「……さて、そろそろいいかな」
放課後の教室。
「
「はい」
副学級委員長を担う
「さて、それじゃあ記念すべき第一回目の学級会をはじめようか」
そう言って、
「まず、これから話す事は私からの通達です。協議ではありません」
よく通る声だった。
声質や話し方が他人に与える影響を、人の上に立つ者ほど熟知しているものだ。
「では、手短にいきましょう」
仮面のような微笑を浮かべ、
「土日に教室でちょっとした工事が行われますが、これを話題にすることを一切禁じます」
大半が困惑した様子を見せていて、状況を正しく理解している女子は殆どいないようだった。
「
スカートが短くなっている気がした。
へえ、と内心で感心する。そういう手もあるのか。
「
よく調べられている。情報源は一体どこだろう、といくつかの候補を推測する。
「私からの通達は以上です。続いて
数歩下がった
一段高くなった教壇からは、クラスメイトの表情がよく見える。
一部からは、敵意のようなものが感じられた。
「では、私からも手短に」
そう前置きして、
これから、多くの敵を作る事になる。
しかし、必要な事だった。
「まずは前提を明確にしておこう。
誰も、何も言わなかった。
ただの事実の確認。
そして、そこから導き出される答えを言い放つ。
「だから、君たちとは釣り合わない」
意外にも、反発はなかった。
「一年あれば、このクラスの順位は上位まで上がるだろう。そこの
そこで、と本題に切り込む。
「これはお願いなんだけど、二年目の順位変動後に君たちはクラス選択権を行使して出ていってくれないかな」
白雪学園では一年を通したクラス成績により、進級時にクラスの順位が変動する。
その際、個人成績とは無関係にクラス全員がそのまま移動する形になる。
一種の連帯責任を負う形となっていて、これはクラス内環境の極端な変動が起こり男子生徒がストレスを受けないための制度だった。
「どうせ、ここは元から最下位クラスだ。私たちがクラス順位を引き上げてあげるから、君たちは本来のKクラスより上のクラスで後の二年を過ごす、ということだ。悪い話でもないと思う」
そこで
何か言いたそうな顔。
悔しそうな顔。
諦めを含んだ顔。
様々な反応が見られたが、反論が出る事はなかった。
まだ3日目のKクラスには、
大派閥は人を屈服させるもっとも分かりやすい方法で、
「卒業時、首席クラスの男子は党員になる資格を得る。これは
そして、
「君たちはたまたま運が良かっただけだ。一年でも一緒に過ごせた幸運を噛み締めて出ていくといい」
「気に食わないな」
突然、鋭い声が響いた。
声の主は、廊下側の席でつまらなさそうな顔を浮かべる背が低い少女だった。
黒のボブカットに金色のメッシュが入っているのが印象的で、
「すまない、誰だったかな?」
「
強い意志を感じる赤い
「
不意に名指しされた
「それで?」
「無能かどうかをお前に一方的に決められる筋合いはないって言ってるんだ」
「確かに、私は元から君たちに期待していなくて、大した調査はしていない」
「だろうな」
「まあ、いいよ。足を引っ張らないならそれでいい」
「元々、強制できる話でもないしね。発破をかける意味もあった。精々、頑張ってくれ」
無駄口を叩かないところも好みだな、と考えながら
「私からの話は以上だ」
「わかりました。他に何か提案や言いたいことがある方は?」
「では、以上で第一回目の学級会を終わります」
◇◆◇
「時間は大丈夫なのかな?」
学級会を終えた後の教室で、
教室に他の姿はない。
廊下の外に見張りの
「はい。何かお話がありそうだったので」
「そうだね……まずは要請通り、迅速に学級会を開いてくれた事に感謝を」
「感謝は不要です。
「そう……」
沈黙が落ちた。
眼前の
最大の障害になるであろうこの少女を揺さぶってみたい、という誘惑が
「ところで、定員が埋まってしまったけどどうする? 君のお仲間は、もうねじ込めない」
「問題ありません。元より、そのような予定はありませんでした」
「へえ、それって強がりかな?」
「私は
「さすが、秩序の守護者様は違うね。君からすると、
「
本音が見えない
まあいいや、と
「交通事故の原因については知っているね?」
「ええ」
ここまでは想定通りの反応。
「じゃあ、ヴォイドの呼び声は知ってるかな?」
「いえ……」
どうやら本当のようだった。
「ふとした時に起きる、死への衝動の事だ。疾患ではない。つまり、医学的なアプローチでは治らない。互いに出来るだけ目を離さないようにしよう」
「……詳しいんですね」
「
肩を竦めてみせる。
「そうそう、彼の肩が上がらない事は正直知らなかった。どうやら、とても特別な情報源があるらしいね」
「……」
ようやく彼女の感情が動くところを見れた。
「私からは何も言わない。けれど、情報源については細心の注意を払った方が良い」
「はい。もちろんです」
どちらからともなく鞄を手に取る。
もう話す事はなかった。
そして、もっとも油断する瞬間だった。
「そういえば、随分とスカートが短くなったね」
会心の手応えに、