「なんか、今日の出席率悪すぎないっすか?」
不思議そうに言う
「
いつもは全員が参加するクラス全体の勉強会。
クラスの半分以上がさっさと帰ってしまっていた。
「空気も悪いっす……」
いつも主導権を握りたがる
小テストを配った後は、クラスに一切の興味を向けていない。
閑散とした教室には、空虚な義務感だけが漂っている。
「それに今日はクッキーないんすか? 腹減ったっす」
「黙ってろ、馬鹿」
「い、痛いっす」
毎日のようにクッキーを焼いていた
張り合うように何かしらのお菓子を作ってきていた
「……帰るか」
机のものを鞄に詰め込み、立ち上がる。
それを合図に、
「いくぞ」
廊下に出てから、小さく息をつく。
「はあ、だっる」
「で、どうするの?」
伸びをする
「後は適当に飯でも食いながらやろうぜ」
「賛成っす。やっぱり食べながらが一番っす」
「
放課後の校舎は、人の気配がない。
残ってるのはKクラスだけのようだった。
「……他に勉強会やってるクラスってないんだな」
「うちらは
クラス内の個々の格付けが、女子にとっては何より重要となる。
特に下位クラスの大半は首席クラスを目指す事など諦めているのだろう。
「実際のところ、首席クラスなんてなれるんすかね」
「可能性としてはゼロじゃない、と思うけどな」
認めたくなかったが、
特に
「もしも今回のトレードでAクラスから追加で五人補充されたら、クラスの約半分が上位クラスになる。しかも上位クラスに五人の役立たずを押し付けられるオマケ付きだろ」
「残れたら、の話だけどね」
「下位五人に入らない自信、ちゃんとある?」
「うちは本気出したら大丈夫だしぃ」
「私もやる時はやる女っすよ!」
白雪学園という名門にしては珍しく、派手な見た目をした面々。
勉強と遊びを両立でき、うまく立ち回れる証左でもある。
「まあ、一番ヤバいのは
「だろうねぇ」
どこの有力なグループにも入れなかった余りもののグループ。
「また雨降ってんのかよ」
昇降口で、思わずげんなりした声が飛び出した。
「一週間続くらしいよ」
「私の髪、湿気に弱いんだよなぁ」
「それで、どこ行くの?」
傘を差しながら、
◇◆◇
平日の中途半端な時間という事もあり、店には客が殆ど入っていなかった。
腰を下ろすと同時に、それぞれ自習の準備を始める。
「そういえばさ、
何の前触れもなく、
「何か分かったか?」
体育祭で徒手格闘の能力だけでなく、実銃の取り扱い経験を見せていた
Kクラスの生徒としては、どうも不自然だった。
「やっぱり訳ありだった。軍人の家系なんだけど、あいつの叔母がヤバめの反動主義で捕まってるみたい」
「……連座で信用スコアを失ったパターンか」
「地元じゃ有名で、中学時代から孤立してたんだって。本人もいまさら隠すつもりなさそう」
「邪魔だな。
「どうかな。そこら辺、
「そもそも、既に知っている可能性もあるか」
女子が男子のデータを閲覧できるように、男子もまた女子のデータを閲覧する権利を有する。
「知った上で一緒にいるなら、やっぱり使えないな」
「
「そう? 何だかんだ、十八家の
「知らないんすか? 十八家って意外とモテないらしいっすよ。面倒事ばかりっすからね」
「あー、それはちょっと分かるかも?」
「スコアで言うなら、
「……でも、
「そうなんすよね。コロニー入りしたのって
「純粋に相性が良さそうな人だけ選んでるんじゃないのぉ?」
「ドリンクバー4つでいい?」
「ポテトと唐揚げも欲しいっす。今の私には油が必要っす」
「オッケー。注文しとくねぇ」
端末を置いた
「最近の
「……何がだ」
「体育祭から、なーんか消極的だと思ってぇ」
「……」
図星だった。
「もしかして
「まさか」
「ふーん?」
「しっかりしてよ」
「……わかってるよ」
本調子じゃないのは、自分でもわかっていた。
誤魔化すように参考書を開き、視線を逸らす。
「ところで夏休みはどうするんすか?」
「あー、何もしないのはマズいよねぇ。遊びくらい誘ってもいいでしょ」
「どこにっすか?」
「それは知らなーい」
無策のまま夏休みに突入するのは、確かにマズかった。
「……旅行」
ぽつりと、呟く。
「旅行、誘ってみるか」
「……無理でしょ」
「もちろん泊まりじゃない。日帰りならどうだ?」
「んー、場所によると思うっすね」
「よし、
「えー、なんでぇ?」
「馬鹿な振りして勢いでいけ」
「ちょっと、それどういう意味ぃ?」
このまま
どこかで覚悟を決める必要がある。
「トレードが成立した場合、最大で五人も厄介なのがくるんだぞ。ここで攻めた方が良い」
「……当たって砕けろってことね」
参考書を閉じ、身を乗り出す。
「よし、作戦会議だ。この夏、絶対ヤるぞ」