第1話 左遷先はトラック泊地!?
「異動…ですか?」
勤務中に人事局に呼び出されたと思ったら、いきなり異動辞令を突き付けられた
「そうです。桐生少佐は異動です」
辞令書を渡され、仕事の邪魔だと言わんばかりの勢いで人事局を追い出された
仕方なく廊下で辞令書に目を通す
俺は膝から崩れ落ちた
それから3週間後
栄光の大本営から最前線の僻地泊地 トラック泊地に降り立っていた
深海棲艦と戦争中の今、艦娘を指揮する提督という役職に就けることは栄転と言われるが…
艦娘が1人も配備されていない最前線基地への異動など、左遷以外のなんでもない
おまけに泊地と呼ばれているが、護岸も無い砂浜とジャングル
そして、木々の隙間から白い建物が見える
「どうすりゃいいんだよ」
後ろを振り返れば、俺をここまで連れて来た2式大艇が飛び立っていく
汗が額を流れ、砂浜に落ちる
俺は仕方がないと荷物を持ち、見えている建物へ向かった
「これがトラック泊地本館か」
思わず笑いが込み上げてくる
遠くから見た時はそれなりの建物だと思っていたが、目の前で見たら建売住宅2棟分の大きさしかない
「それでもマシな方か…」
そう呟いて視線を送った先には完成間際で放棄されたと思われる宿舎があった
「当分はこっちで寝泊まりかな」
鞄から預かってきた鍵を取り出し、解錠して建物へ足を踏み入れる
不愉快な蒸し暑さを除けば、堅牢でしっかりした作りの本館
案内をしてくれる人も居ないので、執務室を探して歩き回る
「ここか」
執務室は2階にあった
扉を開け、中に入るがもぬけの殻で椅子ひとつ無い
それも当然か
ここは建設途中に深海棲艦の一大侵攻があり、作業員が全員逃げ出したのだから
「はぁぁぁ…」
荷物を床に置いて盛大なため息をつく
その時、背後から声をかけられる
「あなたがここのていとくさんですか?」
驚いて振り返ってみれば、妖精さんが立っていた
「うぉ!?って妖精さんか…びっくりさせないでくれよ」
俺はしゃがんで視線を下げる(それでも視線は全然下だが)
「本日着任した桐生 遼司《りょうじ》だ。階級は少佐。これからよろしく」
そう挨拶をしたら妖精さんはビシッと敬礼をしてきた
なので俺も立ち上がり答礼を返す
すると妖精さんは目を輝かせる
「ほかのていとくさんはそんなことしてくれません!わたしはあなたがきにいりました!こちらへきてください!」
そう言って部屋を出ていく
訳が分からないが、取り敢えず着いて行くことにした
妖精さんに着いて行くと、本館を出て裏に回り込んだ
そこにはトタンで作られた建物が建っていた
「ここは?」
「こうしょうです。けんぞうやかいはつをおこないます」
妖精さんは壁をすり抜け中へ入っていった
俺はポケットから鍵を取り出し、解錠して中へ入る
中は真っ暗で、扉を閉めると目の前も見えなくなった
「ようこそわがはくちへ!」
その声と共に天井の電気が一斉に点灯する
眩しさに顔を背ける
目が慣れてきたところで顔を上げると、そこには大勢の妖精さんが整列していた
「こ、こんなに居たのか?」
「はい。わたしたちは1にしてぜん。ぜんにして1なのです」
答えになってない回答をしてきたが、妖精さんについてはよく分かっていない
俺は曖昧な笑顔を浮かべて、改めて自己紹介をする
「改めて、本日付で当泊地に着任した桐生 遼司だ。階級は少佐。よろしく」
挨拶を終えると妖精さんたちは敬礼をしてくる
俺も答礼を返すと、皆顔を輝かした
「みんなもきにいってくれたみたいです。ところでていとくさん。わたしたちからのおいわいとして、にかいのけんぞうとひつようなきざいなどをプレゼントしたいのですが」
「良いのか!?すごく助かる!」
妖精さんからの提案に俺は心から喜んだ
ここには家具どころか無線装置も宿舎も無い
おまけに艦娘も居ないのだ
極めつけは建造や開発をする資材もない
それを無償でくれると言うのに喜ばないやつなど居るのだろうか?
俺の言葉を聞いた妖精さんたちは不敵に笑うと言った
「じゃあさっそくけんぞうしましょう」