「
ベッドに二人で腰掛けてホラー映画を見ていたものの、いつの間にか
「こうやって、ずっとぎゅーってしたい」
映画から女性の絶叫が聞こえても、
「
「う、うん」
「怖かったら私にしがみついていいからね」
そう言いながら、
むにゅむにゅと柔らかいものに視界が包まれ、もはや
映画を見るためにあらかじめ明かりを消していたせいか、今日の
しかし、昼間から雰囲気に流されると良くない気がして、
「そういえば荷物がいっぱいみたいだけど、映画以外にも何か持ってきたの?」
「えっとね……色々な衣装を持ってきたんだ」
恥ずかしそうに
「その……
どうやら、話題選びに失敗したようだった。
「中学の制服もあるんだ。デザインが可愛くてちょっと有名だったから」
「中学の服ってまだ入るの?」
「……うん。ここ一年は、あまり身長が伸びなかったから」
その言い方に
「他に持ってきたものってあるの?」
「あ、ゲーム機も持ってきたよ。もしかしたら
「本当? ボクやりたい!」
懐かしいものに、
小学生時代は、友人たちを自宅に呼んでよく遊んだものだった。
「男の子もゲームやるんだね。じゃあ、今からやっちゃう?」
「うん」
「わ、懐かしい」
四人で遊べるカジュアルな格闘ゲームだった。
「昔、よくやってたよ」
「そうなの? 私も結構やってるほうだよ」
ふんす、と
「
◇◆◇
テーブルには、ラップをかけた冷めた料理。
チラりと時計を確認し、溜め息をつく。
夕食の時間を大幅に超えても、
強い苛立ちに突き動かされ、
足音を消して、
「……」
想定していた物音は聞こえない。
「
一瞬の沈黙。
「あ、もうこんな時間!」
中から慌てたような
そしてすぐ、中から扉が開いた。
「ごめんね、つい遊びすぎちゃった」
姿を見せた
衣服の乱れや、顔の紅潮などは見られない。
肩越しに部屋の中を確認しても、ベッドは綺麗なままだった。
「遊び、ですか?」
「うん。ちょっと……懐かしいゲームをやってて」
一歩踏み込んで部屋の中を覗くと、テレビの前で
目が合うと、
「ご、ごめんなさい。私が誘っちゃったから」
「……いえ。温め直せばいいだけですから」
「……ごゆっくり」
部屋の扉を閉めて、リビングに戻る。
それから、さきほどの光景についてぼんやりと考えごとをしながら、冷めた料理を順番に電子レンジに入れて温めていく。
そうしている間に、
「遅れてごめんなさい。なにか手伝うこと、ありますか?」
「……では、炊飯器からご飯をよそっていただけますか?」
「はい!」
その横で
「
「いま、おトイレに行ってます」
「そうですか」
「……
「そうなんですか? 結構やってたように感じました」
「過去にご友人と遊ばれていたことはありますが、ここ数年はまったくでした」
少なくとも、
だから、もう興味をなくしたのだと思っていた。
「……私はつまらない女です。長年、
「そ、そんなことは」
思えば、幼少期から
もっと早くに気づくべきだった。
「私はずっと……」
その時、廊下の奥から扉が閉まる音がした。
並べている間に、ちょうど
「ボクがすること、もうないかな?」
「
「あ、ありがとうございます」
三人分のコップにお茶を注ぎながら、考える。
私はずっと、同年代の子どもとの関係性を少し軽視していたのかもしれない、と。
◇◆◇
「じゃあまたね、
翌朝、
今回のお泊まりは大成功と言っていい結果だった。
昼は持ち込んだゲーム機で盛り上がり、夜は繁華街で買い込んだ衣装をふんだんに活用することができた。
「うん、またね」
玄関口で、
そして、その隣では補佐官の
「またのお越しをお待ちしております」
前回のお泊まりでは、かけられなかった言葉だった。
今まで少し冷たかった補佐官の態度が随分と軟化したように感じられ、コロニー内の人間関係も良い方向に転がりそうだった。
しかしただ一つだけ、気がかりな事が残っている。
「……お昼から、
「うん。あと一時間くらいで、ここに集合する予定だよ」
「その……気を付けてね。ほ、ほら、ちょっと見た目が怖いし……」
「
警戒心のなさそうな
「よ、夜はちゃんと鍵かけないとダメだよ?」
「うん。大丈夫」
「そ、それじゃあね。また連絡するね」
「また遊ぼうね」
不安で沈み込んだ心が、その一言で跳ね上がる。
「えへへ」
それから、エレベーターでホールに降りる。
「はあ。またお泊まりしちゃった」
にまにましながらマンションを出る。
朝日が眩しかった。
「今度はいつにしよっかな」
今日の手応えだと、週に一度は来ても問題ない気がした。
ふんふんと鼻歌を歌い出した時、知っている声が耳に届いた。
「
思わず足を止める。
マンションのすぐ近くのスロープに、一人の少女が座り込んでいた。
ストレートの黒い髪に、少し気怠そうな態度。
同じKクラスの
「……えっと……
「……おはよ」
沈黙が落ちた。
探るような視線が交錯した。
「……なに? もしかして泊まってたの?」
「う、うん」
「……ふーん」
「
「……ちょっと時間間違えて」
「そ、そっか」
嘘だと思った。
意図的に早く着いて、一人で
「……じゃあね」
「……ん」
それ以上話すこともなく、スロープの端に座り込んでいる
すると入れ替わるように
「……」
それを見た
早足でロビーに戻り、エレベーターを待っている
「……なに?」
「えっと、忘れ物」
怪訝そうに睨む
彼女を
「……ふーん」
「な、なにかな?」
「私って警戒されてるんだ?」
「……」
「おかげで、この行動が正しいんだって確信がもてたよ。ありがとね」
「……」
エレベーターが到着し、扉が開く。