佐伯湾を抜錨した艦隊は一路、沖縄を目指して南下していた
今回は横須賀艦隊との演習時とは違い、新たにタイコンデロガ級のポート・ロイヤル、補給艦 ましゅう、ルイス&クラーク級のルイスが加わった事により、完璧な空母打撃群(CSG)になっていた
そして、艦隊はキティを中心として約10kmに広がって航行している
「偵察機からは依然として敵影なしっと。ピーターそっちはどう?」
『ソナーに反応無し。潜水艦もいないよ』
キティは返事を聞いて考える
今の海域は既に深海棲艦側の支配海域で、上空には厚く低い雲が広がっていた
そのため、高高度で偵察を行うホークアイは有効とは言えず、今はFー14とF/Aー18による雲底ギリギリを飛行する偵察に頼っていた
「燃料の消費が多くなっちゃう。モスクワに先行してもらおうかな」
艦であった時代にも、今と似た状況は幾度となく経験してきた
キティはレイにお願いし、水中電話でモスクワに通信ブイを上げるように伝えて貰った
『こちらモスクワ、感度いかが?』
「こちらキティ、感度良好。雲が低くて航空機による偵察が上手くいかないから、先行して艦隊前方50kmを扇状に索敵してくれないかな?」
『分かった。通信終わり』
キティとモスクワは短い通信を終え、再び沈黙が訪れる無線
「上手くいくと良いけど」
そう呟いたキティの艤装に、偵察を終えた機体が着艦した
(静か)
モスクワは指示通り艦隊の前に出ると、機関回転数を落とした
微細な音も逃さないように、ソナーと繋がるヘッドセットに集中する
しかし、間もなく補給地点だというのに一切の音が拾えない
たまに聞こえるのは、クジラやイルカの鳴き声だった
「補給地点到着。敵影なし。待機する」
先に補給地点である、奄美大島と喜界島の間に辿り着いたモスクワは機関を停止し、通信ブイを使ってキティに連絡した
『了解。私たちもあと30分で到着するから、その時は浮上して補給してね』
返信を受け取り、通信ブイを回収する
それからピッタリ30分後にキティたちは到着した
「敵の姿が全然見えないけど」
補給のために集結した艦隊は、浮上したモスクワも含めて話し合っていた
「偵察にあった艦隊はどこ行ったんだ?」
ましゅう から艤装に燃料を補給しているレイが、レーションを頬張りながら首を傾げる
「居ないって事はないと思うけれど」
ウォルトは衛星と通信しながら、事前偵察の情報を見直している
全員が首を傾げる中、トリブツが神妙な顔をする
「罠って事はないか?誘い込まれているようだぞ?」
それにピーターが反論する
「それはないんじゃない?提督や他の娘たちも言ってたけど、深海棲艦は戦術がある訳じゃなくて破壊衝動に従って行動してるんでしょ」
「いや、しかしな」
ピーターとトリブツの議論が熱を帯び始める前に、キティが手を叩いた
「はいはい、そこまで。とりあえず先に進むしかないよ。状況は刻一刻と変化するわけだし、より一層警戒は強化していこう」
キティの言葉に全員が賛同した
「それじゃあ、モスクワはレーション食べ終わったら先行して索敵を。敵を発見した場合はすぐに教えて。定時連絡は1時間おきに。私たちは皆の補給が終わり次第ね」
キティの指示に全員が頷き、食事を終えたモスクワは再び潜航
先んじての偵察に向かった
水深210mの位置を潮流に乗りながら奄美大島を通過し、徳之島に差し掛かったモスクワの聴音ソナーは複数の水中雑音を探知した
(潜水艦発見。数4、距離3000...水深20)
奄美大島を通過した時点でフリーウェポンと決めていた
そのため、モスクワは迷うことなく魚雷発射管に注水、発射ハッチを解放した
「前部発射管1番から4番、発射」
声と同時に、4本の324mm小型対潜魚雷が静かに発射された
水上艦のように派手な攻撃ではないが、それは暗殺者のように突然現れ牙を剥く
突如海面に現れた巨大な水柱をF/Aー18が捉える
その情報は即座にキティへと伝えられた
「モスクワが潜水艦撃破。やっと姿を現したね。皆、警戒を厳に!」
通信で伝え、視線を飛行甲板へ移した
そこでは、戦闘機に妖精さんたちが対空ミサイルや対艦ミサイルを、忙しなく装填していた
その様子に満足そうに頷き、自分に言い聞かせるようにポツリと呟く
「さぁ狩りを始めようか」