左遷提督は今日も元気です   作:僻地勤務の兵士

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第27話 奇跡

大和の特殊装甲は破壊された

この時を待っていたとばかりに、F/Aー18がハープーンミサイルを叩き込み、Aー6Eがナパーム爆弾に2000lb爆弾を上空から投下する

そのほとんどが直撃するが、流石は大和といったところか

特殊装甲がなくとも、その攻撃に耐える

しかし無傷とはいかず、額から青い血を流し、その砲塔は折れ曲がる

 

「突撃!」

 

ピーターの掛け声に合わせ、ミサイルを撃ち尽くした戦闘艦が砲撃をするために距離を詰める

砲塔を失った大和など、標的艦も同然だった

 

 

雪風は座れる位には、何とか回復していた

海面に座った状態で、艤装を確認する

艤装は気化爆弾の火球の熱で一部が溶け、衝撃波によってぐちゃぐちゃに歪んでいた

浮いていられるのも奇跡のような状態だった

 

「これじゃ戦闘は無理ですね」

 

額から流れる血が白い服を染めるのも気にせず、雪風は大和へ視線を向けた

そこには、特殊装甲を失い一方的に蹂躙される大和がいた

その姿を目にして、雪風の頭にある記憶がフラッシュバックする

そう、あの坊ノ岬沖海戦の記憶だった

航空機に手も足も出ず、一方的にやられる大和

それを見て、悔しそうな表情の自分の乗組員

そして、大和沈没後の帰港中に人目も気にせず泣きじゃくる男たち

そんな記憶が、一瞬にして雪風の頭を駆け巡る

気づけば雪風は、その目からボロボロと大粒の涙を零していた

 

「ダメです...大和さん...皆で帰るって約束したのに...」

 

雪風は胸の前で両手を組み、大声で泣き出す

雪風は泣きながら、提督から昔教えられた言葉を思い出す

 

(いいか雪風。死んだ人間はな星になるんだ。そして、空から俺たちを見守ってくれているんだ)

 

その言葉に縋るように、満点の星空を見上げ叫ぶ

 

「お願いします!!そこに居るのなら!大和さんを...大和さんを助けてください!!大和さんを...」

 

最後には消え入りそうな声で懇願する雪風

その時、1つ、また1つと流れ星が流れ始める

 

 

あと少しで大和を沈められる

そう確信していたトラックの艦娘たちも、攻撃を止め空を仰ぎ見る

 

『なんだ!?すっごい数の流れ星だぞ!!』

 

その数はどんどんと増え、ついには空の半分を覆ってしまう

 

「すっごい綺麗...」

 

ピーターは、その光景に思わず見とれてしまう

流れ星の光は辺りを白く染め上げる

その中でも、一際光り輝く存在があった

全員がその光の目をやると、大和の周りを白い光が徐々に覆っていく

 

「何が起きてるの?」

 

さっきから起こっている出来事に、誰も理解が追いつかず

ただただ行く末を見守るしか無かった

 

 

大和を覆う光は、流れ星の数と共にその輝きを増し、そして徐々に輝きを失っていく

空が元に戻る頃には、白い光もすっかり無くなり

ただ、そこに佇む大和だけが残っていた

 

「大和、ただ今帰還しました」

 

そう静かに告げる大和

それと同時に、朱に染まっていた海面が大和を起点として元に戻っていく

 

「奇跡だな」

 

いつの間にかピーターの横に来ていたトリブツが呟く

 

「奇跡か...うん、そうかもね」

 

自身の言葉に素直に賛同したピーターに対して、トリブツは驚いた顔をする

そんなトリブツに対し、ピーターが

 

「それにしても、アンタも奇跡なんてものを信じてるのね」

 

「失礼な奴だな。これでも心は乙女なんだぞ」

 

「なーにが乙女よ」

 

ピーターは笑顔で、トリブツの脇腹を肘で軽く小突く

 

「ふん。それよりも早く助けに行くぞ」

 

そっぽを向き前に進むトリブツだったが、その顔にも笑顔があった

 

 

「や、大和さん...」

 

雪風は何とか立ち上がり、大和へ近ずこうとするがバランスを崩し前に倒れる

それを大和が急いで近づき、支える

 

「ご心配かけました。もう大丈夫です。かつての乗組員の皆さんに怒られてしまいました」

 

大和の言葉に、雪風は急いで空を見あげた

 

「届いたんですね。皆さん、ありがとうございました」

 

「ふふ...さぁ帰りましょう雪風さん。私たちの家へ」

 

「はい!」

 

元気に返事を返した雪風は、大和に支えられながら立ち上がる

そんな2人の針路には、トラックの艦娘に支えられ泣く者もいれば、笑っているものもいた

その上空を、まるで英霊を弔うようにキティの艦載機が編隊を組み飛んでいた

こうして、ついに沖縄を奪還した

艦娘と妖精、そしてかつての英霊たちの活躍によって

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