……今宵も幻想郷は美しい。
それは今も昔も変わらない普遍の常識。悪と欲にまみれた外の世界があるからこそこの世界はより輝く。
春のつぼみも、夏の月夜も、秋の山も、冬の寒さだってその全てが美しい。私は…その全てを愛している。仮にどんな異変が起ころうとも、その出来事がこれからの幻想郷を輝かせるのだから。
だけど…これから話す異変は、そんなこと言ってる暇なんてないほど過酷なものだ。
『だからあなたには―――この未来を――――』
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私の名は
この幻想郷にすむどこにでもいる妖怪だ。大妖怪ってほど歳をとってはいないが、それなりの力はある。名前持ちの妖精程度なら簡単に追い払えるし、かの博麗の巫女にだって挑戦できる(したことは無い)
ただ、自分がなんの妖怪かって言われると分からない。目覚めた時には私は存在していたし、まーそんなこと気にしても仕方ないというか…
とにかく、私は気楽に日々を謳歌しています。今だって、何気ない森の中を特に理由もなく気ままに進んでいるのだ。
「この世に生まれたからには
私は目の前にある異物に気がついた。森の中に…いや、幻想郷にあるはずのない外の世界の異物。それは真っ黒な球体であり、とても硬い素材でできている。気になるが…使い方が分からん。
ガチャガチャとその異物を回したり軽く叩いたりするも、反応は無い
仕方ない。餅は餅屋ってことで――
『それーーーーさいーーーー』
「ん???」
どこからか途切れ途切れの声が聞こえてきた気がする
耳を済ましてよーく聞いてみると、確かに声がしていた。森全体に木霊する悲しそうな声。それの声は『それ……な…さい』といった感じで理解はできそうになかった。
亡霊かと恐怖した私は、すぐさま香霖堂に向かった。
外観はまぁ相変わらずの荒れ具合。ここの店主は好きな物を飾っておく(?)趣味が多彩なようだ
チリンチリンと扉につけられた鈴が心地よい音を鳴らすのは良いが、目に入ってくるのは無造作に置かれた奇物。店主はいないのかと文句をつけてやろうと思ったら、すぐに出てきた
眼鏡をかけた銀髪の青年。身長は私よりも高い…
「誰かと思えばあんただったか」
「ええそうよ。私よ。文句でもあるわけ?」
「文句はないが…今日はどんなゴミを持ってきたんだ?錆びたネジか?それとも割れたガラスか?」
香霖堂の店主、森近霖之助は私のことをゴミ拾いの妖怪だと茶化す。私は再利用できる物資を提供しているだけなのだが、なぜかゴミ扱いされてしまう…どんな物資でも未来はある。そう思っているのだけれど…
いやいや、今日はそんな話じゃなくて、この板のとこだ
「コホン。今日は面白いものを拾ってね。君に見てもらいたいんだ」
「ほう…面白いものね…また7つ葉のクローバー見つけたとかそういうのは――」
私が板を渡すと同時に店主は目を見開き、ジロジロとその球体を観察する
その様子からして相当に珍しいものを見つけてしまったのだろう。
彼の能力は、簡単に言えは物を判別する能力。使い方や役割までバッチリだ
数分ほど店主はこれは…ほほぉ…などの独り言を呟いていたが、ようやく我に返り、コホンと一息吐いてからその球体について話し始める
「昨夜、星が降り注いだのは覚えているか?」
「んー覚えてない」
「幻想郷の夜空に数百の星が降り注いだのに覚えていないのか?これはその星が地表に落ちた1つらしい。なんでも、願いを込めるとその願いが叶う代物だ。ただこの玉は…」
「え!ほんとに!じゃあ――――」
ばっと店主からものを奪い、私は天に掲げて願いを込めた
「私に力をください!……」
「…………」
反応は無い。
黒い玉は光を反射して少し煌めくだけ。
願いが叶うなんて嘘だったのだろう。また私を茶化したのか
そう思いながら店主を見ると、僕は騙していないよと笑顔を見せていた
もっと詳しく話を聞いてみると、この玉は使用済みだそうで、使っても意味が無いのだとか…それなら早く言って欲しいものだ
「使用済みならイラネ」
「時間が経てばまた使えるようになるかもね?取っておいて損は無いと思うけど」
「そういうものなのかねぇ…とにかくありがとう。また来るよ」
「あぁ。今度はゴミは持ってこないでくれ」
ゴミじゃないし。
チリンチリンと香霖堂の扉は音を立てて閉まる。再び来る時は、再生可能物資を沢山持っていこう。
さて…この後どうしようか。日が落ちるまでは時間がある。どこかで時間つぶしでもと頭の中でぐるぐると考えると、1つ思い出したことがあった
そういえば本屋で借りた本を返さなければ行けないのだったと。私は願いが叶うという玉を懐にしまい、現在自宅としている場所へと向かうのであった。
――――――
――――
――
「ええと本は…っと…」
机の上に広がった本を片付けながら目当ての本を見つける
幻想郷縁起。これは幻想郷に関する事が記されている本である。私も妖怪ならばこの本にヒントでも隠されていないかと思ったのだが、結果として何も成果は得られなかった
私って何者なのだろうか。もしかしてすっごい大妖怪だったり?!
…まぁ、この本に書かれていない以上、それはないか
本を手にして人里へと足を向かわせる。
私は妖怪ではあるものの、容姿は人に近い。人間を食うこともないから、たまに人里でお仕事することもある。妖怪と人は馴れ合ってはならないのだが、私みたいなのは例外らしい。寺子屋の先生も半妖だしね
「まいどー」
本屋の暖簾を手ではけて声を出す。
本屋の店主は小さな少女「本居小鈴」。彼女は小さいながらも数多い知識を持ち合わせており、人だけでなく妖怪にも詳しい謎の少女なのだ
「いらっしゃい。貸してた本の返却でしょ?」
「そそ。ためになりました」
「思ってもないこと言わないでねー。それで、自分がなんの妖怪かわかった?」
私は首を横に振る
なにも自分に関することは分からなかったが、ただ1つわかることがある。
それは私はその本に記されていない妖怪だということだ!
と胸を張って小鈴に話すと、はぁと呆れられた声を出され、本を戻すために本棚へと歩いていく
「この本は幻想郷の全てを書いてある本よ。それに書かれていないってことは、あなた…極めて特殊な出なんじゃない?」
「特殊な出ねぇ…あ、話変わるんだけどさ、昨夜星が降り注いだらしいじゃん?その落ちた星と見られる物ひろったんだよね」
「へぇ…誓願の星玉。実在したんだ」
すでに知っていたのか。だがなぜか詳しく知ってそうだと、小鈴(に問うと、小鈴はそのことに対して詳しく書かれた本を取り出してきた
『星落の願い星』
それは童話のようなタッチで描かれた本で、私たちは顔を並べてその本をめくった
自由気ままに書いていきます。
タグにもある通り、キャラが〇にます。それも容赦なく
異変だーなんて生易しい話じゃありません。これは事件です。
それも含めて楽しめる方は、どうぞ次のページをめくってくださいな