【書籍化】男女比が壊れた世界でギスギスする話(書籍タイトル:恋奪の教室) 作:月島しいる
海で二時間ほど遊んだ後、
あとはホテルに帰って休憩する予定である。
更衣室を出ると、戸口で見張りに立っていた
「海はどうでしたか、
「知識としては知ってたけど、海水って思ったよりしょっぱいんだね。びっくりしちゃった」
それから、周りを見る。
「みんなは?」
「まだ着替え中のようです。あちらは少し……混んでおりますので」
「あ、そっか。もうちょっとかかるかな」
簡易シャワーの数も限られているため、順番待ちが発生しているのだろう。
「
緊急時に備えて
「
「うーん……そういうものなの?」
「はい、そういうものです」
話している間に、
何故か着替えず、パーカーを羽織ってるだけだった。
「思ったより混んでたから、ホテルに戻ってから着替えることにした」
「そっか」
「他の奴らはもっと時間がかかると思う」
そう言って、
それから、
「疲れてないか? 休んだほうがいい」
「そうだね。思ったより時間かかりそうだし」
先ほどまで
「その……よければホテルまでオレが背負っていくが」
「と、特別プログラムの時はちょっとヘバっちゃったけど、普段からそんなに体力ないわけじゃないよ」
「そうか? 結構連れ回されているように見えたが」
無人の砂浜から、強い潮風が吹き付ける。
強い磯の匂いがした。
少しの沈黙の後、
「白雪と言えばクラス階級制度だろう。だからもっと、殺伐としてると思ってた。祖母から聞いた話とは少し違ったな」
確か、体育祭でヘマをしたという話をしていたと記憶している。
「リレーで転んだっていう話かな?」
「なんだ。そんな話まで聞いたのか」
「祖母はそれからクラスで孤立して、逃げるために貴重なクラス選択権を使ったらしい。祖母にとってそれは過ぎた過去の笑い話だったが、オレにとってはそうじゃなかった」
「だから紅葉院に?」
ああ、と
視線は、遠い水平線に向けられていた。
「白雪では、好きな下位クラスに移動ができる。これはつまり、女側に男子を選ぶ権利があるということだ。しかし、男子側が受け入れてくれるかは分からない。結果を出せなければ終わりだ」
クラス階級制度の根元にある設計思想は、恐らく
女子は優秀であれば、すべてのクラスから好きな所を選べる。
男子はどちらかというと、競争原理を働かせるための景品という立場にある。
女は社会を動かす歯車であり、男はそれを回すための機械油である、という古くからの社会通念によって成り立っている。
「紅葉院は逆だ。男子が女を指名していく。学年の男子一人に気に入られれば安泰で、指名されればコロニーにもそのまま入りやすい。本質的にクラス編成の責任は男子にあり、女は指名を待ってるだけでいいから責任もない。正直、白雪よりずっと気楽だと思った」
そこで、自嘲するように
「まあ、オレは誰にも指名されなかったわけだが」
責任がないということは、やれることが少ないということでもある。
少なくとも
紅葉院の指名制というシステムは、思ったほど女子に優しくないのかもしれない。
「責任の所在、というのは大きい。紅葉院では少なくとも、クラスで何かあれば男子の顔に泥を塗ることになるからな。でも、白雪は違う。ただの能力によって振り分けられたクラスで、わざわざ仲良くする必要もない。だから潰し合いが激しいと聞いていて、それも嫌だったんだ」
「……」
男子の学校の割り当ては、党によって決定される。
自分で選んだ進学先でもないため、
知っていれば、もっとうまく対処できたかもしれない、と思う。
「だから、こうしてクラスの半数で海に来てるなんて、正直驚いたよ。おかげで白雪への転入が楽しみになった」
「今日のは、
「それでもだ」
そこで、
振り返ると、
白いワンピースで、いかにも良家のお嬢様といった格好だった。
「申し訳ありません。少々混んでおりました。他の者ももう少しで戻ってくると思います」
「ゆっくりで大丈夫だよ」
「
「はい、何年ぶりでしょうか。最後にお会いしたのはもしかして、小学生の時かもしれませんね」
「これも何かの縁だろう。よろしく頼む」
懐かしそうに笑う
短い談笑をしている内に、すぐに背後から
「おや、
「まさか。ただご挨拶をしていただけです。ご自身がそうだからと言って、他の者にも疑いを向けるのはよくありませんよ」
その様子を眺めながら、
夕食まで少し時間がある。
十八家同士、親睦を深める良い機会だった。
「この後、皆でトランプでもしない? 丁度四人だし」
それから
そして、
「いや、オレは少し……用事……そう、用事があって」
しどろもどろな
「実は
「申し訳ありません。
どうやら、この三人で何かするらしかった。
「そ、そう。また今度誘うね」
「はい! 寝る前などにまたお誘いください!」
そこでぞろぞろと、女子更衣室のほうからクラスメイトたちがやってきた。
先頭には
「点呼もちゃんと取って、全員が揃ってるのを確認したのだよ。この
「……ガキじゃねえんだから」
「
「せ、責任者として当然なのだよ。さあ、ホテルまでついてくるのだよ」
颯爽と歩き出す
その中で、
「
「えっと……わ、私ちょっと用事が……」
何だか見覚えのある反応だった。
(コロニーの皆で何かするのかな)
コロニーの親睦会か何かがあるならば
ちょっとした愚痴だってあるだろう。
悩んだ末に、