また1つ大きな水柱が立ち上がる
イタリア海軍のRDー1(本人はウーノと名乗った)が、艦隊が通れるだけの範囲を次々と掃海していく
「ちっちゃい体して働き者だねぇ」
ロイが手でひさしを作り、作業中のウーノを見つめる
その顔は、まるで妹を見るような優しい顔つきだった
「無駄口叩いてないで、警戒警戒。なにかあればウーちゃんが危険に晒されるんだから」
「ウーちゃん?」
ピーターの発言にロイは顔をしかめるが、すぐにプッと吹き出し笑い出す
「ウーちゃん!いいね気に入った。私もウーちゃんと呼ぶことにしよう」
2人は軽口を叩きながらも周囲の警戒を続けた
それから2日間の掃海作業によって、艦隊が何とか通行できるだけの水路は確保された
それと同タイミングで おおすみ と くにさき も合流を果たした
「さてさて、みんな揃ったと言うことで向かおうか」
キティは気合十分といったように肩をグルグルと回す
その背後に控える皆も、気合いを入れるために もがみ から教えて貰った日本語「百戦錬磨」や「先手必勝」などと書かれたハチマキを頭に巻いている
「私たちもジブラルタル通過まで援護します」
そう言って、脇にはイタリアの各基地から集められた艦娘たちが集結していた
「本当に良かったの?地中海の防衛が〜とか言ってたけど」
ピーターが問いかけると、イタリア艦たちは頷く
「貴方がたが欧州の希望ですから」
そう言ってくれた
「時間がないからブリーフィングは走りながら行うよ」
キティがパンパンと手を叩くと、全員が機関を前進に入れた
「ブリーフィングと言っても、取り敢えずはイギリス海軍が集まってるクライド基地を目指すよ。そこに行くまでは無線封止に灯火管制。僕はCAPを常時あげる」
キティの説明に全員が耳を傾け、同期されてきた航路図を確認していた
「いつも通りモスクワによる先行偵察を実施。水上艦は対空警戒を特に厳重に。それから……」
ブリーフィングが終わる頃にはジブラルタル海峡を通過していた
背後を振り返れば、イタリア艦の皆が大きく手を振っている
『ご武運を』
その通信を最後に、イタリア艦は引き返していった
モスクワはいつものように、艦隊の30海里前方を潜航し偵察活動を行っていた
しかし、潮流や水温躍層の影響によってパッシブソナーは使い物にならなくなっていた
(これじゃあアクティブソナーを打っても意味ないな)
どうしようかと頭を悩ませていると、僅かな違和感を感じる
普段なら気にもしない小さな違和感が、頭の中でガンガンと警報を鳴らす
(!!??)
その違和感はすぐに解消された
目の前に深海潜水艦が現れたのだ
(しまった……互いに水温躍層の縁に居て気付けなかったんだ!!)
相手も驚いた顔をしている
この距離じゃ魚雷を撃っても自分も巻き込まれる
そう判断したモスクワは相手に飛びかかった
自身の艤装で相手の頭を殴りつける
しかし流石は深海棲艦
そんな攻撃もものともせずに白い両手をモスクワに伸ばしてくる
「しつこいっ!この!!」
魚雷を取り出し、弾頭部分を外す
今度はそれを武器に殴り掛かる
水中での格闘戦は熾烈を極めた
モスクワの魚雷による殴打で、敵は額から青白い体液を流し海中に漂っている
モスクワも無傷では済まず、口の中に鉄の味が広がる
互いにもつれ合いながら、その深度は段々と深まっていく
そして、ついに深度500mになろうとした時、モスクワの艤装から嫌な音が上がる
(ダメージを受けすぎた。700までは潜れるけど、今のままじゃ)
受けたダメージによって、いま潜れるのは550が限界だと感じる
「このっ!しつっこいんだよ!クソッタレ野郎が!」
普段なら口にしないような暴言を吐きながら、渾身の力を込めて魚雷で殴打し、額に出来た裂け目にねじ込む
すると、ようやく力尽きたのかモスクワを引き剥がそうと顔に押し当てられていた腕が力無く離れる
そして更に深海へと沈んで行った
「はぁはぁはぁ……」
肩で息をするモスクワは、全身から力が抜ける感覚に襲われたが気を保ち浮上を開始した
そんな戦闘が繰り広げられていたことなど知らずに、後方の空母打撃群は航行を続けていた
空には常時、戦闘機とホークアイが飛び、レイやロイを中心とする対空レーダー、対水上レーダーが監視を行っていた
その時、レイのイージスレーダーが飛翔体を捉える
「ん?……総員対空戦闘用意!高速接近中の飛翔体を確認!数4!迎撃開始!」
その声と同時に、レイとロイの艤装から白煙をあげて合計8発のSMミサイルが放たれた