「
放課後、帰り支度を始めた
「どうしたの?」
「その、夏休みのことで」
当初は七人いた
計画の変更があるのかもしれない、と思いながらも
「明日でもいいかな? 今日は予定があって」
「あ、もちろんです。私はいつでも大丈夫なので」
安堵した瞬間、背後から一色雫が声をかけてくる。
「
「う、うん」
深々と頭を下げる
とくに、
「あの……じゃあ行こうか」
「はい」
六月二十九日。
上機嫌な
誰を補助に選んだのか公にするつもりはなかったが、あの様子ではクラス中にバレているだろう。
遺伝子提供当日の独特の気まずい雰囲気に、
「最近は少し暑くなってきましたね」
対照的に、
どこか誇らしそうに
「そういえば、
年末年始すら、
常に傍にいるのが当たり前になっていて、これまで考えなかったことだった。
「休みを取り予備の補佐官と交代することも出来ますが、休みをとる補佐官は殆どおりません」
「
「命令されても私は
頑なな態度を見せる
「実際、休みを取らない補佐官が多いのでしょうね」
話している間に、駐車場に到着する。
後部座席に乗り込んだ後も、
「補佐官の任期は、
「卒業後も一緒に暮らす許可を
「まあ。素晴らしいことです。では、補佐官は辞められ、個人的な護衛官として雇われるという形になるのでしょうか」
「そうなると思います」
二人の会話を聞きながら、珍しいな、と
しかし、
「
「ううん、まだ何も考えてないよ。三年生になってからで良いかなって思ってるんだけど」
「もちろん、まだ早すぎる話になります。しかし、よければ
もちろん、と
「その場合、
「ご配慮、感謝いたします」
聞いているうちに、これがただの雑談ではないことを何となく察する。
まるで条件交渉のようだった。
恐らく
何も気づかなかった振りをして、窓の外で流れていく景色を眺める。
「もちろん、
何となく、台本がありそうだと思った。
すでに二人の間で決まった事を、
そう考えると、
「見えてきました」
三度目の遺伝子バンク。
見慣れた無機質な建屋が、前方に見えた。
「
不意に、
これまで聞いたことがない声だった。
「えっと、うん」
頷くと、おずおずと
気温のせいか、少しだけ汗ばんでいた。
いつも堂々としている
駐車場に停車したところで、手を繋いだまま一緒に車から降りる。
そのまま会話もなく、ロビーに向かった。
「
IDの照会が終わると、すぐに部屋に案内された。
無人の廊下を、
「終わったら呼び出しボタンを押してくださいね」
ホテルのような小部屋に到着すると、係員はすぐに去っていった。
「綺麗な場所ですね」
真っ先に
繋いだ手が強く握られ、奥のベッドに一緒に腰掛ける。
「……」
言葉を整理する間、
「色々と、聞きたいことがあるんだ」
言葉に迷った末、
「はい。私の答えられる範囲であれば」
すぐ近くで、
綺麗な顔だった。
ハーフアップにした黒い髪が、
白雪学園の自販機前で再会した時、一瞬見惚れたことを思い出した。
「
男子の入学先は、党によって決められる。
通常であれば、男子本人すらもどこの学校へ進学するのか事前に知る事は不可能だ。
しかし、十八家に連なる
「いえ、知りませんでした。私は元々、白雪の中等部に通っています。ですから、ここで再会したのは偶然でした」
ですが、と
「
「ズルい方法?」
問いかけると、
どうやら、方法は答えたくないようだった。
「
「そっか……あれは偶然だったんだ」
「お名前をうかがった時、とても驚きました。私の記憶の中の
クス、と笑う
「昔、仲良くなってからの
「そうだっけ……流石に今はちょっと恥ずかしくて呼べないけど」
「では、これからは
「うん、わかったよ……
ぎこちなく呼ぶと、
「もう一ついいかな?」
「はい、もちろん」
「ボクのお母さんがどんな人だったのか知ってる?」
「……どうして、そんなことを聞かれるのでしょうか?」
「小さい頃に会ってたのって、
「申し訳ありませんが、お母様に関する情報は一切開示できません。党の意向に反しており、男子であろうと処罰されます」
「会いにいくわけじゃないよ。ただ、どんな人だったのか知りたいだけなんだ」
「知れば、会いたくなるのが人情です。どうかお忘れください」
「そっか……ごめんね。無理言って」
素直に身を引いた
「
「うん。他意がないのは分かってるよ。大丈夫」
話を聞けなかったのは残念だったが、半分予想していたことでもあった。
それに、昔話をしたことで緊張も解けていた。
「えっと、じゃあシャワー浴びてくるね」
足を踏み出そうとした時、くい、と袖を掴まれた。
「あの……」
「あ、ごめん。先がいい?」
問いかけると
「そのですね」
「うん」
「はしたないのですが、もう我慢できなくて」
そう言って、
次の瞬間、腕を掴まれてベッドに引き寄せられた。
「
全身が柔らかい感触に包まれる。
すぐ近くに、
「とても可愛いです」
今まで聞いたことがない蕩けた声だった。
そして、
「よければ、今日だけは昔のように
荒い吐息が首筋にかかる。
睫毛すら見えるほどの距離で、爛々と光る黄金の瞳が