【書籍化】男女比が壊れた世界でギスギスする話(書籍タイトル:恋奪の教室) 作:月島しいる
「何かしたでしょ」
四日目には、約束通り
広間のテーブルを挟み、
「何かって?」
「急に
「そっか。もう伝わったんだね」
「
テーブルに置かれていた茶菓子を押し出すと、
その間に、ひよりが小声で言う。
「……ありがとう」
「ううん、もっと早く動くべきだった」
「別に……私の自業自得だから」
話している間に
微笑ましい光景に、思わず頬が緩んだ。
「美味しい? 全部食べていいよ」
「ちょっと。虫歯になるでしょ」
「そ、そっか。ごめん」
「
「……まあね」
「
「ちょっと!」
ひよりが慌てたように声を荒げる。
「いつも勉強教えてくれるけど……たまに怒ります」
「
どうやら姉妹の仲は良いらしい。
「
「うちのお母さん、結構な教育ママだから」
だからね、とひよりは
「私、最初は
「……うん」
「コロニーなんて、党員の数が物を言うでしょ。だから、首席クラスを目指すわけで。なんでKクラスの原住民なんかに優しくしてるんだろうって」
それがひよりの紛れもない本音なのだろう。
始国十八家の
「でも、特別プログラムでようやくわかった。あのAクラスが最下位に落ちたことも含めてね」
「……」
Aクラスがどのようなクラスだったのか、
どういう経緯で転げ落ちたのかも知る術はなかったが、信頼関係の構築に失敗したのだろう、と推測することはできた。
「あの地区担当官、倫理監察局の出身だったよね。私のやり方だったら、多分通じなかった」
その横では、
ひよりは呆れたように茶菓子を一つ渡してから、ぽつりと呟いた。
「これからは、
「思うところがあったら全然言って欲しいんだけど……」
「そう、じゃあ言い方を変える。余計なことはしない。これでどう?」
「うん。皆、仲良くしてね」
「……できるだけ努力する」
ひよりたちが出て言った後、さらに何組かの女性と雑談を繰り返し、夕方にはすべての予定が終わった。
広間を出たところで、声をかけられる。
「
廊下で待っていたのは、
◇◆◇
「
夕暮れの中、池にかけられた橋を渡りながら
「……
「謝る、とは?」
「……
「ああ……いえ、
「未練がないとは言いません。今でも
「……」
「大きな庭です。何故、これほど大きな庭があるか、ご存じですか?」
「……セキュリティのため、とか?」
「そうですね。敷地内には多くのセンサーが設置されており、侵入者が広大な敷地を横断して屋敷の内部に到達するまで時間を稼ぐことができます。反対に、屋敷から抜け出すことも難しい」
庭を進んでいくと、林が見えた。
古い木々のせいか、どれも
「あれらは
そこで
「どれも機能的な面がありますが、一番の理由は男性が気軽に出歩ける自由な空間を与えるためです」
「……」
「ですが、この屋敷には長く男性がいませんでした。
そして、
「
「
「申し訳ありません。本来、私が言うべき資格などないのですが……」
「ひよりのことも、気を配っていただきありがとうございました」
「うん……」
「
ところで、と
「ひよりを気にかけていたようなので、お手付きをすると思っていました。しなかった理由をお聞きしても?」
「
「なるほど。それは一理あります」
「では、七月の遺伝子提供はどなたに?」
「えっと……」
普段なら人に言わないことだったが、
「……
「少し堅物すぎるところがありますが……
「うん。それに、
「……男性もあちこちに気を遣って大変なのですね」
そして、
「
「え?」
「……そ、その、散歩に出かけたと聞いて、護衛として一応だな……」
「私が
「い、いや、そういうわけではなく、しかし念のために……」
「もういいですよ。では、邪魔者の私はここで失礼します」
後には、
「……」
「……」
遠くからカラスの鳴き声が響く。
それ以外の物音はなく、ひどく静かだった。
「あの……聞いてたと思うんだけど……」
「あ、ああ」
「遺伝子提供の補助、
静かに庭園灯が灯る。
真っ赤になった
少しの沈黙の後、
「も、もちろんだ」