ピーターとウォルトが出撃してから今日で3日目
往復の時間を考えれば仕方ない事だが、話し相手が居ないのはかなりの苦痛だ
俺は執務室で書類の記入に没頭していた
しかし、時計を確認してもまだ30分しか経っていない
「きついなぁ」
今までは大本営で忙しなく仕事をしていた
俺が居た部署は作戦の立案から詳細までを決める、いわゆる作戦部だった
そこでは日々、各鎮守府からの偵察や哨戒報告が来て、各鎮守府単独で行う任務から大規模作戦の構想までを行っていたのだ
そこでは多くの人と会話をし、南の島でのんびりしたいなどと思っていたが...実際にそうなると孤独でやられそうだ
「早く帰って来ねぇかな」
そんな事をボヤいていると、扉が静かにノックされた
この泊地でノックをするのは2人しか居ない
俺は急いで制服を着直すと、返事をする
「入っていいぞ」
「失礼します」
やはりノックしたのはピーターで、続いてウォルトも入室してきた
「ただいま帰還しました」
そう報告するピーターにご苦労さまと労いの言葉をかけてから状況報告をしてもらった
「...という具合です。資源も多少ではありますが譲って頂きました。これは近藤中佐から預かった情報です」
俺は差し出された情報書に目を通す
燃料、鋼材、ボーキサイトの獲得できる場所が詳細に記されていた
「これで資源はどうにか出来そうだが...2人は資源回収できるのか?」
そう聞くと、2人は首を横に振った
「運べない事はないですが...量が限られます」
ウォルトの回答を聞いて、だろうなと思った
2人は戦闘艦であって輸送に特化した艦ではない
「提案なのですが。この際、輸送艦を建造しませんか?提督」
「輸送艦か…」
ピーターからの提案を受けて、今回譲って貰った資源を確認する
燃料5000、鋼材5000、ボーキサイト4000、弾薬3500か
これだけあれば建造してもすぐに資源が枯渇することもないだろう
「よし、ピーターの提案を採用しよう」
俺は立ち上がると、ピーターには作戦報告書の作成を指示
ウォルトを連れて工廠へ向かった
工廠に来たはいいが、妖精さんの姿が見えない
「妖精さーん」
そう奥に声をかけると
「およびですか?」
と、肩の上に現れた
「うお!?...もうちょっと普通に出てきてくれ。心臓に悪い」
小言を言うが妖精さんは気にした様子もなく話を続ける
「しげんがとどきましたね。えいせいつくっていいですか?」
「衛星はもうちょっと待ってくれ。それより輸送艦の建造を頼みたいんだが」
「けんぞうですか…えいせいつくりたい」
すっごい乗り気じゃないぞ
ここで妖精さんの機嫌を損ねて失敗されたら資源が勿体ない
俺は大本営で培った接待スキルを発揮する
「今回の輸送艦建造は、今後の開発や建造を遅滞なく行うためのものだ。資源輸送が順調に行われれば、好きなだけ建造や開発させてやるから...今回はこれで頼むよ」
そう言って本土から持ってきていたどら焼き(12個入1パック)を賄賂として渡す
「そこまでいわれてはしかたないですね」
妖精さんがどら焼きを受け取る
背後ではウォルトがすっごい顔をしているが...政治とは清廉潔白ではやれんのだよウォルト君
「それじゃあちゃちゃっとやっちゃいます」
小ささからは想像できないパワーでどら焼きを持って行った妖精さんが、仲間を引き連れて戻ってくる
「使う資源はこれで頼む」
建造メニューの書かれたメモを渡すと、妖精さんたちは相変わらずキビキビと動きあっという間に建造を終了させた
「さて、今回は誰が来るかな」
期待に胸を膨らませ、艦娘が出てくるのを待つ
そして扉が開き、白煙と共に登場した艦娘は声高々に名乗った
「おおすみ型輸送艦 おおすみ。あなたの港を支えに来たわ...戦うだけが使命じゃな。運ぶこと、繋ぐこと...それが私の戦いよ」
「おぉ」
日本の艦が来てくれた
俺は心の中でガッツポーズをした
喜びをグッと抑えて、俺は おおすみ にいつも通りの挨拶と現在の状況説明をする
「状況は理解したわ。で、私に輸送任務につけってことね」
「あぁ。理解が早くて助かる」
じゃあ早速と言おうとしたら、おおすみ から疑問が飛んできた
「それで?私の護衛は?」
俺は1人、工廠で頭を抱えていた
おおすみ の武装は近接防護用のCIWS 2基、12.7mmリモート重機関銃座 2門、煙幕散布装置「シーミストMK.3」、輸送管制ドローン4機と言われた
確かにこんな武装では、いつ深海棲艦に襲われるか分からない海域へ単独で出すわけにもいかない
「どうすっかなぁ」
ピーターかウォルトを交代で護衛に付ければ解決するだろうが、それでは緊急時の対応や出撃任務に関して手が回らなくなってしまう(ま、大本営からは見捨てられてるから、任務なんてそもそも無いが)
そんな俺の考えを見透かしたかのように、妖精さんが言う
「まかせてもらえれば、いまのじょうきょうにてきしたけんぞうをしますよ〜」
「本当だろうな」
不敵に笑う妖精さんが若干信じられない
「わい...ゲフンゲフン...おやつもいただきましたから、わるいようにはしません」
俺は悩んだが、建造しなければ状況も打破出来ない
「仕方ないか。よろしく頼むよ」
「がってんしょうちのすけ!」
こうして本日2度目の建造が始まった
この光景にも見慣れたな
そんな事を思いながら、白煙に包まれる彼女を見る
「多用途護衛艦 もがみ です。電子戦、対艦、対潜......全部私が引き受けます。安心してください」
もがみ と名乗った艦娘は物静かで、駆逐艦 霰を連想させた
「俺はここの提督だ。よろしく頼む」
これで おおすみ の護衛問題も一先ずはどうにかなったな
俺はグッと親指を立てた妖精さんに、同じように親指を立ててみせた