左遷提督は今日も元気です   作:僻地勤務の兵士

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第12話 トラック泊地東西冷戦

「ふぅ⋯何とか上手くいったな」

 

ピーターとの交信を終え、椅子に深く座り込む

 

「けど、今のままじゃ同じことがまた必ず起こるぞ。大塚さんに何とかしてもらおう」

 

そんな事を口にしながら、天井を仰ぎ見ているとウォルトが入室してきた

 

「提督。建造が終わって皆さんを連れてきました」

 

「ありがとうウォルト。遠征で疲れてるだろ、あとは任せて休んでくれ」

 

「提督、ピーターたちは」

 

ウォルトは少し顔を強ばらえている

 

「あぁ皆無事だよ。状況は終了して、今は帰還中」

 

無事という言葉にウォルトは胸を撫で下ろし、休みますと言って下がって行った

 

「さて、それじゃあ執務室へ行こうか」

 

 

執務室へ移動してきた

 

「えっと、自己紹介お願いできるかな?」

 

俺は最初に軍帽を被った少女へ目をやった

 

「名を刻め同志。私はアドミラル・トリブツ。北方艦隊に所属し氷海を割って進む重巡、祖国の誇りを今に受け継ぐものだ!」

 

そう言って腰に手を当てて胸を張る

あぁなんかヤバそう...

その次はトリブツの横に立っている、白髪の少女が口を開いた

 

「私は潜水艦 モスクワ。静かな海を制する艦隊の影、敵が気づく頃にはもうその痕跡すら残ってないわ」

 

物静かだなぁ

でも、なんか2人からは似たようなものを感じる...

それにモスクワか...ロシア艦ってことか?

 

「私はアーレイ・バーク。アメリカ海軍の駆逐艦よ!嵐の中でも怯まない、それが私の流儀。防空、対潜、護衛に攻撃、何でもこなせる万能艦。仲間を守るためなら、どんな弾幕でも突っ込むわ!覚えておきなさい、私は艦隊の矛と盾よ!」

 

こっちは元気だな

モスクワの挨拶に被せて来たし

 

「いいかしら?私は くにさき。前線の影を駆けて、必要な物資と仲間を運ぶのが誇り。さっきの子に聞いたけど、姉さんもここに居るんでしょ?姉妹で前線を支えるわ」

 

この子は おおすみ の姉妹艦か

姉妹揃って勝気な性格してるなぁ

けど、これで輸送に関しては休暇が回せるし、その護衛や任務に関しても大丈夫そうだな

俺はこれからの予定を頭で軽く計算していると

 

「提督〜!ピーター帰還しましたよ!」

 

と、元気にピーターが入室してきた

……と思ったらなんだ?部屋の気温が一気に下がったぞ

 

「ひぇ...ピーターソン...な、なんでお前がここに」

 

モスクワがトリブツの背後に隠れ、トリブツとピーターが睨み合いだした

 

「これは誰かと思ったら。資本主義の犬のピーターソンじゃないか。久しぶりだな」

 

「これはこれは。丁寧な挨拶ありがとう。ソ連は崩壊したのに縋り付く亡霊さん?」

 

「なんだと!!」

 

「何よ!!」

 

俺は慌てて執務室内で取っ組み合いを始めそうな雰囲気の2人の間に割って入る

 

「待て待て!喧嘩は止めろ。一体どうしたんだピーター?」

 

そう聞くと、ピーターはトリブツに向けていた顔からいつもの顔に戻る

 

「すみません提督。ただ、この人達は宿敵なんです」

 

宿敵?

いやまぁ確かに?深海棲艦が現れる前はこの世界でもアメリカとロシアは友好って関係じゃなかったけど

 

「お前たちの世界じゃどうなってんだよ」

 

「それには僕が答えようかな」

 

声のした方を全員が向くと、キティが扉にもたれていた

 

 

「なるほどな。二次大戦の後に冷戦が勃発。そこでのピーターの主な任務が潜水艦の監視でモスクワを追い回していたと...で、トリブツも同じ任務をしていたから互いに牽制しあってたんだな」

 

キティによって二次大戦以降の歴史を教えて貰った俺は、今もそっぽを向くピーターとトリブツの2人に向き直る

 

「まぁ理由はどうあれ、今の敵は深海棲艦なんだ。何とか上手くやってくれないか?」

 

その言葉にピーターは

 

「提督が言うなら…善処します」

 

と、言ってくれた

しかしその様子を見ていたトリブツが何かを得たような顔をする

 

「なるほど...貴様の先程からの同志への態度。そういう事か」

 

なんの事か俺にはさっぱり分からんが、ピーターは顔を赤くしてトリブツに噛み付いている

ギャーギャーと言い合いを続ける2人を見ていると、なんだかんだ仲良いなと思ってしまうのは俺だけじゃないだろう

 

「そこまでにしないか2人とも。取り敢えず、新たな仲間も増えたことだ。帰還したピーターたちは休んでくれ。トリブツ、モスクワ、アーレイ・バーク、くにさき も明日に備えて今日は休め」

 

トリブツとピーターのケンカに蚊帳の外だった3人にも声をかけて下がらせる

執務室の扉が閉まり、1人残された俺は再び聞こえてきたピーターとトリブツの言い争う声と、それをなだめるキティとモスクワの声に思わず苦笑いが込み上げてくる

そんな賑やかな声を聞きながら、俺は天井を見上げた

 

「それにしても...艦娘も増えてきて任務の幅も広がれば、今回ピーターたちが陥った状況になる可能性は高いどころか、今度は本格的な戦闘だろうな」

 

別にピーターたちの心配をしている訳じゃない

心配なのは相手の艦娘だ

その気になれば、ピーター1人でも艦隊は壊滅させられる

けど、戦う相手は深海棲艦で仲間内で揉めている場合じゃない

俺は机の上の受話器に手を伸ばすと、ダイアルを回す

 

「もしもし、トラック泊地の桐生です。至急お伝えしたいことが」

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