「ほ、本当に入っていいのか?」
「うん、もうみんなも来てるよ」
夜の九時を回った頃。
勉強会の為、
最後に到着したのは、
「お、お邪魔します……」
いつも堂々とした様子の
「
廊下から、先に到着していた
緊張した様子の
「……
「はい、こっちの部屋どうぞ」
入ってすぐの寝室に案内する。
中には、
「……私が最後か」
普段使いしているテーブルと、来客用のテーブルを繋げているため、部屋の中は手狭となっている。
「お茶取ってくるね」
「あ、悪いな」
リビングでは、待機していた
「もう用意してくれてたんだ。ありがと」
「寝室では少々狭くありませんか?」
「うーん、こっちだと椅子が足りないし……」
リビングには、四人用の椅子しかない。
テーブルの高さも高く、来客用の折り畳みテーブルでは並べるのも難しかった。
「女六人と肩が触れ合うような距離だと、私は心配です」
「大丈夫だよ」
「何かございましたら、すぐに叫んでください」
過保護っぷりに思わず苦笑しながら、
部屋に戻ると、それぞれが興味深そうに部屋を見渡していた。
「はい、どうぞ」
「あ、ごめんね」
差し出したお茶に、
「何からやろうか」
「地理はどうでしょうか? 特別プログラムで使う可能性もありますし、重点的に復習しておくべきです」
「同意だ。従来の揚陸シミュレーションではなく、何かレクリエーションをするらしいが……準備するに越した事はないだろう」
「そうだね。地理と政治学辺りはあまり手を抜かない方が良いと思う。地理からやろうか」
「はい、
見ると、範囲がよくまとめられていた。
それから、対応した小テストもついていた。
「クラス全体の勉強会でもそうでしたが、まずは実戦形式で問題を解いて、点数に合わせて適切な学習方法を探る事を提案いたします」
「うん、ありがとう。ボクもそれに賛成」
まずは解いてみようか、とプリントを全員に回す。
それからしばらく、ペンと紙が擦れる音だけが響いた。
小テストの問題は少なく、数分あれば全て解く事ができた。
終わった者から、静かにペンを置いていく。
最後にペンを置いたのは
「スエズ運河ってなに……。なんでこんな外国の川幅なんて覚えないといけないの」
周りも緊張が解けたように、各々足を延ばしたりしていた。
その中、ぽつりと
「……国防の要所なんです」
「え?」
「スエズ運河は……アフリカをショートカットする為に人工的に切り開かれた運河で、とても細いんです。運河周辺のエジプト領を実効支配しているのは英帝です。もしも英帝との衝突が本格的になった場合、英帝の艦隊はここを通って真っすぐやってきます。対して日本の連合艦隊はアフリカ大陸の南端、
全員が、目を瞬いていた。
「あの……国防白書に書いてます」
「随分と詳しいな。もしかして軍人の家系なのか?」
「……国防白書の重要事項は受験に出ます。受験に出るものは、必ず学期末試験でも出ます。党の意図を汲めば、出題はある程度予想できます」
「では、他はどういう予想が可能ですか?」
「……海路に関わる事は必ず出ると思います」
「……例えば、アンデス山脈。一見すると海路に無関係に思えますが、南米の航路が東海岸に集中する原因となっています。米帝の輸送を叩く上で、必ず必要な知識です」
「なるほど。理に適っています。確かに党が求める知識に違いありません」
少し考え込む素振りを見せる
隣で
「
ふるふると首を振る
「助かるー! 私、実は補欠合格なんだよね」
瞬間、場の空気が凍った。
「……え?」
「私、本当にギリギリだったらしくてさ! いやぁ、
補欠合格。
つまり、学力で言えば、下位五位に入る可能性が最も高い事になる。
無邪気に喜ぶ
「……
「私も暇を見つけ次第、出来るだけ付き合おう。叩きこまねばなるまい」
「え? あの……お手柔らかにお願いします……」
しゅん、とする
まだ始まったばかりの勉強会だが、何だかうまくいきそうだった。
「
「ああ。問題ないと思う」
伸びをしながら答える
「
「……あんまり……かも」
スポーツ枠で入学している
意気消沈している
「ボクと同じくらいの点数だね。一緒に頑張ろ」
男子はそもそも、入学試験がない。
党の内部審査で強制的に共学へ振り分けられ、白雪学園の場合はそこから信用スコアで更にクラスを振り分けられる。
よって、男子の学力は重視されない風潮があった。
「
「
「ま、まだまだ時間あるし! 大丈夫でしょ!」
「そういう態度が手遅れを招くんだ。さあ、やるぞ」
「うへえ……」
◇◆◇
それからしばらく、順調に勉強会が続いた。
時計が十時半を回り、次第にお開きの空気が漂い始める。
「
「私……もうだめ」
「何か甘いもの、もってくるね」
「うぅ……ありがとう」
最後にみんなで甘いものを食べて、少しだけ雑談してから解散する予定だった。
リビングに向かうと、やはり
「勉強会はまだ続けられる予定ですか?」
「ううん、もうちょっとで終わると思う」
テーブルに置いていたトレイを取ろうとした時、ふわりと甘い香りが
「
「どうしたの?」
後ろから、
首筋に、甘い吐息がかかる。
「今日はずっと離れ離れでしたので……少し、恋しくなりました」
「……ッ……もうちょっとだから……待ってて」
「
その時、廊下から声がした。
「
振り返ると、
後ろから首元に巻き付いた
「あ……」
気まずい沈黙が、場を満たした。
何か言おうとした時、首筋に
一瞬の出来事だった。
首筋に絡みついていた
「では、お部屋まで運んで頂いてよろしいでしょうか」
「……」
何事もなかったかのように、淡々と言う
対して、