どうしてこうなったのだろう。
Aクラスの学級委員長を務める
「以上、4名からクラス選択権を受理しました。先に抜けていた2名と合わせ、これでAクラスの人数は24人となります」
入学してから3日。
僅か3日で、Aクラスは崩壊しようとしていた。
「……行き先はどこですか?」
朝のホームルーム。
クラスメイトの注目が集まり、本来は動揺を隠すべき状況。
しかし、
「Kクラスです」
灰色がかった髪をきっちりとまとめた老教師は、憐れむような目を浮かべていた。
――おかしいと思ったのよ。
家格は高いが所詮は四女で、学級委員長は本来、
なのに、
――どうしてこんな事に。
異常は初日から始まっていた。
始国十八家の
聞けば、オリエンテーション前にクラス選択権を行使したという。
この時、
Kクラスの美少年に目が眩み、血迷った行動を取ったのだと都合よく解釈したのだった。
――秩序の守護者といっても、年頃の性欲には勝てないのね。
そんなことまで考えていたくらいだった。
白雪学園の初手の定石は様子見であり、特に詳しい調査はしなかった。
更に翌日――つまり昨日――
「喧嘩しちゃってね」
ホームルームで理由を聞くと、
胸がざわついた。
何かがおかしかった。
何かがあると言っているようなものだった。
しかし、すぐに各委員会の選出が始まり、
そして、更に奇妙な事が起こった。
学級委員長の立候補に、最有力候補の
副委員長にも、体育委員長にも、何にも手を挙げなかった。
「
大した女優だ、と思う。
しかし、何度見てもKクラスの男子の社会奉仕スコアは50点だけで、著しい社会性の欠如を示していた。
――男性を選ぶ場合はまず社会奉仕スコアを見なさい。顔で選んではダメよ。
母から口を酸っぱくして言われ続けてきた言葉。
男性の人格は、社会奉仕スコアが全てのはずだった。
女性への気遣い、社会への奉仕心、勤勉さ、その全てが数字に詰め込まれている。
社会奉仕スコアの低さは女性を毛嫌いし、社会への奉仕を放棄し、怠け癖がある事を意味する。
しかし、Bクラスからも
――さては、偽装診断ね。
男子を囲う為にお抱えの医者に偽の診断を出させて、スコアを低く装う行為。
監視が厳しい現代では殆ど見られなくなったが、そうとしか思えなかった。
――それにしても、
もっと調査が必要だと思った。
しかし、Aクラスの男子である
白雪学園での初動の定石は様子見であり、
それが、この状況を招いた。
「Kクラスはこれで定員に達しました。以降、クラス選択権を適用する事はできません」
何か、異常な事が起きている。
主席クラスの学級委員長という名誉ある役職が、今はまるで足枷のようだった。
「連絡は以上です。これでホームルームを終わります」
老教師は最後に
戸口が閉まる音を最後に、教室を重い沈黙が支配した。
「
低い声が、静かな教室に浸透するように響いた。
振り返ると、この非常事態にも関らず手元の資料を黙々と確認する男子、
「作り直しだ」
彼はゆっくりと立ち上がると、手に持っていた資料を
昨日、
ぱらぱらと落ちていく紙を呆然と見てから、
身長184cmのよく鍛えられた身体。女子の平均身長155cmのAクラスにおいて、威圧感すら感じる体格。
感情の籠らない
「……
喉がからからだった。
思考がうまくまとまらない。
「仮組で良い。先に一年分の再編を済ませ、妥当性を検討する」
「……一年分ですか?」
「他に優先したい作業があるなら提案を許す」
Kクラスの男子について調査したい、とは言えなかった。他クラスの男子に興味を見せるのはタブーだ。
「……いえ」
「週明けに進捗を報告し、懸念事項や問題点があれば洗い出せ」
言い終わると、
後には、全てが無駄になった体育祭の編成リストと嫌な静寂だけが残された。
「……」
顔をあげ、
彼は既にクラスの異常に興味をなくし、社会奉仕先のリストをノートパソコンで確認しているところだった。
まるで秩序合理性を体現したようなその姿に、
◇◆◇
「一体どういうこと?」
教室から一番離れた女子トイレで、
「わ、私たちも何がなんだか……」
「私は表立って動けない。Kクラスについて調査しなさい」
「ちょ、調査といっても……な、何を?」
彼女たちの態度に、光は苛立ちを抑えられなかった。
「まずはKクラスに選択権を行使した人をリストアップして。それと偽装診断の可能性について調査を。偽装診断なら密告して必ず突き出してやるわ」
「で、では、診断を出した病院の履歴を探して洗います」
「リ、リストアップと言っても、選択権を使った人は公にされてなくて」
「足を使えば分かるでしょッ! 急ぎなさい」
Aクラスとは思えない体たらくに、思わず溜め息が出る。
「……
入学からまだ三日。
どっちかがこれを仕組み、もう一人は後から気づいて便乗したと考えるべきだろう。
コケにされたという思いと、一人残された惨めさに怒りが収まらない。
Aクラスをここまで崩壊させたのだから、ただで済ますつもりはなかった。
そして、Kクラスの美少年の顔を思い出す。社会奉仕スコアさえ問題なければ、きっと
そもそも、偽装診断さえなければ
つまり、これは不当な行為による結果だった。
怒りの感情が際限なく膨らんでいく。
――許せない。
男性の不当な独占は、
「必ず処刑台に送ってやる」