「まだですかね〜?」
ピーターが青空を仰ぎ見る
「そろそろだと思うけどな」
俺は腕時計を確認し、制帽を被り直した
俺達は今、妖精さんの勝手な!拡張工事で完成した護岸の縁である人物の到着を待っていた
「それにしても急に来るなんて。どこの国も上の人は勝手ですね」
ピーターはしゃがみこみ、護岸下のサンゴ礁とカラフルな熱帯魚を目で追っていた
「仕方ないさ。忙しい中、時間を作って来てくれる訳だからな」
そんなこんなしていると、滑走路から2機のFー15が離陸して行った
司令室のモスクワに確認すると、どうやら待ち人の乗った機体をエスコートする為に飛び立ったようだ
「久しぶりだな桐生」
二式大艇から降りてきた大塚少将は、そう言うとタバコに火をつけた
「今回は忙しい中、ご足労して頂いて助かります」
「なに、1度は行かなきゃなと思ってたんだ。いい機会だよ...それより」
大塚はぐるりと辺りを見回す
「エスコート機もそうだったが、本土の鎮守府より充実した設備じゃねぇか」
そう言って興味深々といった様子だ
「後でご案内しますから」
俺は笑いをこらえながそう言うと、顔に似合わず少年のような笑顔を浮かべる大塚
その視線は俺の横へ移る
「それでそちらが?」
「初めまして。トラック泊地で旗艦を務めています、アメリカ海軍駆逐艦 ピーターソンです」
視線を向けられたピーターは、直立不動の姿勢で敬礼をする
普段の彼女からは見られない真面目な雰囲気に、俺は思わず見惚れる
「桐生から話は聞いてるよ。俺は日本国海軍少将の大塚正忠だ。よろしく頼む」
そう言って答礼を返し、大塚が敬礼を止めるとピーターも敬礼を終えた
そんな3人で話していると
「司令官さん...手伝って欲しいのですぅ...」
電が二式大艇から荷物を引っ張り出していた
「すみません!お手伝いします」
ピーターが急いで駆け寄り、電を手伝って荷物を下ろしていく
「これで最後ですか?」
「はい。ありがとうございます。助かったのです」
電はピーターにお礼を言うと、改めて自己紹介をした
「日本海軍駆逐艦 電なのです。今は大塚少将の秘書艦をやっています。よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げる電に、ピーターも先程と同じ挨拶をして頭を下げる
「さて、互いに自己紹介も終わった所で執務室に行きましょう。ここは暑くて敵いません」
「ここは空調が効いていて涼しいな」
執務室のソファに腰掛けた大塚と電は館内の涼しさに驚いていた
「妖精さん曰く全館空調なる物らしいです」
「ほぉ。是非ともうちでも取り入れたいものだ」
そんな世間話をしていると、ピーターが冷茶を全員分机に置くと俺の横に腰掛ける
「さて、本題の入らせて貰う。今回来たのはな...お前から連絡があったのもそうだが、横須賀から上がった報告書で大本営がちょっとした騒ぎでな」
「この間の接触に関して報告が上がったんですね?」
俺の問い返しに大塚は頷くと渋い顔をする
「俺が預かると言ったのに申し訳ない。まさか根回しが済む前に接触するとは想定外だった」
頭を下げてきた大塚に俺は慌てて首を振る
「頭を上げてください!それに元々懸念していたことです。遅かれ早かれこうなっていました」
大塚は頭をあげる
「そう言って貰えると助かる。けどな、大本営で公になった以上隠匿は不可能だ。そこでな...」
大塚は鞄から幾つかの資料と書類を取り出し、机に広げた
「拝見して良いですか?」
「勿論だ」
俺とピーターは書類と資料に目を通す
内容を精査したピーターが口を開いた
「横須賀艦隊...私たちが接触した艦隊との演習ですか」
鋭い声でそう言った
「相手に取って不足はないと考えている。それに、これは元帥の提案したことなんだよ。その実力を示し、公な任務に就いて貰うためのな」
「提督」
大塚の話を聞いたピーターは真剣な表情でこちらを見てくる
その目はやる気と期待に満ちていた
「分かりました。準備がありますので、完了次第この件はお返事をさせて頂きます」
俺の返答を聞いた大塚は満足気に頷くと
「よろしく頼む」
「はい!こちらこそお願いします」
と、ピーターと固い握手を交わした
「じゃあ話も大まかにまとまった所で、あとは秘書艦に任せて基地内を案内してくれ」
待ちきれないといった様子で急かしてくる
「分かりましたよ。全く相変わらずなんですから」
俺の小言にも大笑いで愉快そうな大塚
それに俺も釣られて笑う
「それじゃあピーター、あとの細かい箇所は電さんと詰めてくれ。俺は案内してくるから」
「わっかりました!」
ピーターの元気な返事を聞き、俺と大塚さんは執務室を出てトラック泊地見学ツアーが始まった