「じゃあ、二番目に負けた人が勝った人の頭を撫でて!」
ゲームに勝った
「さすがに
「ううん。これくらいだったら大丈夫だよ」
そこに
「はい、時間切れ」
「ちょっと、
それに
「……」
次の手札を配りながら、ドームテント内の隅に立つ補佐官の
どうやら、
「はい! また私の勝ちぃ!」
大富豪は強いカードを二枚貰うというルールもあり、
「じゃあ次はねぇ、
「クソつまんないっす。クソゲーっす」
負け続けている
時計を見ると、九時を回っていた。
「……そろそろ風呂入って寝るか」
「えー! もっとやろうよぉ」
「
「
「やりすぎだ、馬鹿」
甘えた声を出す
「じゃあまた明日ね」
手を振る
ウッドデッキにはまだバーベキューの匂いが残っていて、空腹を刺激した。
「……なあ、
「まだ開いてるかな?」
「ああ、二十四時間使えるらしい」
喋りながら、暗がりの中を進んでいく。
道沿いに小さなポールライトが並んでいるだけで、遠くの山々は真っ暗だった。
「
「ううん。ああいうの、やったことなくて楽しかったよ」
薄明りの中、その表裏のない笑顔に
「……そうか。なら良かったよ」
管理棟には暇そうな中年の店員しかいなかった。
セルフサービスのソフトクリームとソフトドリンクを手に取ってから、
「
身体はほんの数センチの距離しか離れてなくて、今にも触れてしまいそうだった。
「別に……」
「今日もずっと、ちょっと一歩引いたところで全体を見ててくれたよね」
「まあ……私から言い出したから責任者みたいなもんだし……」
照れ隠しのように、ソフトクリームを頬張る。
夜の澄んだ空気が気持ちいい。
虫のさえずりが適度に届き、普段は気になってしまう沈黙も今は気にならなかった。
なんだか良い雰囲気だと思った。
「なあ、
「うん」
「毎月、一人までにお手付きを制限してるだろ。なんか理由あるのか」
普段だったら聞きづらいことでも、今なら雰囲気に任せて聞くことができた。
「……そうだね。一気に拡大すると多分、色々と良くないことがあると思うから」
それに、と
「コロニーが急拡大すると、本当は入るつもりがなかった人も焦って入っちゃうんじゃないかな」
「……まだ入ってないやつへの圧力になるってことか?」
「うん。結果的にそうなると思う。だから、ある程度お互い知った上で意思がはっきりしてる人だけにしようかなって」
その言葉に、
コロニーに入っていない女にまで配慮するというのは、聞いたことがない考え方だった。
「コロニーに入った後で思ってたのと違うってなってもお互い不幸だし。ゆっくりでいいと思うんだ」
「……言っとくけど、私は他のクラスに移動するつもりなんかないからな」
好意を明言するに等しい言葉。
声が震えなかったことに、
「そうなの? ありがとう」
気づいているのか気づいていないのか、
だから
「
それから、
「そろそろあいつらに変な勘繰りされるから戻らねえと。じゃあな」
「うん、また明日ね」
「ああ」
◇◆◇
「ああああああああああああああああ!」
帰るなり、
「どうしたのぉ?」
「……勢いで告白みたいなこと言っちまった」
枕に顔を埋めながら、
「しかも格好つけて、遺伝子提供はいらないとか言っちまった」
「うっわぁ。えっぐいエロ下着つけてるくせに」
「え、なんすか、エロ下着って。さすがに引くっす」
「てめえら殺すぞ、マジで」
ガバッと身を起こすと、
「元気出たじゃん」
「……うっせえ」
ぽすん、と再びベッドに倒れる。
身体の火照りを誤魔化すようにそのままゴロゴロと何度か転がると、ふと床に転がっている
「
「
寝転がって床に顔を近づけたまま、
確か、さっきまで
「キモ……」
そう言いながらも
「……なあ、
「はい、なんですか」
床に鼻をつけたまま
「さっきトランプをやってた時、Bクラスの男子は外面がいいって言ってたよな。あれってどういう意味だ?」
「まあ、見た目だけはいいですよ」
「他には?」
「
「内面はどうなんだ?」
「
それ以上はあまり答える気がなさそうだった。
「そうか。情報としては十分だ」
やはり使えそうだな、と考えた時、
「……なに? まさかクラス移動を視野に入れるつもり?」
「いや、そういう奴が出てくるだろうっていう予測だよ」
「
「それはまあ……」
「クラス内で全く動いてないグループがあるだろ?
「ああ……中くらいのグループっすね」
地方財閥の娘である
それでいて、
「ああいう中途半端な立ち位置のやつはな、自分はもっと上にいけると思ってるもんだ。それでいて、
「まあ、何となくわかるけど」
「Aクラスは最下位に落ちた。Cクラスの男子が情緒不安定なのは、食堂で全員が見てる。Dクラスはどう考えても見た目で劣る。
「それでぇ? 昼間も言ってたよねぇ。だから、積極的にBクラスの良い情報を流すんでしょぉ?」
黙って聞いていた
「
「急にやる気出てきたじゃん。最近ずっと腑抜けてたのに」
痛いところを突かれ、
体育祭の後の資材倉庫で
「そろそろ動かないとな。
「
「うるせえな。
やるべきことが明白になり、晴れ空のように爽やかな気持ちだった。
「どっちつかずのハエみたいな女は、私が片付けてやるよ」