「あれ?
それから、同じクラスの
「忘れ物?」
「う、うん。それに下で
言い訳するように
反対に、隣の
「ごめん、早く着きすぎちゃって。もしも迷惑だったら適当に近くで時間潰してくるけど」
「ううん、迷惑なんかじゃないよ。あがって」
廊下を進む間、後ろで
「なに? あんた忘れ物を取りにきたんじゃなかったの?」
「私、
「お茶用意するね」
「あ、お土産もってきたから、これ使ってよ」
受け取ると、高そうな紅茶とクッキーの袋が入っていた。
「もしかして、こっちのクッキーは手作り?」
「……この前、美味しいって言ってくれたから」
「ありがとう。実はちょっと期待してたんだ」
学期末試験に向けたクラスの勉強会で、
実家が洋菓子屋ということもあってか、彼女の作るクッキーはよく出来ている。
「こんなんで良いなら、いつでも作るけど」
準備を進めていると、
「そういえば
「えっと、お部屋の掃除をしてくれてるところ」
「あ……」
隣の
「
「……別に……頻繁に来てるわけじゃないから……」
「ふーん……」
クッキーをお皿に移すと、
それまで
「
「ジャム?」
「その紅茶に入れると美味しいんだ。ソ連で流行ってるらしいよ」
「そうなの?」
確かあったはず、と冷蔵庫を覗くと未開封のいちごジャムがあった。
「
「う、うん」
全員のティーカップにジャムを入れ、かき混ぜる。
すぐに良い香りが漂ってきた。
「わ、美味しそう」
「でしょ。私、これが好きなんだ」
反対に、隣で
「ソ、ソ連の文化なんて真似していいのかな」
「そんなこと言ったら、こういう紅茶自体が英帝の文化じゃん」
「そ、そうだけど……」
「飲みやすくて美味しいよ。倫理監察局もこんなことで怒らないんじゃないかな」
「そ、そうだよね」
それでようやく、
「そういえば倫理監察局で思い出したけど、あの
ポツリと
「多分、そうだと思う」
「なんかさ、嫌な感じだったよね。人で遊んでるっていうかさ」
まるでゲームみたいにさ、と
「あいつきっと、生徒同士を争わせて楽しんでるんだよ。それを見て、笑ってるんだ」
それには
そして、ふと気づく。
特別プログラムの責任者である地区担当官は、党の行政職である。その管轄は、白雪学園だけに留まらない。おそらく、縁巡りにも関わってくることになる。
「二学期もまた変なゲームだったら嫌だよね」
「……」
嫌な予感がした時、ドアチャイムが鳴った。
思考が現実に引き戻される。
「誰か来たみたい。見てくるね」
椅子から立ち上がり、とたとたと玄関に向かう。
扉を開けると、
「よお」
「こ、こ、こんにちは!」
落ち着いた様子の
「珍しい組み合わせだね」
「たまたま駅で会ったんだ」
どうぞ、と中に案内する。
「ここが
「まあ、男子の家なんて最初は緊張するよな」
前にも来たことがある
二人を連れてリビングに戻ると、
「来るの早くない?」
「お前のほうが早いじゃねえか。つーか、それより何で
途端、
「
代わりに
「ふうん。もしかして
「ううん、どうして?」
「いや……いないなら良い」
どこか安堵した様子を見せる
「椅子が足りないな。ソファ借りるからな」
「あ、では
その時、再びドアチャイムが鳴った。
「ちょっと見てくるね」
慌ただしく玄関扉に向かう。
扉を開けると、今度は
「
「せっかくだし、ゆっくりお茶でもしようよぉ」
ニコニコと笑みを浮かべていた
「なんか……靴が多くないっすか?」
「うっそぉ。私たち、もしかしてビリ?」
「うん。実は皆、もう来ちゃってて」
騒ぐ二人をリビングに案内する。
ソファの
「はあ。抜け駆けしようとする卑しい女ばっかりで嫌になるっす」
「お前もだろ」
二人が軽口を叩いている横で、
「それで、誰が一番最初に来たの?」
「……」
「ふーん。てっきり
「
「……うっさい」
「えー、お勧めしてるだけなのにぃ」
「それより、全員揃ったけどどうする?」
予定より三十分早いが、時間まで待つ意味もないように思えた。
「じゃあもう出発しようか」
「んー、私は賛成!」
「まあ、ここにいても仕方ねえか」
賑やかになったリビングで、居心地が悪そうに
「あの……じゃあ私は帰るね」
「うん」
そそくさと玄関に向かう
「帰り、気を付けてね」
座って靴を履き直す
それから、唇に柔らかい感触。
一瞬の出来事だった。
「……また来てもいい?」
「……うん、もちろん」
玄関扉が、音を立てて閉まる。
口の中で、ほのかに甘いジャムの味がした。
残された