左遷提督は今日も元気です   作:僻地勤務の兵士

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トラック泊地所属艦娘
アメリカ艦

空母 CV-63 キティホーク(キティ)

スプルーアンス級駆逐艦 DD-969 ピーターソン(ピーター)

ミサイル駆逐艦 DDG-1000 ズムウォルト(ウォルト)

タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦 CG-73 ポートロイヤル(ロイ)

ミサイル駆逐艦 DDG-51 アーレイ・バーク(レイ)

ドライカーゴ弾薬補給艦 T-AKE-1 ルイス


日本艦

輸送艦 LST-4001 おおすみ
LST-4003 くにさき

フリゲート FFM-1 もがみ

補給艦 AOE-425 ましゅう


ロシア(旧ソ連)艦

ウダロイ級駆逐艦548 アドミラル・トリブツ(トリブツ)

原子力潜水艦 モスクワ


第25話 黒き翼

日の沈んだトラック泊地

その特設滑走路に、湿った潮風が漂っていた

脇にある格納庫がゆっくりと開き、影がひとつ、またひとつと灯りに照らされる

全翼機のB-2爆撃機 スピリット

人間の手のひらほどの小さな身体の妖精さんが操る機体

だが、戦場では誰よりも勇敢で、誰よりも精密な操縦をする

機体の腹には、細長く鋭いフォルムのバンカーバスター

その爆装を見上げながら、妖精整備員たちが群れるように動き回る

 

「……ぜんぶちぇっくおわったよ」

 

「えんじんのじゅんびもばっちり」

 

小さな声で、しかし誇らしげに報告する声が格納庫に木霊する

パイロット席に座っている妖精さんが、グッと親指を立てる

そして、B-2のエンジンが静かに始動

重低音のような振動が足元を震わせるが、普通の爆撃機のような轟音はない

その巨体から想像できないほど静かなエンジン音が響き渡る

誘導員を務める妖精さんが誘導灯を掲げ、ピョコッ、ピョコッと全身を使って機体を誘導する

 

「……さいしゅうちぇっくかんりょう。すすめーっ!」

 

機体はゆっくりと滑走路を目指しタキシングする

滑走路手前に到達すると、操縦席の妖精さんは管制塔から離陸許可を貰い、滑走路に侵入

 

「……うぃすぱーわん、ていくおふ」

 

次の瞬間、B-2は湿った空気を切り裂くように滑走を開始する

格納庫前の妖精さんたちが手を振りながら声をあげる

 

「がんばれー!」

 

「ぶじにかえってくるんだよー!」

 

「ばんかーばすたー、ちゃんとおとすんだよー!」

 

やがて速度が乗り、翼が浮力をつかむ

黒い影はすっと地面を離れ、静かに空へ昇っていく

そして黒い翼は、夜の闇へ溶け込む直前に、かすかに翼を揺らした

仲間に、行ってくると手を振るように

 

 

Bー2出撃の2日前

矢矧からの応援要請を聞き、本隊の救援へ向かったピーターたちが到着した頃には大和の姿はなく

大破し意識のない艦娘たちが海面に倒れていた

 

「救助急げ!!」

 

ピーターの声に、それぞれが別の艦娘へと駆け寄り様子を伺う

皆、大破はしているが意識を失っているだけだった

ピーターはすぐに、佐伯泊地の桐生が持つ端末へ暗号化を施した通信を入れた

それからしばらく救助に当たっていると、返信が来る

 

『撤退せよ』

 

その内容を全員に伝え、佐伯艦隊の護衛の元に何とか帰りついた

 

 

翌日、呉鎮守府に緊急召喚された桐生、伊藤中佐に出撃していた全艦娘は、地下にある作戦室に集められていた

 

「由々しき事態だな。大和を鹵獲されるとは」

 

呉鎮守府司令官 五十嵐准将がこめかみを押さえる

 

「申し訳ありません。1歩及びませんでした」

 

高速修復剤で入渠を済ませた矢矧が頭を下げる

 

「いや、あれは誰にも予測困難だ。仕方ない。だが、倒さねばならんだろう」

 

大和を倒す

その意味にトラックの艦娘以外は、全員が顔を暗くした

 

「しかし、大和の随伴艦を務めていた彼女たちの報告では、特殊装甲があります。それをどうにかしなければ、本体へ直接攻撃できませんよ?」

 

伊藤中佐の言葉に矢矧が続けた

 

「私たち軽巡や駆逐の口径ではどうにもなりません。あれを破るには、大和の姉妹艦である武蔵の攻撃しかないと思います」

 

「武蔵か...上層部が許可しないだろう。武蔵まで鹵獲されてしまったら、それこそ打つ手が無くなる」

 

白熱していく議論の中、ピーターが静かに手を上げた

 

「桐生提督。バンカーバスターの使用を進言します」

 

「あれを使うのか?」

 

俺の言葉にピーターは静かに頷く

 

「待て待てピーターソン。バンカーバスターを動く目標に当てるなんて芸当、誰ができる」

 

横で聞いていたトリブツが鼻で笑う

 

「目標を罠にかけて動けなくしては?」

 

ポートが提案する

やいのやいのと内輪で議論を始めた所で、五十嵐准将が口を挟んでくる

 

「桐生、バンカーバスターとはなんだ。説明しろ」

 

「はい。説明させて頂きます」

 

俺は立ち上がり、説明を始める

 

「バンカーバスター。正式名称は超深貫通爆弾と言います。この爆弾は、中身の九割が鋼の塊です。通常の高性能爆薬ではなく、貫通力そのものを武器にした爆弾です」

 

五十嵐准将が眉をひそめた

 

「貫通……深海棲艦の特殊装甲に、そこまで効果があるのか?」

 

俺は即答した

 

「深海棲艦化した大和の特殊装甲に、常識的な兵器では通用しないでしょう。ですが、このバンカーバスターだけは別です」

 

ここで一旦言葉を区切る

 

「落下速度は音速に近いレベル。その運動エネルギーで、特殊装甲を破壊します。破壊後に、遅延信管が作動して内部で爆発……ですが、使用するのであれば炸薬を減らします」

 

説明された兵器の威力に、室内の空気が一段冷えたように感じられた

五十嵐准将はしばらく黙していたが、ゆっくりと椅子に背を預け、低く問う

 

「……その弾を使えば、本当に大和を止められるのか?」

 

俺は迷わず答える

 

「そう確信します」

 

会議室に沈黙が落ちる

その静寂の中で、五十嵐准将は鋭く目を細めた

 

「……続けろ。投下は誰が行う?」

 

「B-2爆撃機と言われる機体が行います。現在はトラック泊地に待機しています」

 

五十嵐准将は目を閉じ、短く息を吐いた

 

「……深海大和に挑むには、それしかないのだな」

 

俺は静かに頷いた

 

「はい。この一撃だけが、現状を打破できる唯一の方法と考えます」

 

室内に沈黙が流れる

室内前列に並ぶ、呉鎮守府の重鎮たちも重苦しい顔をし、腕を組み目をつぶる五十嵐准将に視線を送る

 

「よかろう。そのバンカーバスターとやらの使用を許可する。直ちに行動に移れ。再出撃は今夜、作戦開始は明日の2200時とする。なお、今事項は一切を部外秘とし、記録も抹消せよ」

 

「分かりました」

 

俺は部屋を飛び出し、端末を取り出す

 

「トラック泊地聞こえるか?こちら桐生」

 

呼び出しに間髪入れず、おおすみ が応答してきた

 

『どうしたの?』

 

「妖精さんにBー2爆撃機の出動要請だ。武装はバンカーバスター、炸薬は減らすよう伝えてくれ」

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