あの武器人間はだれだ 〜あれはDevilGun〜 作:すぱーくしーど
行き先もよく分かっていないけれど、ひたすらまっすぐ歩いた。ふと、横を見てみるとガラスケースに自分らしき姿が反射して映っていた。
性別は男。黒髪、後頭部で髪を縛って上げている。顔は……悪くないと思う。身長は170後半、いや180前半だろうか。身体はスラッとしているが、筋肉もちゃんと付いている。うん、良いのではないのだろうか。黒のズボンを履いていることから、元はサラリーマンか何かだったのかもしれない……。今考えてもどうしようも無いことだ、やめておこう。
歩き続けて気がついたが、ここら一帯は何か災害にでもあったのだろう。見渡しても瓦礫の山ばかりだ。たくさんの人が一心不乱に復興作業を行なっている。俺も、自分自身が何者か思い出せたら、手伝うのも悪くない。この地で目醒めたのだし、何かしら縁があるのかもしれない。
しかし、自分の名前も分からないと、今後他者と関わる時に面倒、大変かもしれない。仮名でもいいから考えておく。うーん……、パッと思いつかない。瓦礫の山から何かヒントになりそうなものは……。周りをキョロキョロと見回していると、「雷神THORの伝説」という題名の本を見つけた。既にあちこちボロボロで中身は全て見ることが出来ないだろうが、この題名からちょちょいと拝借して、「トール・A・ライガン」と自分の名を仮決定させてもらった。
名前(仮)も決まったし、ちょっと気分が良い。このボロボロの街も、応援してくれてる様な気がする。あくまで気がするだけ。
まず、自分の事を知るというよりも今いるこの場所について知ったほうが早い気がしてきた。俺というこの一個人を知る者より、この街について知っている人間のほうが多いと思ったんだ。図書館など、無事に残っているだろうか。この状況の街では期待薄かもしれないが……。
図書館を探すという目標を決めてからは、この街をただ歩いていただけの時より、不思議と歩くスピードが速くなっていた。目標のために行動するってのは案外悪くないものだ。きっと昔の俺も、何か目標を決めて行動していたのかもしれない。なんて考えていると、周囲がザワつきはじめた。何が起きているのか分からなかったが、次第に破壊音と悲鳴が近づいてくる。
[ニゲルナ!ニンゲン!血ヲ、肉ヲ喰ワセロ!]
「キャー!!!」
「あれ、悪魔じゃね!?ヤバイヤバイ」
「おいおい、デビルハンターはどこにいるんだよ!」
周囲の人間は慌てて逃げ出している。悪魔に怯え、デビルハンターを探し求めているようだ。合わせて、俺も逃げようとするが、ふと心臓のあたりに熱を感じたので立ちどまった。よく分からないが、記憶が無い俺に何か出来ることでもあるのだろうか。
胸に手を当てると、カツンと金属音が聞こえたので、よく見てみると銃のグリップが身体から生えていた。とんでも無い物が俺の身体に生えていると驚いたが、これは取れるものではないと本能的に理解したので、そこまで慌てはしなかった。
このグリップを見てから頭の中で声が聞こえる、そんな気がする。
撃て、引け、トリガーを、撃ち抜け、敵を、定めろ、狙いを……
頭がどうにかしてしまいそうだ。俺はこの頭の声を止めるために、グリップを握り、トリガーへ指を掛ける。不思議と恐怖はあまり無かった。
トリガーを引くと、心臓が撃ち抜かれ、頭から何かが飛び出す感触が、そして「BANG!」と、銃声が鳴り響いた。