左遷提督は今日も元気です   作:僻地勤務の兵士

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第34話 西へ

日付も変わり、丑三つ時と呼ばれる時間に俺は叩き起された

鳴り響く内線の音を不愉快に感じつつ受話器を取る

 

「どうした?」

 

『提督!大塚少将から緊急入電です』

 

ピーターの焦った声に俺は飛び起き、着の身着のままで部屋を飛び出した

 

 

「こんな夜分にどうしましたか」

 

通信機に向かって喋りかける

 

『まさか、お前から預かった通信装置をこんなに早く使うことになるとはな。まぁいい 、トラック艦隊は遠征準備に入ってくれ』

 

「遠征…ですか」

 

『あぁイギリスが陥落した』

 

 

「さぁ行こうか」

 

気合十分のキティは舌なめずりをして、湾口から覗く外洋を見据える

艤装のフライトデッキには、妖精さんによって改装されFー14 TOP GUNとなった機体が並ぶ

 

「道中は長いんだから、今から張り切りすぎるとバテるよ」

 

横に並ぶピーターはキティの肩を軽く叩き、湾口を目指して出港していく

そして護衛のために、新たに配備されたFー22が頭上を掠めるように飛んで行った

 

 

その頃のイギリス軍は、本土南部から上陸した陸戦型の深海棲艦によって北へ北へと押し込められ続けていた

 

「なぜ出撃させてくれないんだ!」

 

イギリス北部のクライド海軍基地

その執務室では、ヴァリアントが提督と睨み合っていた

 

「司令部の決定だ」

 

「今、南部は大変なことになっているんだろ!?海上封鎖さえ解ければ、ドイツやイタリアも救援に来てくれるはずだ!」

 

ヴァリアントは焦っていた

ドーバー海峡に派遣されていた、姉であるウォースパイトが消息を絶っていたからだ

しかし、提督は首を縦には振らない

 

「謎の航空機も出てきているんだ。そのせいで、うちの航空隊が壊滅状態なのはお前も分かっているだろ。上空援護もなしにどうやって戦うんだ」

 

ヴァリアントは最もな意見に唇を噛む

その通りだ

あの謎の高速飛行する航空機は、飛翔する謎の武装を積んでいる

諜報機関によれば、噴進弾の可能性が高いそうだが、追尾機能まで付いているのは反則だ

そのせいで、艦載機を全て失ったアークロイヤルもこの基地に逃げてきている

 

「どうにか出来ないのか?」

 

ヴァリアントの縋るような声に、提督は

 

「本部が日本へ救援要請を行った」

 

「日本?なぜ極東の国に」

 

ヴィリアントは理解できなかった

確かに、この戦争において日本はアメリカよりも戦果を上げている

しかし、なぜ距離があり時間もかかる日本なのか

 

「最近、日本にも現れたんだよ。我々が遭遇した航空機を装備した艦娘がな」

 

 

「キティの補給は後10分で終了。次はレイよ」

 

『りょうかーい!』

 

補給ホースで繋がれ、真横を航行する ましゅう が無線で全体に補給状況を伝達している

キティは自身の頭に浮かぶ油の補充状況と照らし合わせながら、哨戒に出ているホークアイからの定時連絡を受け取っていた

 

「周辺海域に敵影なし。平和だねぇ」

 

キティの呟きを聞いた ましゅう は眉を寄せる

 

「日本にある諺で、嵐の前の静けさっていうのがあるのよ。足元すくわれるわよ?」

 

「分かってるけどさ…鉄底海峡を迂回してインド洋に出てから、一切の接触がないからさ」

 

キティが後ろ髪をかくと、ましゅう が補給ホースを切り離す

 

「補給完了。離着艦出来るわよ」

 

「ありがとう!」

 

「どういたしまして」

 

ましゅう はそう言うと、次の補給であるレイの居る場所へ行ってしまう

再び1人になったキティは、ピーターとの個別回線を開いた

 

「ピーター、感度どう?」

 

『良好だよ。どうしたの?』

 

キティはピーターの声を聞いて、どこかホッとした

 

「いや、敵と全然合わないからさ」

 

『まぁね。けど、外洋はまだ良いでしょ。問題はスエズ運河に地中海だよ。逃げ場が無いから袋のネズミだし、陸上基地からの攻撃にも警戒しないと』

 

「うん。提督が急いで地中海からヨーロッパ方面の偵察衛星を準備するって言ってたけど、まだ信号はないから航空偵察に頼るしかないしね」

 

『ま、提督ならどうにかしてくれるよ』

 

「ピーターの…いや、なんでもない。長話が過ぎたね、短波通信とはいえ、無線は極力控えるべきだ」

 

「?…何を言いかけたのか気になるけど…ま、いっか。そうだね、一応無封止しておして損はないよ」

 

ピーターからの回答を聞き、キティは無線封止の指示を艦隊に出した

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