左遷提督は今日も元気です   作:僻地勤務の兵士

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第23話 突入

空母艦隊撃沈を皮切りに、今までが嘘のように多くの敵艦が出現した

その度にキティの艦載機が、モスクワの魚雷が、ピーターたち水上艦のミサイルが襲いかかり突破口を構築して行った

そしてついに、対水上レーダーに陸地の影が映る

旗艦であるキティは無線封止を解除、後方の本隊へと打電する

 

「沖縄本島を確認」

 

 

キティからの打電を受け取った大和は聞こえるはずもないが、感謝の言葉を述べる

 

「トラックの皆さん、ありがとう。ここからは私たちの出番です!艦隊増速、一気に行きます!」

 

トラック空母打撃群が切り裂いた突破口

敵の航空戦力が壊滅し、制空権を確保した海域を大和は静かに、だが確実に前へと進んでいく

大和は沖縄の方角を睨みつけていた

彼女の視線の先、遥か彼方の水平線には、空母打撃群が暴風のように深海空母群を粉砕し、開けた空白の道が続いている

 

「大和、右舷前方クリア。敵影なし」

 

矢矧が風を切って隣に立つ。軽巡とは思えないほど静かで鋭い足取りだった

 

「響、監視続行。大和さんを敵に獲らせたりはしない」

 

その背後、暁と並んだ響が眼前の海を見据えながら言う

その口調は静かだが、指先はいつでも雷撃を放てるように緊張していた

 

「Товарищ……突破口は完全に開かれている。今なら――」

 

「行くわよ!大和さん、わたしたちが前を開けるわ!」

 

暁が拳を握って叫ぶと、雪風、磯風、霞、冬月、涼月、秋月らが次々に隊形を詰め、まるで大和の盾のように並んでいく

 

「……まだ敵は気付いていない。空は彼女たち”が抑えたままです」

 

大和は沖縄の影を睨みつけたまま、静かに呟く

 

「トラックの皆さんが攻撃隊が深海空母群を潰し、佐伯の皆さんが外周を掃いた……これほどの突破口、後にも先にもないでしょうね」

 

風が強くなり、血と硝煙の匂いを含んだ潮が頬に触れる

大和はわずかに目を閉じた

 

「行きますよ。私たちが、この戦いを終わらせるんです!」

 

その声と同時に、随伴艦たちが一斉に進路を揃える

 

「矢矧、前衛配置完了!」

 

「冬月、涼月、防空警戒!対空射撃準備よし!」

 

「響、暁、右舷側雷撃戦用意!」

 

「雪風、突入時の予備警戒に回ります!」

 

艦娘たちの声が重なり、波を打ち破る振動がさらに強まる

やがて、夜の向こうに薄く島影が見え始めた

 

沖縄本島

幾千もの光と影が争う、深海に奪われた日本の領土

大和は息を吸った

 

「見えました……あそこが、私たちの終わりの場所であり、始まりの場所でもある」

 

矢矧が横目で大和を見る

 

「……大和、怖くはないか?」

 

「怖いに決まっているでしょう。でも」

 

大和は、戦艦だった頃の道半ばで倒れたことを思い出す

 

「仲間が命を賭けて切り開いた道よ。なら、大和が行かなくて誰が行くの?」

 

蒼い雷鳴のような風切り音

上空を、キティホークの攻撃隊の残存機が帰投していく

 

その軌跡は、大和の進むべき航路を示す道だった

 

「全艦突入する!」

 

轟音と共に、大和率いる艦隊が前へと躍り出る

それは、前世の死地へ向かう特攻ではなく、日本と世界を救うための始まりに過ぎなかった

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