左遷提督は今日も元気です   作:僻地勤務の兵士

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第48話 対潜、対水上戦

水温躍層へ到達したモスクワはバラストへの注水を止め、様子を伺っていた

見えなどしないのに、その顔は自然と海面を見上げている

 

(ここが潮流が強くて助かった...このまま離脱出来ればいいけど)

 

激しく動悸する心臓を落ち着けようと目をつぶる

その状態でパッシブソナーに耳を傾けると、水上艦が近づいてくる音を確認した

 

(ここは水温躍層だから大丈夫...大丈夫)

 

自分にそう言い聞かせ、バカな真似をしないようにと恐怖を理性で押し込める

しかし、今度は今までよりも強力な水上艦からのアクティブソナーを探知した

 

(ダメか...補足された。攻撃が来る!)

 

モスクワはその瞬間、魚雷発射管へとデコイを搭載する指示を出し、短時間だけ全速を出す

機関停止とデコイを魚雷発射管に搭載が終わるのとほぼ同時に、海面で複数の着水音が響いた

そして複数のスクリュー音を確認する

 

(発見される前に浮上!アップトリム20!...ダウントリム40!)

 

魚雷の索敵範囲から逃れるために1度浮上した後に再び潜るモスクワ

魚雷の音は遠ざかっていくが、海面にはまだ水上艦が居座っていた

 

(試してみるか)

 

モスクワは現状を打破するために、攻勢へと転じようとしていた

 

(全魚雷発射管解放...発射!)

 

モスクワは全門から魚雷を発射した

普通、この状況下での攻撃などご法度なのだが位置はどうせバレる

それならば相手の想定を超える行動に出るしかなかった

案の定、魚雷を撃ってくるとは思っていなかったのか水上の音が騒がしくなる

回避行動を取っているのか一斉に散開する音を捉えた

 

 

モスクワの反撃が開始された頃、水上でも戦闘が始まっていた

両艦隊の中間地点の上空では、攻撃機守る戦闘機同士のドックファイトが行われ、艦隊同士はミサイルの応酬だった

全員のレーダーに向かってくる無数のミサイルが表示される

 

「対空防御!!」

 

ピーターが無線に向かって叫ぶと、呼応したように迎撃用ミサイルが発射され一斉にECMを作動させる

しかし数が多すぎた

過半数以上のミサイルを撃ち漏らす

 

「散開!!」

 

誰が叫んだのかも分からない指示に、全員がCIWSの射線に気を配りバラバラに散る

そしてその時は来た

辺りを埋め尽くすCIWSの発射音

レーダーに映る表示が僅かに減ったようだが、微々たるものに過ぎなかった

 

「きゃあ!!」

 

最初の被弾は艦隊前方に出ていたピーターだった

ミサイルが直撃した体は後ろへと吹き飛ばされ、海面を2回、3回とバウンドする

 

「ピーター!!っ!?」

 

吹き飛ばされたピーターを目で追っていたトリブツにもミサイルが当たる

トリブツは咄嗟に艤装を盾に体を守った

そのお陰かピーターの様に派手に吹っ飛ぶことはなかったが、艤装システムが一斉にダウンしていく

さらに追い打ちをかけるように火災まで発生した

防火装備を身に纏った妖精さんたちが、消火のために艤装を駆け回る

全員が少なからずの損害を受けた状態

まさに満身創痍といった様子だった

しかし、それは敵も同じだった

この世界には存在しないはずの特異点同士の戦闘は、従来の戦闘の範疇を遥かに超えていた

 

 

「まさかここまでとはな...」

 

トラック泊地の司令室で、ホークアイから送られてくる情報を見ていた俺は絶句してしまう

まさか、1度の攻撃でここまで互いに被害が生じるとは思っていなかったのだ

それはこの場の全員が思っていたようで、衛星経由で送られてくる戦場の映像に皆が食い入るように見つめていた

 

(どうする...普通なら撤退すべきだ...トリブツの艤装情報は消えているし)

 

画面に映るトラック艦隊の全員から黒煙が立ち上っていた

 

 

地上より400km

その遥か上空で爆発が起きた

それは西ヨーロッパ全体で確認が出来た

後の記録には『太陽とは別の方角でカメラのフラッシュのような閃光が瞬いた。その瞬間、無線も電話も通じなくなり、街灯が一斉に消えた』と記載されていた

 

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