「とうちゃーく!」
ピーターは両手を真上に突き上げ、伸びをした
「やっと着いたね。色々あったけど」
隣にやってきたキティも伸びをしている
その目の前にはクラウド海軍基地があり、岸壁に多くの人影が見えている
トラック空母打撃群は速力を落とし、岸壁前で綺麗に整列をした
「気をつけー!!
キティの号令に全員が艦娘や一般隊員で出来た人集りの中心へと顔を向ける
そこには白い軍服を着た初老の男性と、こんな場所は似合わない上品な女王陛下が立っていた
こちらの号令に合わせ軍人は敬礼を、女王陛下は深々と頭を下げる
陸へ上がった私たちの元へ、
「遠路はるばるよく来てくれた!私はイギリス海軍元帥のヘンリー・モントローズだ。ヘンリーと呼んでくれ。そしてこちらが」
「キャサリン・ローズです。皆さんの救援に全国民を代表して御礼申し上げます」
そう言って頭を下げた女王陛下はとても若く見えた
恐らく20代半ばだろう
「頭を上げてください女王陛下!?そんな簡単に頭を下げてはいけません!」
キティが慌てて止めに入る
「いえ...自国もまともに守れず、遠い極東の国の皆さんに命をかけて来て頂いたのです。私の頭でしたら幾らでも下げます」
その声にはとてつもない覚悟が宿っており、数々の死線をくぐってきたキティたちも気圧されてしまう
「分かりました。ご期待に添えるよう尽力いたします」
キティは力強くそう言うと、再び敬礼を送った
「さて、現状を説明しようか」
作戦室へと移動してきた私たちは戦況の説明を受ける
「現在、ドーバー海峡は海上封鎖によりヨーロッパ諸国からの応援は望めない。そして、これが地上戦の状況だ」
元帥はそう言うと、青と赤で塗られた地図を広げた
「赤は陥落した地域、青はまだこちらが主権を握っている地域だ。しかし、対抗手段がない我々には、遅滞作戦によって地域住民を北へ移送させる時間稼ぎをしているに過ぎない」
元帥の言葉には悔しさが一瞬滲んだが、すぐにそれを仕舞うと話を続ける
「君たちには海上封鎖の解除を頼みたい。海上封鎖さえ解ければ、ドイツなどが救援に来てくれるはずだ。そうなれば陸上戦でも挟撃が出来る」
「その事だけど、輸送艦の私たちが陸上部隊を連れてきているから撤退の援護できるわよ?」
「ダメだ!後退しろ!!」
遅滞作戦の最前線では、戦車型の深海棲艦によって避難中の民間人とそれを援護する陸軍の兵士たちが追い詰められていた
「隊長!これ以上は戦線が持ちません!!」
「弱音を吐くな!俺たちの背後には大勢の民間人がいるんだぞ!!」
機関銃の発砲音と敵の砲撃の着弾音に負けないように喉をからす勢いで叫ぶ
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
叫び声に目を向ければ、先月教育を終え配属してきた新兵が大粒の涙を流しながら機関銃を撃っている
しかし、現実は残酷にもその新兵がいた場所を砲弾で消し飛ばす
もうダメか
誰もがそう思った
その時、耳を割く音が響いたと思ったら敵戦車が爆発を起こした
「何が?誰かPIATを撃ったのか?」
そう聞くが誰もが首を横に振る
状況が読み込めず呆然としていると、バタバタバタバタと聞いた事もない音が聞こえてきた
「なんだあれは!?」
双眼鏡を覗き込んだ観測手が叫ぶ
隊長は双眼鏡を覗き込んだ
そこには見た事もない機体が空を飛んでいた
「あれは...」
隊長は双眼鏡を覗いたまま固まる
そんなはずは...だってあの国ははるか東じゃないか!
そう、隊長が見た機体はトラック泊地から おおすみ と くにさき により輸送されてきた攻撃ヘリ AHー1 コブラ
その機体横には『JAPAN NAVY』と書かれていた