を作ってあげよう」
「な、何を」
「今ならまだ教室にいると思う」
「ま、待ってくれ」
急いでコーヒーを飲み干し、ゴミ箱に放り投げる。
引っ張られるように立ち上がり、ポニーテールが揺れた。
そして下校する女子の流れに逆らうように、
◇◆◇
「クラス全体の勉強会とは別に、ここの皆で勉強会もしてみない?」
放課後の教室から人が消えたのを見計らって、
周囲には雑談で残っていた
「べ、勉強会?」
「うん。
「み、
同時に、
「私たちもいいの?」
「うん。もちろん、皆で」
それから、後ろで静かに控えていた
「ボクたちだけだと限界があるから、
「はい、微力ながらお手伝いを。わからないところがあればお気軽にお聞きください」
ぺこりと
「
グループの隅っこで黙っていた
「……参加、したいです」
「そっか。じゃあ全員参加だね」
「
男女混合で夜に勉強に使えそうな場所は多くない。
「えっと……ボクの家を使おうと思ってるんだけど……」
瞬間、
「……ダメかな?」
「本当!?
反対に、
それを見た
「と、
全員参加で、場所も決まった。
話がまとまりそうで安堵した時、教室の戸口が開いた。
振り返ると、
「やあ、間に合ったようだね」
「どうしたの?」
「
そう言って、
「の、
「
体育祭の準備中、
「ほら、体育祭の時に迷惑をかけただろう? 修復のきっかけにも良いと思ってね」
「その……
深く頭を下げる
「……」
人間関係の拗れを解決するのは、とても難しい。
よく話し合う事も、距離を置く事も大事で、明確な答えは存在しない。
ただこの場合、
そして、高校生活が三年も続く事を考えると、このまま互いに距離を取り続けるだけの対応もどうなのだろう、という結論に至る。
「ああ、ひよりは近づかせないから大丈夫だよ。あれは私の監督不足だ。
「……」
始国十八家の立場にある
それに、勉強場所は自室で、目が届かないような場所はない。
「
問いかけに、
無理をしているようには見えない。
その様子を見て、
「じゃあ、皆で頑張ろう」