「実に参考になった。可能とは思えんが、内地での参考にさせて貰う」
そう言って二式大艇に乗り込んで行った大塚と電を見送った俺は、すぐに執務室に戻り演習のための編成を練ることにした
「ピーター、君たちの様な艦はどういった艦隊編成を組むんだ?」
俺の問いかけにピーターは、秘書艦の事務机での書類整理の手を止めた
「そうですね〜...編成される艦種にもよりますけど。キティは連れていくんですか?」
「そのつもりだ。横須賀は主力である赤城と加賀を出してくると思う。そうなった時に航空機無しでは、幾らこちらに射程や索敵の利があるとはいえ捌き切れない」
「そうですか...で、あればアメリカの場合は空母打撃群と言う編成になりますね」
「空母打撃群とは?」
ピーターは立ち上がり、白紙の紙とペンを持ってこちらにやって来た
「空母打撃群はですね」
そう言って紙の真ん中に「CV」と書き込んだ
「真ん中が空母、主役ですね。ここから艦載機が飛び立ち、敵の領域を何百kmも先から叩きます。ですが、これだけでは潜水艦や水上艦艇に接近されたら不利です」
次はその周りに「CG」「DDG」「SSN」と書き加えていく
「そこで重要になるのが随伴艦です。巡洋艦は盾となり、空の脅威を対空ミサイルで徹底的に排除。うちで言うレイが該当します。次に駆逐艦が剣です。対潜からいざと言う時は水上突貫までこなします。私の得意分野ですね。最後が潜水艦です。これは艦隊より先行して、進路上の警戒、索敵に加えて必要があれば攻撃。主力が補足される前に敵を沈めます」
ピーターの描く図には色々と情報が書き込まれ、視覚的に非常に分かりやすくなっていた
「つまり、空母打撃群とは一種の海上要塞なんです。思想の根幹には、二次大戦のアメリカ海軍機動部隊、冷戦時の空母戦闘群、そして電子、情報戦となったウォルトたちの時代の考えが詰め込まれている訳です」
概要はよく分かった
今の日本の鎮守府などが編成している空母機動艦隊を突き詰めた先にある構成だ
「よく分かったよ。ありがとう」
お礼を言って笑顔を向けると、ここでもピーターは謎の赤面をする
「お、お役に立てたのなら良かったです...」
そう言ってそそくさと戻り、事務作業を再開した
最近の俺の悩みはこれだ
多くの艦娘に囲まれている他の提督なら分かるのだろうが、俺は軍大学を出た後にそのまま大本営へ入り働いてきた
女性との縁もゆかりも無い生活だったために、女心が一切分からん
ピーターにバレないように小さなため息をついた
そうは言っても始まらんからな
気持ちを切り替えて机に内蔵された金庫を開け、中から重要機密とスタンプを押した封筒を取り出す
中身は各艦娘のスペックや装備スペックが書かれた書類だ
それから1ヶ月後
「それじゃあ提督!日本で会いましょう!」
そう言って元気に手を振るピーター
俺の見つめる先では、キティを中心とした空母打撃群(まぁ艦艇数が足りないから打撃群と言えるか心配だが)が、抜錨して港湾入口を目指して機関を前進に入れた
「気をつけてな!」
俺は制帽を振り見送る
その横では、残留組のウォルト、くにさき、トリブツも手を振って見送っている
泊地を出港したピーターたちは、外洋へ出るとキティを中心とした警戒陣のような形で航行していた
北(進行方向)
↑
[モスクワ]
(潜航・超前衛警戒・情報収集)
[ピーターソン]
(前衛対潜・索敵)
[もがみ] [アーレイ・バーク] [レイ]
(左舷防空・対潜支援) (右舷防空・AEGIS防衛中核)
[キティホーク]
(旗艦・航空中枢)
[おおすみ]
(補給・支援母艦・輸送後方)
↓
南(後方)
この1ヶ月、夜間航行訓練から対潜、対水上、対空戦闘の演習を重ねてきた
今回 、旗艦を務めるキティは期待に胸を膨らませていた
「この前遭遇した艦隊と戦えるなんて楽しみだなぁ」
キティの呟きは艦隊間通信で全員に聞こえていたようで
『あのねぇ。だからってこの量の演習をする必要ある!?補給艦が居ないから、私が燃料や弾薬を満載してるけど海上補給なんて出来ないからね!』
と、おおすみ が到着までの行動計画表を見直して文句を言う
『まぁまぁ。落ち着いてよ おおすみ。私の勘だけど、一筋縄じゃいかないと思うよ?その為に演習しといて損は無いって』
と、ピーターがなだめ
『そうだぞ!それにやっと戦えるんだ。私の実力を早く発揮したい!』
と、レイが興奮気味に捲し立てる
もがみ は相変わらず無口だが、付き合いが長くなってきた最近は雰囲気から楽しんでいると分かる
そんな賑やかな艦隊は、これから5日かけて横須賀を目指す
その間に各種演習を繰り返し、より練度を増しながら