キティ率いる艦隊が到着する1日前に、俺は日本へ到着していた
しかし、横須賀鎮守府の司令官 五十嵐 健大佐との打ち合わせや各種調整に奔走し、気がつけば日付はとっくに回っていた
手配したホテルに戻り、シャワーも浴びずにベットへ横になる
「疲れたな…それにしても腫れ物に触るような接し方だったな」
今日一日を振り返ってもろくな事がなかった
身分証を確認した基地守衛は露骨に嫌な顔をするし、五十嵐大佐からも適当な態度しか取られない
自分のやった事を考えれば当たり前だが、久々にああいう態度を取られると心にくる
「シャワー浴びないと...先に飯か」
そんな事を口にしたが最後、俺は深い眠りに落ちていた
その頃、艦隊は横須賀を目指し房総半島南東約105海里の地点を航行していた
ここに来るまでにちょっとした戦闘はあったが、その全てはモスクワによる先制雷撃とミサイル攻撃で決着していた
前衛を警戒のために航行するピーターにキティが話しかける
『ここまで北上してくると寒いね』
「北半球は冬だもんね。赤道に近い常夏の泊地とは大違い。でも」
そう言ってピーターは空を見上げた
そこには自分たちの灯火以外に人工物の光の無い空間に、冬の澄んだ空気によって綺麗に輝く満点の星空が広がっていた
その中でもピーターはある一点を指さす
「北斗七星を見るとなぜか安心する」
ロマンチックな雰囲気に包まれていると、先行するモスクワから連絡が入る
「キティ、モスクワから連絡。横須賀艦隊との会合予定地点に到着。複数のスクリュー音あり、識別不能だって」
ピーターからの報告にキティは返信を考える
『じゃあ返信内容は、安全距離から追尾。これより航空偵察を行う、で』
「了解」
ピーターは即座に返信を行った
その間にホークアイが星空へ飛び立つ
会合予定地点に到着した出迎えの横須賀艦隊の旗艦 阿武隈は白い息を吐きながらトラック泊地艦隊の到着を待っていた
「うぅ〜寒い。早く来ないかな」
そんな事を思わず呟くと、横に居る吹雪が
「会合までまだ1時間ありますよ」
と言いながら、持ってきていた魔法瓶からコーヒーをコップに入れ渡してきた
「ありがとう。準備良いね」
湯気をあげるコーヒーを受け取った阿武隈は、お礼を言って1口飲む
冷え切った体が芯から温まる感じがした
吹雪の事を横目で見ると、他の駆逐艦の子たちにもコーヒーを配っていた
コーヒーも飲み終わり、すっかり体が温まった頃
阿武隈は海面に現れた気泡を発見する
その気泡は辺りを一瞬で白濁させた
「せ、潜水艦!急速浮上中にゃしぃ!」
急いでソナーを作動させた睦月が報告を上げる
他の駆逐艦の子たちも真下へ視線を落とし爆雷を手に取るが、ここで使えば自分たちも少なからず損害を受ける
潜水艦が足元に居たことへの驚きで、一瞬の判断を逃した
その時、艦隊の中心へ白髪の少女が勢いよく現れた
呆気に取られる横須賀艦隊を置いて、少女は自己紹介をする
「初めまして。トラック泊地所属、潜水艦 モスクワです。旗艦は誰?」
「あ、わ、私です」
阿武隈は何とか正気を取り戻し、自身が旗艦だと名乗る
するとモスクワは自身の通信機を渡してきた
「私の旗艦が話したいって...もう回線は開いてるから」
受け取った阿武隈は耳に通信機を当てた
「こちら横須賀艦隊旗艦 阿武隈です」
『初めまして!僕はトラック泊地艦隊旗艦のキティホーク、よろしくね。もうすぐで合流出来るから。接近方位は...』
阿武隈は耳鳴りを起こしそうで通信機から耳を離す
その後、キティとの各種連絡事項の確認と報告を済ませる
通信を終え、無線機をモスクワに返す
「それじゃあまた後で。私は下に居るから」
モスクワは、それだけ言うと再び潜航していった
それから30分後、無事に合流した2艦隊は横須賀のエスコートのを受けながら浦賀水道を北上
桐生と五十嵐が出迎える、横須賀鎮守府北岸壁へ到着した
「ようこそ横須賀へ。疲れたでしょうから今日は休んで、明日の演習に備えてください。じゃあ阿武隈、あとは任せた」
そう言われた阿武隈は全員を宿舎に案内すると、そそくさと立ち去って行った
大佐といい阿武隈といい、その態度から歓迎されていない事は明白だった
しかし、幾ら艤装の補助があったとはいえ5日間も不眠不休でやって来た6人はベットに倒れ込み爆睡するのだった