第31話 進化
艦隊からの帰投連絡を受け、俺は本館を飛び出し桟橋へ走る
滑走路の方からは、防空識別圏内への侵入機へ対しスクランブルしたFー15が帰投してきた音が聞こえる
トラックに来てから、識別圏への航空機の侵入は初めてだ
俺は胸のざわめきを押さえつけながら、桟橋に座り込む皆の元へ駆け寄った
「大丈夫か!?」
そう声をかけると、項垂れていたピーターが顔を上げ立ち上がる
「報告します。損害は、キティの艦載機を除きありません。ただ、全員が未知の敵航空機に対しての警戒から消耗しています」
報告の内容に胸を撫で下ろすと同時に、キティへ目を向けると茫然自失といった状態だった
無理もない
この世界に来て、初めての艦載機の損失
その割合も3割を超えていた
「とにかく全員、今は休め。ピーターだけはすまないが、至急報告書及び分析書の提出を頼む」
そう指示を出し、俺は作戦司令室へ向かった
「妖精さんには、キティの艤装に送信された艦載機からの戦闘データをこっちに回すようお願いしてある。出せるか?」
俺の指示に、椅子に座りデスクに向き合う おおすみ は頷くと、キーボードを叩く
「出たわ。これね...妖精さんの音声データと機体に搭載されたカメラ映像よ」
そう言い、おおすみ は音声データを再生した
『ふめいきとせっしょく。これよりけいこくをおこなう』
そう宣言してから、妖精さんによる警告が始まった
『こちらはにほんこくかいぐん。ききは、わがかんたいにせっきんしている。しんろをはんてんせよ。くりかえす...』
妖精さんは、日本語と英語で2回ずつ警告を行っている
『こちら、ふりーらんさー101。けいこくにかかわらず、ふめいきはしんろをかえず』
『了解。写真撮影を。艦隊まで100kmを切ったら迎撃許可』
『ふりーらんさー101、こぴー。102きいたな?』
『102、こぴー』
キティの指示と、それに答える声が聞こえる
その時、けたたましいレーダー照射警告音が狂ったように鳴り響く
『れーだーしょうしゃ!どこからだ!?』
101のパイロット妖精の焦った声
『こうほうからだ!』
『102ぶれいく!ぶれいく!ふれあ!』
音声だけでも緊迫した状況が伝わってくる
しかし、レーダー警報は鳴り止まず、ついにロックオン警報に切り替わる
『101ろっく!かんぜんにろっくされた!てっきは!?』
パイロットの叫び声
『れーだーのきえいはいっきだけ!』
後席の妖精さんも叫んでいるが、その声は警告音にかき消されそうだ
『101!!こうほうにみさいる!』
102の警報も虚しく、101は撃墜される
『くっそ!!きてぃーほーく!こちら102!101がひだん、ついらくした!くりかえす、101がおちた!!』
その無線内容に、キティの焦った声が聞こえる
『撃墜!?...102は直ちに応戦。支援機をすぐに上げる!』
そこからの無線は、警報音に妖精さんの怒号、キティの焦った声だけが記録されていた
再生が終わると、おおすみ がこちらへ振り返る
「提督...まさか...深海棲艦も」
それ以上言葉が出ないのか、おおすみ はこちらを不安そうな目で見つめる
俺は情報が少なく、判断しかねていた
「失礼します。報告書がまとまりました」
司令室にピーターが書類を抱えて入ってきた
俺は受け取り、急いで目を通す
「大本営に報告だ」