「全艦に通達、現時刻をもって無線封止解除!これより大和攻略に入る!」
今作戦の総旗艦 矢矧が無線を入れる
周囲に展開する艦娘全員が武装の安全装置を解除
その上空では、キティから発艦したホークアイが全通信を中継していた
「爆撃機も上空待機を始めたみたいだね」
フライトデッキで準備を進める妖精さんと打ち合わせをしていたキティは、ホークアイからの中継で入ってきた連絡に上空を見る
綺麗な星空の中に、必殺の武器を携えた機体が紛れている
『衛星写真の解析終わりました。目標と思われる高熱源を確認』
ウォルトからの無線に全員が気を引きしめる
攻撃が始まった
『各個に撃ち方始め!作戦通りに!』
大和は、今では仲間であるはずの深海棲艦までもを全て駆逐していた
そのため、艦隊は1隻の駆逐艦と出会うこともなく悠々と到達していた
しかし、大和が上空に向け行った攻撃は証言や衛星写真の解析の結果、燃料気化爆弾を砲弾化した物だと判明
艦隊は陣形を組まず、単独で散開する形を取っていた
その先陣を切ったのは矢矧を含む艦隊だった
大和を取り囲むように散開し、四方八方から砲撃を加える
しかし、その攻撃は全て特殊装甲によって火花を散らし弾かれる
「構うな!動きながら撃ち続けろ!」
大声で叫びながら、機関は最大戦速を維持する
全員がこうする事により、大和に個人へ攻撃させないようにしていた
そして、上空のホークアイからの指示で変針し、爆撃機の侵入コースを確保していく
大和はせっかく合わせた標準が外れ、再び砲塔を旋回させるが遅いと判断し、自身も変針を行う
「ぴぇぇ〜なんで暁ばっかり狙うのよ〜!!」
涙声で叫ぶ暁にゆっくりと砲身が迫る
その時、背後から探照灯が照射される
「狙わせません!」
雪風が注意を引くように、大和へ向けて照射を続ける
眩しさに顔を歪ませた大和は、その目標を雪風に変更したようで狙いを変えた
「ECM作動!」
ウォルトはそう宣言し、戦闘海域一帯に電波妨害を始めた
これは大和の対空電探を潰すのが目的であり、Bー2が万に一つも堕とされないためのものだった
しかし、それは同時に大和至近で戦う旧式の艦娘の電探も同時に潰すことになる
そのため、トラックに所属する艦娘以外の電探は真っ白になり、使い物にならなくなった
「コースよし!とうかじこくまで10ぷん!」
はるか上空で待機するBー2の機内
操縦妖精さんが互いに最終チェックを済ませ、下で戦う艦娘を信じ、投下ポイントを目指してコース侵入していく
その時、海面で巨大な火球が生じた
その火球は、特殊装甲破壊後の二次攻撃を行うために後方待機していた艦隊からも確認できた
それからすぐに、衝撃波が襲いかかる
「各艦損害報告!」
キティは、すぐに無線で状況を確認する
全員からすぐに戦闘に問題はなしと返ってくるが、爆発によって生じた波が海面反射を生み、一時的に海面付近の目標標捕捉が困難になっており、矢矧たち前衛艦隊がどうなったのか分からない状況にあった
『矢矧たちから応答がないけど!援護に入った方がいいんじゃない?』
ロイから進言されたキティだったが、二次攻撃のために弾薬は温存するべきかどうかで悩んでいた
『全く、資本主義はこれだから嫌いだ』
そう言ってトリブツが1人、速力を上げる
『ちょっと!勝手に何やってるのよ!』
それにピーターが噛み付いている
『私は、個人の利益を追求する資本主義じゃないのでな』
トリブツの含みある物言いに、ピーターは黙り込む
『それに今後のことも考えれば、今奴らを失うのは得策とは言えん。おっと勘違いするなよ?私は、同志から艦隊の自由裁量権を貰ってる』
『はぁ!?アンタいつの間に!!』
『伝えてなかったか?』
『初耳よ!!』
無線で口喧嘩を始める2人
そこに割り込むように、レイがトリブツに賛同する
『確かにトリブツの言う通りだ!やろうぜ!』
その一言に、ブツブツと小言を言い続けるピーターも賛同する
キティは口角を思わず上げて笑ってしまう
「分かった。やろう!これより当艦隊は矢矧たちの任務を引き継ぎ、大和を投下ポイントへ誘導する。ウェポンフリー!攻撃開始!」
キティの攻撃宣言
『『『『『了解!!』』』』』
それに全員が返事をした時、海中からミサイルが姿を現し大和へ向けて飛んでいく
『モスクワめ。盗み聞きとはいい趣味だ』
『沈黙は潜水艦のモットー』
どうやら通信ブイで、ずっと会話を聞いていたらしい
モスクワに最初の攻撃を取られたが、すぐに何十本というミサイルが白煙を引きながら発射された
あぁ...なんて綺麗な星空なんだろう
目を覚ました雪風は、クラクラする頭にそんな事しか思い浮かばなかった
全身はヒリヒリと痛み、四肢の感覚がない
動かない体に鞭を打ち、首だけを何とか動かした
その視線の先には、自分と同じように海面に倒れた皆
そして、ピクリとも動かない矢矧に向けて主砲を向ける大和
ダメ!大和さん!!!
雪風は叫んだつもりだが声は出ない
体も動かない
ここまでなの?
あの時と状況は違うが、同じ絶望が心をジワジワと支配する
誰か...誰でもいい...助けて...
雪風はギュッと目を閉じて祈った
そして、その祈りが通じたかのようにモスクワの撃ったミサイルが着弾する
「やっぱり効かないね」
ホークアイの着弾観測結果を受け取ったキティは、思わず舌打ちする
皆は残弾を気にせずミサイルを撃っている
自分も攻撃機を全機発艦させた
あとは、大和がこちらの思った通りに動いてくれるのを願うだけ
そのあとのこと?もう知ったこっちゃない
ここまで来たら当たって砕けろだ
しかし、予想に反して大和はその場を動かなかった
レイが苛立た声で叫んでいる
ミサイルは全弾着弾しているが、大和はこちらに興味を示さない
深層心理が自身に関わりの深い方へと関心を引いていた
『どうするんだキティ!!指示を!』
指示をあおがれたキティだったが、何も思い浮かばない
皆がミサイルを撃ち尽くすまでの攻撃でも、こちらに関心を抱かないのだ
失敗
その二文字がキティの思考回路を支配する
その時、ホークアイを通じてBー2から連絡が入った
その内容は、こちらが投下コースを修正するというものだった
夜の成層圏を滑るように進むB-2
月明かりさえ吸い込む機体表面は、まるで夜空そのものが形を持って動き出したかのようだった
機内は薄暗く、HUDの緑光だけが操縦席を照らす
副操縦士妖精さんが低くつぶやく
「……もくひょうまで、あと60びょう。コースしゅうせい、みぎ5ど。ゆうどうシステムあんてい、とうかルートにのったよ」
わずかに顎を引き、計器越しに眼下を睨む
その中心に大和の位置が、レーダーデータの重ね合わせによって鮮明に浮かび上がっていた
「ウェポンベイてんかい。いくよ」
油圧ポンプが唸り、腹部の巨大なベイ扉がゆっくりと開く
外気が流れ込み、機内の空気が震える
吊り下げられた長大な弾体 GBU-57 バンカーバスターが冷たく光った
飛行コンピュータが自動で姿勢制御を開始し、機体は高高度で水平を保つ
次の瞬間、機体にわずかな振動
「……とうかじゅんびかんりょう。カウントスタート!」
表示パネルにカウントダウンが走る
5、4、3、2、1
「とうか!」
衝撃はほとんどない
ただ、わずかな重心移動とともに、地獄を穿つための弾体が静かに落ちていく
空気を裂く落下音は、コックピットには届かない
だがモニターに映る赤外線映像では、弾頭が一直線に海面へ向かい、暗闇の中を灼熱の光点として疾走していく
副操縦士妖精さんが息を呑む
「……ゆうどうりょうこう。かそくちゅう。もくひょうに……はいる!」
その直後、大和の特殊装甲が波紋のように揺れ、衝撃の閃光が辺りを染めた
それと同時に、特殊装甲は砕け粉々になる
装甲を破壊したバンカーバスターは大和の目の前を通過し、海面に突き刺さる
その衝撃によって生じた波が、矢矧や雪風、倒れる艦娘全員の体を押し流す
タイミングを見て、機長妖精さんがスロットルを押し込んだ
「りだーつ!」
B-2は音もなく機首を振り、闇に紛れたまま急速に反転
背後で、深く沈んで行ったバンカーバスターが爆発を起こし、大和を飲み込むほどの水柱を作る
その瞬間の光が、B-2の漆黒の翼を一瞬だけ銀に照らした