「なあ、
「
机の周りに集まる少女たちに、
「えっと……」
「ほら、
その間も、
「……一色さんも、いい加減にした方がいいと思うよ?」
「ええ、今日だけにします」
「
「本当ですか!
そのまま席の周りに集まる少女たちと代わる代わる会話していた時、担任の
それを合図に、
「
◇◆◇
「失礼いたします。
職員室の扉から、顔だけを覗かせて遠慮がちに声をかけた。
突然の男子の来訪に、何人かの教師が驚いたように顔を向ける。
すぐに事務机の狭い間を縫って、
「こちらへどうぞ。補佐官は外でお待ちください」
「あ、はい」
職員室の手前の小部屋に、
高級感のあるソファとローテーブルが並んだ応接間だった。
「あの、お話というのは……?」
「縁巡りの出席確認をしたいと思いまして。どのような行事か、ご存じですか?」
「えと、一年生の男子と他校の三年生の女子との交流会ですよね?」
「はい。もしも気に入った女子がいれば白雪に転校させることも可能です」
「交流先はどこなんですか?」
軽い質問のつもりだった。
しかし、奇妙な間が空いた。
「……まだ決まっていません」
「行事をやるかどうか、まだ未定ということですか?」
「縁巡りは必ず行います。しかし、交流先がまだ調整中で決まっていません。決まり次第、できるだけ早くお伝えします」
喉に何か詰まったような言い方だった。
「それで、ご出席の意思をお聞かせいただけますか」
「えっと、特に予定がなければ出席すると思います」
「必ず出席できますか?」
真剣な表情で、
妙な気迫があった。
「あの……たぶん」
「出席すると言って、当日休まれると非常に困ります。本当にやむを得ない場合をのぞき、どうか確約を」
「他校との関係や世間体があるのはボクも何となく理解しています。サボったりは絶対しないです」
「はい。何卒、よろしくお願いいたします」
縁巡りは、他校を巻き込む行事である。
白雪学園側が男子を出さないとなると、交流先も男子を出さないなどの対抗措置があるのだろう、と事情を推察する。
「縁巡りについてのお話は以上ですが、学校生活についていくつかお聞きしてもよろしいでしょうか」
「はい」
「学校でなにか困っていることはありませんか?」
「えっと、特にないです」
「教師や職員についてはどうですか? 性的な言葉や視線を向けられることはありませんか?」
「大丈夫です」
「施設や設備についての不満はありませんか? 学食をあまり利用されていないと聞きましたが、メニューの要望があれば伝えておきます」
学食はたしかに殆ど利用していなかった。
普段の学校生活をこまかく見られていることに内心、
「学食はおいしかったんですけど、クラス全員で移動することになるのがちょっと目立つかなと思って。不満があるわけじゃないです」
「その他、私生活で困っていることはありませんか? 例えば、補佐官の交換も学校側から処理することが可能です」
「特にないです」
「わかりました。お話は以上です」
最後に
廊下には補佐官の
「あ、
「どうしたの?」
「えっとね、その、ちょっとだけカフェテリア寄らない? 季節限定の白桃ワッフルが出てるんだって」
目を泳がせながら誘ってくる
頷こうとした時、廊下の向こうから
「ようやく見つけました、
「あ……」
途端、
「ごめんね、
「わかりました。じゃあ、また時間がある時にお相手してください!」
「うん、また空いてる時に声かけるね」
「はい!」
「じゃあ行こっか」
「……うん」
学内のカフェテリアに向け、並んで歩き出す。
「
ぽつりと零す
どう答えればいいのか、正解がわからない問いかけだった。
「ああいう髪型、
どうやら気になるようだった。
「私だとあんまり似合わないかもしれないけど、その、好みの髪型があったら言ってね。なんでも変えるから」
「
「ほ、ほんと?」
本心からの言葉だったが、どうやら正解を引いたようだった。
カフェテリアに到着すると、
カフェテリアには中等部の生徒が何人かいて、こそこそと
「
それまで影のように壁際に控えていた
「
「……念のためです」
それからすぐに、
「わ、おいしそうだね」
たっぷりのクリームと、ごろっとした果肉が生地からあふれそうになっている。
「ここを通るたび、気になってたんだ。当たりみたいで良かったぁ」
フォークで口に運ぶと、瑞々しい味わいが口の中に広がる。
「そういえば、先生に呼び出されたよね。なんの用事だったの?」
「えっと、縁巡りの出席確認だって」
他には補佐官の交換の確認などもあったが、近くに
「縁巡り……」
「そっか。女子にとっては三年生の行事だし、私はもう関係ないから忘れちゃってた」
「周りでまったく話題にならないし、ボクも正直、言われるまであまり意識してなかったよ」
「他校に行くんだよね?」
「詳細はまだ決まってないらしいんだけど、多分そうなると思う」
ワッフルを切り分けながら、
「他の四大共学って、どんなところなんだろうね。白雪みたいに立派な校舎なのかな」
「……
「そ、そんなんじゃないよ。ただちょっと、古いお城みたいな校舎だったら良いなと思って」
誤解を受けそうになって、
Kクラスは既に四十六人もいる。他校から更に女子を連れてくるわけにはいかない。
「もしかして
「えっと……どうかな? 年齢はあまり気にしないけど」
視界の端に
「それとも年下の方が好き? 一般的にはそっちのほうが多いらしいもんね」
「……うーん、年下の知り合いとかいないし、多分違うと思う」
「そうなんだ。どっちにしろ、三年生相手って年齢がちょっと離れてて話とかも合わなさそうだよね」
「
「うん。でも用事があったらいつでも声かけてね。調整できるから」
「夏の大会とかってあるの? もしあるんだったら応援とか行ってみたいけど」
何気なく口にした問いに、
しかし一瞬のできごとで、すぐに
「えっとね、男の子がくると目立っちゃうし、観戦してもあまり面白くないかも」
「うーん、そっか。
誤魔化すような